不思議な少年(5)
文字数 1,748文字
純一少年は、手品の様にあっさりと、きつく縛っていたロープをバラバラに切断した。
なんと、彼の、縛られていた手首の部分の皮膚が隆起し、鋭いカミソリの刃状の突起となってロープを寸断したのである。
そして彼は、皮膚を元の状態に戻すと、左手の小指を額に当てて祈りを捧げる。
「耀子、頼む。お前の活動時間は10分間だが、それで敵を全員倒してくれ!」
すると、純一少年の前に、紺のブレザーを着た少し小柄な少女が、最初は霧の様に薄く、そして、時間が経つに連れ、しっかりとした姿となって現れた。
少女は腰に手を当て、酷く不満そうな顔で純一少年に文句を言う。
「10分間で全部だと? 敵一体に6秒しか余裕がないではないか……。テツ、お前、冗談も大概にしろよな……。全く……」
見張りのエイリアンが、少女に気付いて近づこうと……。既にエイリアンの首は落ちていた。そして次の瞬間には、少女はもう倉庫の扉を拳で破壊し外へと飛び出している。
純一少年は、まず美菜隊員を、そして、次に2人で人質全員のロープを解いていった。
自由になった隊員や職員は、そのまま解放の手伝いをする。この為、全員を解放するにも、それ程時間が掛かることはない。
こうして全員が自由になると、彼らは雪崩でも起こす様に、囚われていた倉庫から堰を切ったかの様に一気に飛び出して行ったのである。
美菜隊員が外に出て確認すると、彼女らが囚われていたのは、基地のはずれにある第21番倉庫……。辺りは、隊員と職員がエイリアンに対し逆襲に転じ、敵を見つけ次第倒している……。とは言っても、殆どのエイリアンは、既にズタズタに切り倒されていたか、体を動かすことも出来ない程に破壊されていたのだったが……。
「鉄男君、こっちよ!」
美菜隊員は素早く向かいの倉庫に移動すると、純一少年を手招きして呼び寄せていた。純一少年もそれに呼応し、その倉庫へと彼女を追いかけ入って行く。
入ってみると、そこは何の変哲もない物資倉庫。倉庫の中には、木枠で囲われたコンテナが積み込まれているだけで、他には何も存在してはいない。
だが、美菜隊員は1つのコンテナに向かって行き、そのコンテナの側面を軽く手を添えて押す。すると、コンテナの側面が簡単に内側へと倒れた。
なんと、そこは地下へと続く階段の入り口だったのである。美菜隊員と純一少年は、コンテナの中に入ると、その階段を駆け降りるように降って行く。
長い階段を降りきった先、その正面には金属製のドアがあり、それは固く閉ざされている。それも、美菜隊員がドアの右側にあるテンキーパネルから暗唱キーを入力すると、ロックが解除され難なく自動で開いた。
金属製のドアの中に広がっていたのは、広々とした巨大な工場のような空間だった。
そして、その中心にあったもの……、
それは戦闘機と云うよりは、一つの巨大建造物と言っても良い、銀色の不気味な飛行大戦艦であった。
「どうやらジズは無事だったようね。さぁ、鉄男君。乗り込むわよ。エイリアンに奪取される前にジズを空へと脱出させる」
美菜隊員はそう言うと、ドックの右中央あたりにある梯子の様な階段を、今度は上へとドンドン登っていき、5階位の高さにある搭乗用への吊り橋を渡って、飛行戦艦の搭乗ハッチへと到達した。
純一少年も美菜隊員の後に続く。
そして今度は、指紋認証で、美菜隊員はそのハッチのロックを解除した。
「さぁ、いらっしゃい、鉄男君」
「それにしても驚いたなぁ……。こんな物がここにあったなんて」
美菜隊員は戦艦の指令室に入ると、直ぐにオペレーションチェアに座って、タッチパネルから何らかの入力操作をする。勿論、それが何なのかは純一少年には分からない。
「うん、これで大丈夫。後は自動的にジズが空へと私たちを運んでくれるわ」
美菜隊員はそう言うと、オペレーションチェアを離れて、ミーティングテーブルの椅子に腰掛ける。純一少年も美菜隊員に促され、テーブルの反対側へと腰掛けた。
そうこうしている間に、原当麻基地の第三駐車場予定地の地面が大きく2つに裂け、そこからジズが轟音と共に大空へと舞い上がって行く。
美菜隊員は椅子に押し付けられるように、純一少年は何事もないかのように、2人は発射時のGを身体に感じていた。
なんと、彼の、縛られていた手首の部分の皮膚が隆起し、鋭いカミソリの刃状の突起となってロープを寸断したのである。
そして彼は、皮膚を元の状態に戻すと、左手の小指を額に当てて祈りを捧げる。
「耀子、頼む。お前の活動時間は10分間だが、それで敵を全員倒してくれ!」
すると、純一少年の前に、紺のブレザーを着た少し小柄な少女が、最初は霧の様に薄く、そして、時間が経つに連れ、しっかりとした姿となって現れた。
少女は腰に手を当て、酷く不満そうな顔で純一少年に文句を言う。
「10分間で全部だと? 敵一体に6秒しか余裕がないではないか……。テツ、お前、冗談も大概にしろよな……。全く……」
見張りのエイリアンが、少女に気付いて近づこうと……。既にエイリアンの首は落ちていた。そして次の瞬間には、少女はもう倉庫の扉を拳で破壊し外へと飛び出している。
純一少年は、まず美菜隊員を、そして、次に2人で人質全員のロープを解いていった。
自由になった隊員や職員は、そのまま解放の手伝いをする。この為、全員を解放するにも、それ程時間が掛かることはない。
こうして全員が自由になると、彼らは雪崩でも起こす様に、囚われていた倉庫から堰を切ったかの様に一気に飛び出して行ったのである。
美菜隊員が外に出て確認すると、彼女らが囚われていたのは、基地のはずれにある第21番倉庫……。辺りは、隊員と職員がエイリアンに対し逆襲に転じ、敵を見つけ次第倒している……。とは言っても、殆どのエイリアンは、既にズタズタに切り倒されていたか、体を動かすことも出来ない程に破壊されていたのだったが……。
「鉄男君、こっちよ!」
美菜隊員は素早く向かいの倉庫に移動すると、純一少年を手招きして呼び寄せていた。純一少年もそれに呼応し、その倉庫へと彼女を追いかけ入って行く。
入ってみると、そこは何の変哲もない物資倉庫。倉庫の中には、木枠で囲われたコンテナが積み込まれているだけで、他には何も存在してはいない。
だが、美菜隊員は1つのコンテナに向かって行き、そのコンテナの側面を軽く手を添えて押す。すると、コンテナの側面が簡単に内側へと倒れた。
なんと、そこは地下へと続く階段の入り口だったのである。美菜隊員と純一少年は、コンテナの中に入ると、その階段を駆け降りるように降って行く。
長い階段を降りきった先、その正面には金属製のドアがあり、それは固く閉ざされている。それも、美菜隊員がドアの右側にあるテンキーパネルから暗唱キーを入力すると、ロックが解除され難なく自動で開いた。
金属製のドアの中に広がっていたのは、広々とした巨大な工場のような空間だった。
そして、その中心にあったもの……、
それは戦闘機と云うよりは、一つの巨大建造物と言っても良い、銀色の不気味な飛行大戦艦であった。
「どうやらジズは無事だったようね。さぁ、鉄男君。乗り込むわよ。エイリアンに奪取される前にジズを空へと脱出させる」
美菜隊員はそう言うと、ドックの右中央あたりにある梯子の様な階段を、今度は上へとドンドン登っていき、5階位の高さにある搭乗用への吊り橋を渡って、飛行戦艦の搭乗ハッチへと到達した。
純一少年も美菜隊員の後に続く。
そして今度は、指紋認証で、美菜隊員はそのハッチのロックを解除した。
「さぁ、いらっしゃい、鉄男君」
「それにしても驚いたなぁ……。こんな物がここにあったなんて」
美菜隊員は戦艦の指令室に入ると、直ぐにオペレーションチェアに座って、タッチパネルから何らかの入力操作をする。勿論、それが何なのかは純一少年には分からない。
「うん、これで大丈夫。後は自動的にジズが空へと私たちを運んでくれるわ」
美菜隊員はそう言うと、オペレーションチェアを離れて、ミーティングテーブルの椅子に腰掛ける。純一少年も美菜隊員に促され、テーブルの反対側へと腰掛けた。
そうこうしている間に、原当麻基地の第三駐車場予定地の地面が大きく2つに裂け、そこからジズが轟音と共に大空へと舞い上がって行く。
美菜隊員は椅子に押し付けられるように、純一少年は何事もないかのように、2人は発射時のGを身体に感じていた。