第11話 北陸保養所ビオトープ西館に潜入~全員解雇~
文字数 895文字
ヒイラギは小声でリコリスに耳打ちすると、いつものように廊下をドカドカ歩く。
角を曲がると、片面がアクリル硝子張りの水槽。色とりどりの熱帯魚が泳ぐ。
柔らかな照明を通して、水の揺らめきが壁や廊下に映り、海底を歩いているよう。
一行はヒイラギを追いかけるように、廊下を早足で進む。
行き止まりには、螺鈿細工の細やかな装飾が施された扉があった。脇には水仙の花がすっきりと飾られている。洗練されている調度品。
扉の前でためらうことなく、インターホンを押すヒイラギ。
応答したのはジンジャーだった。
4分ほど待たせて、インターホンに出たセージ。
セージがゆっくりとドアから顔を出す。苛立ちと憔悴を浮かべながら。
ヒイラギの顔を見て、取り繕った笑顔を少しだけ浮かべた。
いい、いい! 条件なんていいから! 無条件で今すぐ持っていって。
ジンジャー、ジンジャー! 早く!
あのうるさくて生意気でふしだらな子、引き渡して! もう顔も見たくない。
そこの女3人も追い出して。
あんたも、あんたもだ、バカにしやがって。もういい、出て行ってくれ、俺を1人にしてくれ。
部屋からぴょこんと飛び出すシナモン、一緒にビーチョコのメンバーも。
そして苦笑いのジンジャーも後から出てきた。