第11話 北陸保養所ビオトープ西館に潜入~全員解雇~

文字数 895文字

《ロビーの案内係》

ずいぶん多いお連れ様ですね。ご予約では2名と……

サークルの奴らが押しかけてきてさ、悪いね。
いえいえ、大丈夫ですよ宮地様。ごゆっくりお楽しみください。

なにかありましたら、すぐにご連絡くださいませ。

さっさと終わらせて、早く二人きりになろう。
………(顔をそらす)
ヒイラギは小声でリコリスに耳打ちすると、いつものように廊下をドカドカ歩く。
ちょっと! どこに行くつもり?
直接俺が立川セージに交渉する。


時間がもったいない。オマエ達になんか任せていられるか。

え? 俺いろいろ対策してきたけど、この展開は予想外だ。


(慌ててチャイへ連絡する)

角を曲がると、片面がアクリル硝子張りの水槽。色とりどりの熱帯魚が泳ぐ。

柔らかな照明を通して、水の揺らめきが壁や廊下に映り、海底を歩いているよう。


一行はヒイラギを追いかけるように、廊下を早足で進む。


行き止まりには、螺鈿細工の細やかな装飾が施された扉があった。脇には水仙の花がすっきりと飾られている。洗練されている調度品。


扉の前でためらうことなく、インターホンを押すヒイラギ。

応答したのはジンジャーだった。

どちら様ですか? わかりました、少々お待ちください。
4分ほど待たせて、インターホンに出たセージ。
あ、はい、宮地さん? どうも。

もちろん存じ上げておりますよ。今開けますね。

セージがゆっくりとドアから顔を出す。苛立ちと憔悴を浮かべながら。


ヒイラギの顔を見て、取り繕った笑顔を少しだけ浮かべた。

はじめまして、宮地ヒイラギです。


要件というのは、そちらで預かっていらっしゃるシナモンを引き渡していただきたい。

無条件という訳にはいかないでしょうから、こちらとしては最大限

いい、いい! 条件なんていいから! 無条件で今すぐ持っていって。


ジンジャー、ジンジャー! 早く! 

あのうるさくて生意気でふしだらな子、引き渡して! もう顔も見たくない。

そこの女3人も追い出して。

あんたも、あんたもだ、バカにしやがって。もういい、出て行ってくれ、俺を1人にしてくれ。

部屋からぴょこんと飛び出すシナモン、一緒にビーチョコのメンバーも。


そして苦笑いのジンジャーも後から出てきた。

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