ただ、ただ、シンプルだ 5

文字数 3,569文字


 龍の知恵。
 この世界にしてみれば、天からの知恵に。
 思えるかも、しれないが。

 ようは、現代のノウハウを使い。
 文化レベルの低く。
 そんなに成熟していない、全てに対し。

 的確に、知識を当てはめることで。
 全てを、底上げしたのだ。


 この、ベーシックインカムのような制度も、その一環だろう。

 商売や、領地運営で、コレを行えば。

 ソニャ=ケルビンが。
 何をしているのかすら、分からないまま。

 あっと、いう間に。
 一財産、作っているように見えただろう。

 加えて、つきない命とくれば。

 ソニャが、手を抜かない限り。
 財産は、無尽蔵に増えていく。

 この東大陸に。

 これ以上に優秀な領主は、存在しないだろう。

 どんなに、才覚が、あろうとも。

 たどるべき道筋を、最初から知っているモノ。

 それが、たとえ、凡人・秀才であっても。

 正しく、正確に、努力し続ける者には、勝てない。

 才覚あるモノらしく。
 一時的に、上回るように、見えるかもしれないが。

 長期的に、と、なると、雲泥の差だ。

 この街で、ソニャが、絶対的な発言力を持っているのは。

 誰にもデキないことを、平然とやってのけ。

 おかしなことを、言い出しても。
 正しく、物事が収まっていくから。
 文句のつけようが、ないからだろう。

 積み重なった実績と。
 現在進行形で、積み上げられていく結果が。

 ソニャの立場を、より、強いモノとしているのだ。

 なら、疑問が、もっと膨らむ。

 それだけの有権者が、である。

 今回の件を、丸く収めることが、デキない。
 そう、言っているのだ。


 領主が、商売を、行うなら。
 実績のあるソニャに、いろんな領主が集まり。

 資産のあるソニャは。
 他の地域の領主を、界隈領主にできる。

 界隈領主にされた本人すら。
 界隈だと、気づかせないだろう。


 自分が、その地域の領主でなくても。
 実質的な、権利を買い上げることが、可能なのに。

 あえて、そうせず。
 相談と言う形にして、利益を得れば。
 実質的支配だと、思わせなければ、全てを丸く収められる。

 他の領主から見れば。
 ソニャの恩恵を、利得で見れば、これ以上のモノはない。
 だから、利益に目がくらんで。
 本質が見えなくなる。

 すり寄ってくる者を。
 的確に使いこなすことで、ソニャは。

 この東大陸の、実質的な女王と、なっていても、不思議ではない。

 そこまでの財力・権力を持ってすれば。
 王国運営にすら、口が出せてしまうだろう。

 統治・財政に関し。
 ソニャが、失敗する理由が、ないのだから。 


 ソニャが、悪い意味での成金で、あるハズがない。

 資産を生み続ける、大資産家だ。

 資産を生み出す過程で得た、付随した権利が、強大すぎる。

 コネなんて、安い言葉では、言い表せないほど。
 作られたつながりは、膨大だろう。

 もう、生きているだけで。
 ナニを、する必要もなく、資産は、勝手に膨らみ続け。

 権利も、立場も。
 無尽蔵に大きくなる所まで、育っているだろう。


 ソニャの意思一つで、なんでも、どうにでもなる。
 言い過ぎでは、ないだろう。

 右か左を、選ぶ必要すらない。


 ソニャの鼻息か、ため息で。
 吹き飛ぶ人が、いくらでも、いるのだから。


 呼吸か、寝息でも。
 誰かが、脱落しているかも、しれない。

 欲しい結果を、思ったようにデキて、当然の立場にあるのに、だ。

「ソニャは、この東大陸だって、買えるんじゃ、ないのですか?」

 サイモンは、目を丸くし。

「かないませんね…。
 はい、中央都市すら、スグに、買い取れるでしょう。

 そうしないのは、白竜様の龍人だという、立場を。
 正しく、理解しているから、です。  


 あくまでも、白竜様が望んだ、東大陸の平和を維持するため。

 自分だけでは、持続可能な国家運営は、不可能だ。

 理解しているからこそ、乗り出さないのです。

 自分も、借りた知識で、ココまで来たのだから、と。
 ソニャ様は、他の領主達を育てるために、財を使われました。

 その一方で。
 腐ってしまった家を、遠慮なく、排除することも、同時に行った結果。

 今の東大陸があります」 

「…なら、今回の件。
 解決できない理由が、全く理解できない、です」

「当然の疑問でしょう。
 …ですが、考えてください。

 ソニャ様は、大きな力を、持ってしまわれました。

 それは、同時に、しがらみもある、と、言うことです。

 そんなしがらみすら、はねのける力を、お持ちですが…」

 サイモンは、リカを見て、語りかける。

「私には、リカの体を治すことは、デキませんでした」 

 あきめるように。

 莫大な財力・権力を持っているなら。
 ドウしようもない事柄の方が、少ない、ように見えるが。

 この二つがあれば。
 何でもデキると、思えるし、言い切れるからこそ。

 これ以上ない、万能感を感じ。
 考えてしまうからこそ。

 この二つが。
 全く通用しないモノが、相手として現れてしまうと。
 途端に、二択を迫られる。
 サイモンは、そう、態度全てで、沙羅に、伝えた。




 いくらカネや権力が、あろうと。

 皆で作った、社会の中にあるモノの中でしか。
 自由は、得られない。


 贅沢な悩みだとすら、思えるが。


 この世の中にないモノは、手に入れることがデキない。

 リカの病気を治す方法が、この世界に、存在しなかったように。

「そんなもの、分かるわけがない…」


 この二つが、通用しないモノ。

 たとえば。
 心の底から、カネや権力以外で。
 自分を愛してほしい、だとか。

 たとえば。
 リカの病気の治療のように。
 この世界にある方法では、実現できないモノ。
 解決デキないモノ、とか。 

 この世界の常識が全くない中、駆け回ったとしても。

 たとえ、引き継いだ。
 白龍がらみの問題だったとしても。

 沙羅は、何も分からないまま、終わるしかない。

 これだと、断言するベースが、何一つ、ないのだから。


 何がデキて、何がデキないのか。

 二者択一に、することがデキない。

 右か左の選択、以前の問題だ。

「今更ですが、この場を、もっと、早く作るべきでした。
 沙羅様が、本当に、何も知らないとは。

 …思いもしなかった、と、言うのも、もう、言い訳でしょう。

 …考える時間も、あまりない。
 お伝えしたいことは、多いのですが…。

 本題だけを、テーブルの上に、のせましょう」

「分かりました」

「今回の件で、問題の中心にあるのは、白竜様の覚醒です。

 私が聞いている話は。
 全てが終わった後、白竜様に、お話しすることになってます。
 …つまり」

「ソリドさんは、ともかく。
 ソニャの目的と、やることは、分かりますか?」

「いいえ…、沙羅様。

 ソリドは、右腕。
 私は、なんでしょう?」


 まるで、モヤが晴れていくような感覚が、沙羅の中で膨らみ。

「サイモンさん、だけは__」

「はい。
 ほぼ、全てを把握している、と、言って良いでしょう」

 理想が、理想ではないと、言い切れるか、どうか。

 可能性を、追いかけるコトが、できる。
 という、確信が。

 沙羅のスレイ・リベンジに、形を与えた。
  

「白龍様の覚醒。
 それは、沙羅様が。
 白龍としての力を、取り戻すことで、達成されます」

「譲渡の力を、オレも、使えるようになればと、言うことですか?」

「なるほど…。
 このほうが、早そうですね。

 違います。

 白龍の覚醒は、言い方を変えれば、白龍の復活。
 引き継がれた沙羅様が。
 本当の意味で、白龍になる、と言うことです。

 白龍として、覚醒されると。
 沙羅様は、白龍化。
 龍の力を、ふるうことが、デキるようになるそうです」

「オレに、今。
 急いで、白龍として、覚醒させなければ、いけない理由は、何ですか?」

「各大陸の龍には、役割があります。

 龍が存在すること、それ自体に、意味があるのです。

 ソニャ様の言葉を、そのまま、口にするなら。
 一つのシステムを、四龍という、四つの歯車で回している。

 白龍様が、ではなく。
 どこかの大陸の龍が、一匹でも、いなくなることが、非常にマズい。

 四つの歯車で回っているモノを。
 三つで、強引に回している状態になれば。

 限界は、スグに来る」

「四つの歯車で、なにを、動かしているんですか?」

「東西南北。そして、中央を含めた、全ての大陸の、人類種の命を守るシステム。

 それ以上のことは、ソニャ様も、分からないそうです」

「…だから、一刻も早く。
 オレは、白龍に、ならなければ、ならない。
 急ぐ理屈は、分かりました。

 なら、具体的に…。
 オレが、どうなれば、白龍として、覚醒するんですか?」

「鱗の力を取り戻すことで、沙羅様は、覚醒します」

 沙羅は、サイモンの言葉に、返す言葉を失った。

 落胆なのか。

 それとも、再来の最悪に。

 悪態を、つきたいだけなのか。

「…それは、鱗の竜紋を取り戻せ、そう言う、話。ですよね?」 


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