あとは、ただ、告げるだけ 4

文字数 2,510文字


 なら、どうすべきなのか。
 そんなモノは、この白の章の中で。
 繰り返し、唱え続けてきたことだ。

「…はい。分かりました。
 では、ワタシも、やり方を変えようと思います」

 理解できなことが、分かって。
 今すぐに、ドウしようもないと、分かるのだから。

 デキることから、始めるしかない。

「…ん?」

「沙羅様、約束をしましょう。
 契約と思ってもらって、かまいません」

 愛が伝わらないなら、自分たちの希望を叶えるために。
 相手にも、理解できる方法で。

 今すぐ、全てを手に入れることが、デキないなら。

 一つだけ、叶いそうな願いを、実現していくだけだ。

 沙羅が、姿を消さず。
 この、ツラくも楽しいサバイバル生活のなかに。

 沙羅が、ズッといる未来を掴むために。

「…スゴいな、オマエ」

 話を飲み込んで。
 その上で、あきらめるのではなく。
 ドウしていくのかを、考え続けるほかない。

 正解など分からなくても。
 間違いだけは、目に見えているのだから。

「沙羅様は、誓ってしまえば、破れないでしょ?
 私達との契約は、とくに」

 サイモンと沙羅が話し合った、あのときのように。
 無理だと思っても、かなえたい願いは、誰しも持っている。

 リカを含む、彼女たちの願いを。
 彼女たち自身が叶えたいなら。

 沙羅が、居なくならないことコソ、もっとも、重要だと。

 リカは、沙羅に伝えた。

「…やっぱり、スゴいよ。オマエ」

「当然です。この溢れる愛に、気づかせようと。
 私達は、考え続けていますから」

「…はぁ?」

「本当に、よく分かって、らっしゃらない、ようですね。

 では、沙羅様?
 コレから結ぶ契約に、拒否権がないことも、お分かりですよね?」

「さすがだよ、笑えるぐらいにな」

 リカは、人差し指を立て。

「一つ。自らを消費する行いは、全て間違えだと。
 思いついた時点で、考えるのをやめるコト」

「な!」

「一つ、私達の目の前から、いなくなるような手段。
 行為も、同じように、考えるのをやめること」

「オイ…」

「一つ、私達一人一人に、好意があると。
 伝える努力をすること」

「リカ?」

「スキとか、アイシテルとか、別にイイです。
 羨ましいとか、輝いてるとか、言って下さい。
 それでイイです。安心するので」

「とんでもない、罰ゲームだ…」

「それで、イイんです。
 コンナことを、したんですから、罰を受けて下さい」

「なんも言えねぇ…」

「あと、コレが一番重要です」

「まだ、あるのか?」

「一つ。沙羅様が、私達の外にいると、考えるのを。
 今すぐに、やめて下さい!」

 冗談めかした口調も。
 なにもなく。

 強く吐き出された言葉に、沙羅は、何も言えず。

「やめて下さいね?」

 同意を求められても。
 沙羅は、同意するモノが、ナニもなく。

 言葉だけで返すことも、するなと。
 言われてしまってるのだから。

「じゃあ、オレは。
 俺自身を、どう考えれば良いんだ?」

 契約を、まっとうするため。
 契約内容で、分からないことを、確認するしかない。

「家族、が分からないなら、そうですね。
 なにか、良いモノは…」

「リカちゃん、それなら、イイのがあるよ」

「ダメ子?」

 これ以上ない皮肉を込めた、見慣れた笑みに。
 嫌な予感しか浮かばない。

「沙羅ハーレムの、中心人物じゃないですかぁ?」
「…テメェ」

「私達のダーリン、で、良いんじゃないですぅ?」

「なるほど、私達は全員。
 沙羅様の妻として、考えてもらえれば良いんですね」

「良くないだろ?
 いろいろ、すっ飛ばしてるだろ?
 もっとちゃんとしたヤツ、あるよな?」

「コレぐらいじゃないと、沙羅様には、通用しないでしょ?」

「鋼の貞操概念の持ち主ですしね」

「クソ! 言い返せねぇ!」

「決定ですね、コレは効きそうです。
 なら、コウしましょう」

 リカの顔に浮かぶ表情に、沙羅は、嫌なモノを感じるが。

 拒否権のない、契約は、鵜呑みにするしかない。

「一つ。朝起きたら、一人一人の手を握って、近くでおはようを、言うコト」

「沙羅様、育成計画始動だねぇ」

「ダメ子、テメェ!」

「リカちゃん、キスでも良いのでは?」

「悩みましたが、今、ソコまで求めると。
 動き出すのが、午後になって。
 生活に支障が出ると思いますよ?」

「なるほど」

「納得するところ、ソコじゃねぇからなぁ?」

「さて、沙羅様」

「まだ、あるのか?」

「約束、契約には、大小あれど、儀式が必要ですよね?」

「…逃げようかなぁ」

「契約違反ですよ?」

「クソ!」

「みんなに、キスをして下さい!」

「分かってた! こうなるって、分かってた!」

「あ~リカちゃん。上手だね? さすがです」

「これぐらい、やってもらわないと、割に合いません」

「ソニャの街の件を、ソロソロ説明したらどうだ?」

「そうですね。それでも、良いかもしれません」
「…とおった?」

「その前に、キスをすると誓って下さい」

「だから!」

「スキだとか、アイだとか、分からなくてイイですから。
 契約をするために、キスをすると言って下さい」

「沙羅様の追い込みかた、リカちゃんには叶わないなぁ…」

「……」

「はい、言って下さい。言えますよね?
 契約なんですから。罰ゲームなんですから」

「ほんとに、エグい…」

「すりゃ、良いんだろ!」

「あっヤケになった」

「違います。みんなに、させて下さいと、頭を下げてお願いして下さい」

「逃げ道を、ツブしていくスタイル。
 さすがだなぁ、リカちゃん」

「ダメ子、少しは助けてくれても良いんだぞ?」

「いえ、ソレは、ないです」

「……」

「ワタシも、みんなも、怒っているんですよ?」

「右も左も、逃げ道なしか…」

「上も下も、ありませんね」

「ハァ…」
 沙羅は静かに息を吐き出し。

「分かった、誓うよ。
 もう、どう足掻いても、オレは、誓うしかなさそうだ」

「やっと、気づいて頂けましたねぇ~」

「では、みなさん、説明を始めようと思います」

 ソレが合図と。
 沙羅を囲むように、よく知った顔が並び始め。

「オマエら、近いぞ?」
 何を言われても、気にしない彼女たちの、顔一つ一つは。
 沙羅に警鐘を鳴らす。

「まさか…。オマエら…」
 正面に、リカ一人が立つ。

 背後に、ソニャの街が、よく見えるように。

「では、沙羅様。冷静に聞いて頂けますね?」
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