第26話 リコリスへの誕生日プレゼント

文字数 1,030文字

遠くで目を合わせ、驚き固まるリコリス。距離を保ったまま、
どうしたの?
いや、別に、ちょうど近くまで来る用事があって、そのついでに寄っただけ。
嘘ばっかりと顔を見合わせるみんな。不思議そうな顔のリコリス。


ヒイラギはデイパックの中から、小さな正方形の箱を取り出す。

水色の包み紙に金と銀の細いリボン。

これ、16歳の誕生日プレゼント。


渡す前に消えちゃったから。

私に?
うん。
開けてもいい?
ああ。
中身は小さなネックレスだった。


よく見ると蝶が羽を広げたデザインで、羽の部分にキラキラ光を反射する宝石が埋め込まれている。

もしかして、これってダイヤモンド? すごい。

宝石って今は全部実験装置か兵器に使われているから貴重だね。

ね、ね、リコリスちゃん付けてみてよ!
ちょっと待って、発信器とか付いていない? うかつに触っては危険よ!
宮地コーポレーションはレーダーと追尾装置が売りよ。

このネックレス、ヤバい機能がありそう。

なんだよヒイラギ、怪しいもん作りやがって。
いや、別に、そういうつもりじゃ、
それまで黙って聞いていた男子だったが、我慢できずキレだした。
おまえら、ごちゃごちゃうるせーんだよ!


ヒイラギは! リコリスを喜ばせたくてやってんの!

それだけなの!

思わず上級州国民の孫を呼び捨てにするコウジ。
これは単なる好意だと感じます。

あんまり邪推はするものじゃない。

そうだよ、前から用意していたって言っているじゃん。

おまえらちゃんと話聞けよ。

(出遅れるサンショウ)お、おお、その通り。

オマエ達、ヒイラギ先輩に対して失礼だぞ。

これには何も機能は付いていない。ただのアクセサリーだよ。


それに困ったときに売れば、一生生活には困らないはずだから……

そのときずっと険しい顔で黙っていたクローブが口を開いた。
ヒイラギさん、あなたは、権力を笠に着てリコリスが抵抗できない立場なのをいいことに、暴虐武人な行為を繰り返してきました。リコリスが精神的、肉体的ダメージを受けていたのをわかっていますか?

今までいろんな権利を受ける機会を失墜してきたはずです。


そのネックレスは示談金のつもり? 相手が上級州国民だからって簡単に示談には応じないわよ!

(サンショウに目配せして)

コイツなに?

すみませんね、無視してください(小笑)
サンショウの思惑通り、いやそれ以上に女子のテンションが爆上げ。

一気に9番ゲートに活気が戻ってきた。


それを遠巻きに見ながらナンテン教授、チャイ、アールグレイは談笑。

テラスで深蒸し茶をいただきながら。

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