第5話 霊感ハッカー、アッサムに調査依頼

文字数 1,078文字

シナモンが連れ去られた日から、コウジは公民館会議室特設モニタールームに昼夜張り付いていた。


シナモンの手の甲に入れてあるICチップの信号を受信するために。

コウジ、少し休みなさい。体を壊したら元も子もない。
信号監視は俺がバトンタッチするから。
でも、こうしている間にもシナモンがひどい目にあっていたらと思うと、ジッとしていられないんだ。
その頃シナモンは『鰻御膳フルコース』をいただいておりました。
俺のバカ兄貴、アッサムにシナモン探索を依頼してある。そろそろ回答があると思う。


アッサムは普通の仕事はできないダメダメ社員だけど、ストーカー的な追尾行為は他の追随を許さないスキルと気合いの持ち主なんだ。

アッサムさんて、極北脳機能研究センター勤務のストーカー常習犯でしたっけ。
正解。『霊感ハッカー』という異名があるんだ。


ハッキングスキルが霊感の域でね、ちょっと常人には到達できない粘着には定評があって……


自分で「俺はすでにシンギュラリティ(技術的特異点)を超えている」とか訳のわかんないこと言っててさ。おまえAIじゃねえだろ、っていう。

でもアッサムの脳と人工知能が接続されていると言われたとしても、「ふーん」以外の感想無いけどね。

はっきり言って変わったヤツ。

あ……お願いします。

(深く頭を下げるコウジ)

(チャイさん、けっこうお兄さんに対して手厳しいな)
シナモン連れ去りは、対策が甘かった俺の失態だから。


あらゆる手を尽くして迅速に対処する。

アタシのせいだよ。

アタシがタイマンにこだわったから、こんなことになった。

いや、俺の作戦ミスだ。おまえのせいじゃない。
メールの着信音。


みんながザッとモニターの前に集まる。

親愛なる人使いの荒い弟ちゃ~ん、お兄ちゃん? たまにどっちかわかんなくなるけど~どっちでもいいか。


お兄ちゃんシナモン推しだから頑張っちゃった~エッヘン!

誉めて誉めて~

ありがとう。(にっこり)
それでシナモンは何処にいた?
アッサムから位置データが送られてきた。
北陸保養所。ここで軟禁されているよ~


保養所なんて古臭い名前だけど、海沿いの広大な敷地上に最先端の水族館が併設された、上級州国民様専用の超高級リゾートホテルだよ~

露天風呂と懐石料理が五つ星だって、彼女と行ってみたいな(妄想)


ただの平家建に見えて幾重にもセキュリティーが張り巡らされた鉄壁の要塞だよ~


ここに入れるのは上級州国民の2親等以内のご親族と、そのお連れ様だけだよ~

しかも中ではスキル発動できないっぽいよ。

まず弟ちゃん、入れないし~

入ってもスキル使えないから丸腰みたいなもんだし~


無理ゲー、どうすんのこれ?

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