第19話 MCバトル

文字数 8,000文字

 HIPHOP界隈で”最大級の嫌われ者”となったおれは、MCバトルに出場する。
 敵性ラッパーを全員打ち負かせば、おれの勝ち。
 誰か一人にでも負ければ、完全敗北ということになるだろう。

 車椅子女子、micotoへの炎上を鎮火するには、おれが勝つしかない。

『事故と障害をいいことに、チェインスネアに言い寄っているファンの女』というのが、micotoに貼り付けられたレッテルだった。

 SNSでの炎上は、ほとんどレイブン・レコーズのおれのアカウントまで飛び火して燃え盛っていた。

 おれはおれで、『ヘヴィキャリーのMC全員よりも、おれの方が上手いだろ』などと豪語しておいたおかげで、”micotoとアキアス”という悪しきセット物は、HIPHOP界隈では知らない者なしになった。

 こういった挑発を介して、おれがやりたかった狙いがある。

 それは、いったんmicotoと一緒くたにされておく。その後で、おれの方だけにその注意を向けさせ、彼女からそいつら諸共全員を引き剥がすという作戦だった。

 作戦自体は上手くいき過ぎるぐらい上手くいった。(そのせいで戦況はかなりシビアにはなったけれど)

 チェインスネアは今や、micotoとの交流は非公式にせざるを得ないため、表立って出てくることもない。おれとしてもその方が有り難い。

『デリバリーもフローも、クソ下手なラップボーカル』だと簡潔に言えば、おれは奴らからディスられつつ、物言いと態度のデカさ、その割に実績のなさを勘定すれば、HIPHOPのファン層はほぼ全員がおれの敵性に回り、やんややんやと盛り上がってきたわけだ。

 そして同時期にmicotoもまた、チェインスネアという一人の男に恋をしているのだと、彼らの質問に対して正直に打ち明けてしまってもいる。

 チェインスネアのアーティストとしての停滞は、かつての躍進的な威力ではなくなっている、とよく言われる。
 それは描きまくったキャンバスの余白が少なくなってきていたからではなく、この世界に一人残されてしまったという孤独がその原因であると、本人から秘密裏に聞かされてもいた。

 だがmicotoにはそのことを言わずにいる。

 ___というのも、それは表現者のプライドと尊厳に対する配慮からだった。彼は特にそうなのだが、『求められるアーティスト像』を貫くタイプの姿勢を持っている。

 ”強い男、チェインスネア”に、孤独や悲観は似合わない。

 micotoのアカウントの炎上は、彼の近頃の不振をも彼女のせいにしようとする内容が大半を占めていて、その話題性は、彼らの”満たされない自分の人生”の寄り道には、もってこいなトピックスだから尚更そうなるらしい。


「好きな人を好きと言っただけ」

「わかってる」

「それで彼に迷惑かけたっていいんじゃない? 私の気持ちはどうすればいいの。___悪いこと?」

「そうじゃないと思う。それをしなくなったら君が生きてる意味がなくなる」

 おれとmicotoは、そのような短い会話をしただけだった。
 この日も彼女は、タイムラインに反論を書き込むことに多くの時間を費やしていた。おれはその間、彼女の面白いお母さんから、わざとらしいカルピス攻撃を2杯くらいながら大人しく様子を見守っていた。



 匿名:『チェインの迷惑を少しは考えろ。障害者』
 micoto:「迷惑とは言われたことがありません。私たちは何でも気兼ねなく話すので」

 匿名:『お前のせいで最近のチェインスネアは切れ味がなくなっているとは思わないか?』
 micoto:「彼はアーティスト活動とわたし個人のことは、全く関係がないと言っています」

 匿名:『彼に付き纏わないで。キモいよ、アンタ』
 micoto:「付き纏っていません。仲良くさせて頂いているだけです」

 匿名:『事故に遭って良かったと思っているんだろ? 口実になるもんなー』
 micoto:「あの事故が良かったと思ったことはありませんよ。ひどいこと言わないで」


 そして。

「私は自分に正直に振る舞ったけど、今も現状なにも変わらない」

 micotoは膝掛けの上から動かない自分の脚を触っていた。
 ___無意識に。

「ほんと、何にも変わらない」

「これでいいと思う」おれは言う、
「これによって、きっかけが来れば君の誠実さに傾倒し始める連中が多く出てくる。その下地が、今できたはず」

 おれは立ち上がって撤収する。明日のMCバトルのライブ配信に、おれが出ることを彼女に教えた。

 ”もう心配することはない”、と話しておいてから帰った。
 果たすべき責任の伴う発言を残して。

「あとはおれが全員片付けてやるよ」


* * *


 全国8カ所のうち、北海道は札幌のライブ会場がリモート中継元になっている。『嫌われ者のアキアスが恥をかく』姿を、大体全員が待ち構えていた。

 おれが舞台袖からステージに呼ばれるのを待っていると、砂依田が近づいてきた。

「ステージに上がる前にお前に聞くべきことがある、正直に答えろ」
 砂依田がおれを見据えて言う、

「おまえ最近素行が悪いらしいな。スカウトから報告が上がってる。それが例えネット上での振る舞いであったとしても、これから売り出そうって奴が何でそんな事になってる? 理由を手短に話せ」

「わざとだよ」おれは応える、
「地雷付近に撒き餌をばらまいてやったみたいな事だ」

 砂依田は眉をひそめる、おれは説明する。

「今夜の試合でやり合う奴らに、”アキアス戦で使いやすい攻撃材料”を提供しておくためだ。おれは昨夜こいつらのSNSを読んでおいたから、どのような言葉遣いをする傾向の連中かは分かっている。使用される可能性の高い単語なりディスなりってのを予測することが出来る。そしてそれらのワードが飛び出した際に、そこからこちらのカウンターとして展開できるライムを、21通りほど用意した」

 砂依田は黙ったまま聞いている。おれは頷く、

「___だから今夜確実に全員仕留めることが出来るつもりだ。ここ数日間前までのおれの素行が悪かろうが何だろうが、ワンマンで多勢をことごとく一掃してやる絵を見せてやれば、素行その他の問題は全く関係がなくなるだろ。そういったジャッジ基準が利きまくってるのが、このカルチャーの本質だしな。___じゃあもう行くよ」


 おれは砂依田を残してステージに上がる。

 スポットライトの中へ滑り込むと、そこはもう”ケイシー”の管理下ではない。おれの好きなようにやらせてもらう。

 ナックルは言っていた。”普段の話し方でマイクすれば上手くいく”と。


 * * *


 ステージ上がってみると、早速ブーイングが巻き起こった。
 観客全員が敵___!

 おれは最初、ステージの前に出過ぎたために、最前列の客に足首をつかまれて振り払わなければならかった。客はその事だけでもウケていた。

 ここはおれにとってはホームである札幌会場なのだが、観客のなかにおれの”トモダチ”は一人もいないようだった。
 次第に『micoto』コールが響き渡り、「がんばれ~」というキャッキャとした女子の声がしてきて冷やかされた。

 前列の緑の髪色でお揃いのカップルはおれを穴が開くほど凝視しているし、顔面中がタトゥーだらけの男も笑っている。
 奥の方のオーディエンスまで、スポットライトの中にいるおれからでも、丸見えだった。

 ステージ上の大きなスクリーンに敵のラッパーが映し出される。

 今ネットで配信されているストリーミング映像では、おれとその相手が対になって画面を二分割して映し出された。

 対戦相手は『ヘヴィキャリー』の一人、整った顔をしたストリートファッションの、よくいるラッパーに見える。
 だから特徴は___そうだな、指輪を沢山していることぐらいだが、そんなものは攻撃材料にはならない。
 こいつの姿をディスるのは無理そうだ。正面切ったスキルによるディス・ライムを展開するしかない。

 この男は勝つ気が満々らしく、おれを見ながら身を揺らし挑発して笑っている。___おれの方は真顔で済まねえな、まだステージに馴染んでいない。


 そして、MCバトルが始まる___。


■先攻 EDGE-science(エッジ・サイエンス)

よう
”アキアス”とかいうこのキリギリス
怠けモンでバチモン 
道民じゃねえ おめえはくまモン

(客が喜びの声を上げる)

炎上女 micotoの兄貴らしいな
チェインスネアよりも人気モン
ケイシーに育てられてる例のポケモン

(おれに指を差す 客は盛り上がる)

バトルはおめえには時期早々
その程度の 力量よ
あっちに見えるぜ お前の退路
デカすぎんだよ その態度
頭にぶっ刺しているのはキティアークでしょ?
オカマでイカレちまった精神しょー

(歓声が上がる)

そいつで掘ってやる お前のオカマを
あるいはおまえの仲間の団結を
ケツだけにな
俺らは噂の『ヘヴィ』 アー・ユー・レディ?
こっちは答えを待ってるが
こいつは一向に黙ってる


 まだ時間があったのだが、そいつはマイクを返して、すでに”キメた”つもりでいた。
 箱の中は大いに盛り上がり、おれがどう返すのかとオーディエンスの大きな波のような気迫がこちらに押し寄せてくる___。

 ここにきておれは、自分の異常性を再認識せざるを得なくなった。このような全員敵性の状況にあって、少しもイヤではない人間は絶対オカシイに違いないからだ。

 けれどディスられている最中、弱気になる瞬間があった。___だが、すぐさま自分の何かが切り替わった。

【ケンカだぜ、楽しもう。そうだろ、Boy___】


 マイクを受け取る。

「よう」

 皆の視線がこちらに向く。


■後攻 アキアス

よう 待てよ
精神症をディスるその陳腐な戦況は
一体なにの 影響か?
チェインのおこぼれに群がる
アントなアンチどもめ
おれは ちょっとラリっても
キメるぜ ショットラリー
診断してみりゃセンチメンタルな クライアント
メンチ切ったら最後までやれねえと 無礼あんぞ?

(観衆が静まり返る)

まだ時間があったぜ?
時短にしちまい 地団駄踏んでな
おれは小せえアントなテメエを
足裏でエレガントに踏み潰す エレファント
チェインについている どえらいファンとな

(歓声が起き始める)

なんとこっちには ファンドもあれば
ご覧のとおり 感度もいいマイク
お前はB系よりもぜってえ リーバイス

(大きな歓声が上がり、流れが変わる)

よう
ついでにmicotoのブラザーでもねえよ
おれはあいつのブラなんだ
だから会いにも行くのも”手ぶら”だな
だがテメエのライムは激しくストレンジ
かすかで わずかなその品々で
シラッとやってる気になってんな
酔いクチ回る間もなく 排尿するぜ
お前のラップ家業みてえに 即廃業
師弟関係に してみてえが
見込みがねえとmicotoも言うよ

(客から拍手と口笛が鳴る)

吹いてるラッパが立派だが
吸ってる葉っぱが似合ったカッパめ
許せんえびせん おれは百戦
あれはオイシイ おれはMC
お前は毛虫でタモリはレガシー

(大歓声 ジャッジの一人が席を立ち上がる)

沈む太陽のように お前も消したいよう
東西南北 お前の相手は退屈千万
おれは稼ぐぜ何千万 
ようよう


 観衆はおれがマイクを始めると一瞬静まり返っていた。だが次第におれがどういう奴かを認識し始めたようだ。
 徐々に”全員敵性”の中から僅かに歓声が上がり始めて、おれのパフォーマンスを大きく称えてくれた。

 次からは”おれの客”がある程度ついても来るだろう。

 ジャッジでは『2対1』で、おれは勝つことができた。


 次のラッパーは、おれが今見せたライム展開に少し油断しない事に決めたようだ。ニヤけ顔も消え失せた。
 スキンヘッドにゴールドの厳ついネックレスが、白いロングシャツで映えている。
 中継先が東京都内のライブ会場で、歳はおれと同じぐらいだが、都内生まれ都内育ちに違いない。いわゆる『ホンモノ』の環境にあったラッパーという印象。



■先攻 SAMURAI-G

へい よう
女装した奴にはジュースをご馳走
酒も飲めねえ 田舎に留まれ産地直送
お前じゃ保たないぜ 都会の客層

(歓声が上がる)

ろくにラップも出来ねえで見苦しい大喜利
ハリキリ過ぎてるが真剣も使えねえ棒振り
お前の住むところにはあるよな防風林
俺がなぎ倒すぜ、そこの箱ごと
小言を抜かすなクソルーキー
見たか? 手を変え品を変え
しなやかなラップと このルーティン

(客は大盛り上がり)

クソガキみてえな オーバー・サーティン
サーティーワンになっても 俺には適わん
お前は文無し ラップも”おもんなし”
俺に適うもんなし
ロンリー以前に こいつはボンビー
勝負はここまで お前を送るぜドアまで

(誰かの雄叫び、続いて拍手が巻き起こる)

俺が今宵もタイトルぶんどる
そしていつものように ビッチを抱いとる
ようよう



 おれはホストからマイクを渡された。

 札幌会場内でさっきついたおれの”客”は、全て向こうへ戻ってしまったように思えた。
「ヤバいな」おれは戦い方を考えてきたので、一番妥当なラインからスタートして何とか組み立て始める___。


■後攻 アキアス

It's a Show time.
いざお前の正体を ジャッジメン!
(おれはそいつを見やる)
残念ながら ただのエッチメン!

(客の歓声で一旦途切れる)

よう よう
残念な曲をPLAY BACK
お前は候補外れの レームダック
未確認非行少年 お前はUFO
バカにつけるクスリは有効
百人ぶった切るおれは黒沢明
おまえは小遣い欲しさの 黒さが明らか
野武士の如しで冬場に凍死
今年(こんねん)からは芽はもう
出てこんねんだな

(客の歓声)

ラップに四苦八苦 するようならSHIT LIKE
お前如きがおれに 対テロか?
おれに炊き出しでも 炊いてろよ

(大歓声が起きる)

お前なんざ前座だよ
ヘアピン付けてるおれは 名うてのピン芸
お前の楽屋は古汚ねーし
その白シャツも古着じゃねー?

(手振りで相手を貶すおれ)

オンマイクの魔法が消える頃には
お前も向こうにスマート退場

並み居る中からおれが最強
愛嬌あれば 才能あるし
SHOWのデキは どでかい衝撃波
言葉のエッセンスで 席巻しよう
おれはまさに ”別件仕様”___
 
(大盛り上がり)



 上手くいった! そのことが素直にうれしかった。

 ジャッジは『3対0』で圧勝。

 おれはステージの上で高揚感に包まれ、心が躍っていた。面白い、もっとやりたい___という想いが芽生える。


 次のラッパーは、おれより歳が若くて細身の長身だ。特に目立った服装もしていない、おそらくそのリリカルな技巧に頼って、これまで正攻法で戦って勝ち進んで来たかのように見える。

 スクリーンに映し出された顔の表情は読み取りづらかった。何を考えているのかわからない。さっきの試合の歓声の余韻のなかにあっても、動揺もしていない。冷静に見える。


■先攻 KEN lyrical(ケン・リリカル)

俺が本物のギャングスタ
おまえはどうやら”ギャグ・スター”
って感じだよな?

(奴の手振りで客も大笑い)

スターダムのし上がるキングになれねえよ
せいぜい”天狗”になる出来損ないの ラップごっこ
俺ならばマジREALを吐き出すぜ トラップ・ゴッド
さっきから多い口数で仕掛けてる?
ライムもご覧のとおりシラケてる

(客が笑う)

一方の俺は誰もが認める芸術家
おまえはそんな風に 手ぇ抜くか?

(歓声が上がり、盛り上がる)

お前のラップは暗記だな?
俺はお前のアンチだよ
下手くそなラップ・ボーカルめ
バイトしてた方がきっと 儲かるね

(観衆が大喜び)

俺はタイトに決めてくこのテクニック
お前はマイトと行けよ ピクニック
土産は要らねえ花畑
そこに居んのは バカだらけ

ようよう


 歓声で、しばらくホストの声も何も聴こえなくなった。オーディエンスは今日一番の反応を示していた。
 おれは口数の多いラップを攻撃され、相手は短いヴァースで締めくくってきたため、次は捲し立てるライムは良くはないかもしれないと感じた。

 客は二戦勝ち抜いてきたおれを、完全には見放してはいないようだ。おれがマイクを取ると静かに耳を傾けている。

 かなりマズイが確実に仕留めたい。でもどうすれば。

 こうなればフリースタイルをやめて、歌うしかない___!



■後攻 アキアス

よう
こんなチェックメイトなタイトな対局じゃ
ダイナマイトなサイコが 戦況チートして〜
ラップ・シーンをリードする♪

こうしてここに現れたおれ様は〜♪

漆黒の荒野を共に歩こうやと
しつこい坊やのトム・ソーヤ♪
ラップゲームに心を灯そうやと
ライム・メイクとマイクで飛ぶ勝者♪

(笑い声が巻き起こる)

よう
ならばドラマチックもリッチも対価じゃねえ♪
こんなチェックメイトなタイトな対局じゃ
ダイナマイトなサイコが 戦況チートして〜
ラップ・シーンをリードする♪

(おれは同じヴァースを繰り返し、ステージを往来する)

漆黒の荒野を共に歩こうやと
しつこい坊やのトム・ソーヤ♪
ラップゲームに心を灯そうやと
ライム・メイクとマイクで飛ぶ勝者♪

ならばドラマチックもリッチも対価じゃねえ♪

(手を振って観客を巻き込もうとする。急に歌い出した事がかなりウケて、ハンズアップが巻き起こった)

こんなチェックメイトなタイトな対局じゃ
ダイナマイトなサイコが 戦況チートして〜
ラップ・シーンをリードする〜♪

漆黒の荒野を共に歩こうやと
しつこい坊やのトム・ソーヤ♪
ラップゲームに心を灯そうやと
ライム・メイクとマイクで飛ぶ勝者〜♪

(オーディエンスの方から、ピー!ピー!という口笛が送られた)

* * *


 最終的には札幌会場で、大きな盛り上がりを見せたことが全国にライブ中継され、その謎の一体感がジャッジにもウケることになった。
 結果として客を掴んだという意味でなのだろう、おれは『2対1』で勝つことができた。

 何やら水を得た魚のようになりつつあると感じてくる。
 そして次が最後の対戦だったため、用意してきたライムを全て使い切っていくことにした。

 ここで初めておれの先攻になって、マイクを取る。

 最後の一人だ。

 おれは”イケる”という感じと楽しさによって、鼓動が高まる。握るマイクが少し震え、手汗もかいていた。

『ヘヴィキャリー』をマジで一掃できる___!



■先攻 アキアス


よう
言いたいことは大体分かる
言わさねえ今更 回避する手間隙
「何様だ」と言いたいらしいが
それはテメエがおれを誰だと思ってる?
お利口なワックには
精巧なライムショットが有効打
ほらな お利口だからオフマイク
座ってマックシェイクでも飲んでろ
お前と同じく中身が違うフェイクだけどな
そんな品違い マクドナルドも”怒鳴るだろ”

(大歓声)

絡ました辛口ラップをドロップするぜ
かち割る脳天 おそろしくもグロい
ディレクターズ・カット版
よう I'm Mad man!

(今日一番の盛り上がり ジャッジが総立ち)

どうだよおれに勝てそうか?
後ろの端っこだけせいぜい踏んでろ
それ麻呂の裾踏みか?
小さな腹心漬けのサブキャラめ
主役のおれが修復不全に
損傷 喰らわして尚も”全勝”
ハイキックかますぜ
アンディなフグ毒で
もはやお前は服毒死
ファッションが「B」だけじゃ
いけないからこのパッション!
ようよう

(めちゃくちゃな盛り上がりになっている)


■後攻 LOCK ROCKER(ロック・ロッカー)

(マイクを返して試合放棄した)


 * * *


 おれは最終ステージを後にした。

 無事にやり終えた___。いろんな人らが背中やらをバシバシ叩いて褒め称えてくれていたが、混雑する前に離れたかった。

 おれはかつてないほど興奮していた。ラップボーカルもこの先なんとかしていけるという自信が、確かな手応えとして残る。
 それにまだここに居たい気持ちもあるものの、冷静さを取り戻して判断する。

 早めにここを出て帰ろう。

 けれど外に出てみると、そこも何やら騒がしかった。
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