みんなで作る物語 3

文字数 2,355文字


 白龍が、偉大だったから。

 白龍は、願いかなえる存在だから。

 白龍は、スゴいから。

 この東の白龍大陸が、始まったワケではないと。

 スレイも、ソニャも。

 あれだけの使命と、役割を負いながら。

 言葉尻に語る、白龍ブルーは。

 やさしく、慈愛に満ちていた。

 白龍は、好かれていた、だけだ。

 万人、その他・大勢の、誰かにではなく。

 よく知る、少ない個人。

 限られた、アナタに。 

「みんなで作った、物語の続きを、どうか」

 これ以上の人物は、いない。

 初めて会ったブルーが、口にした言葉が。
 沙羅の体に、ドシリと、のしかかる。

 頬を、涙が流れ。

 理由も分からず、あたりを、見渡すしかない。

 リカの言葉に、どう答えるのか。
 分からないまま、力なく。

 膝をつくしかない。

 一つ一つでしか、見えていなかった。
 この世界での、体験。

 一つの、流れになれば。

 期間が、あまりに短くても、大きくても。

 大きな尺度、歴史の教科書に載せられた、大きな川。
 今に、たどり着く、物語を読み解いたなら。

 教科書のページに続く先の、物語を作っていくのは。

 適度に、まとめられ。
 歴史を、書いた人物の趣向を含まない、未来を作るのは。

 誰でもない、自分自身で。
 好き勝手に、生きていけば、自然に、できあがるモノ。

 白龍を、白龍としたのは、ブルー自身じゃない。

 ブルーは、ただ、望みを果たそうとしていた、だけだ。

 でも、届かない。
 残ってしまった、後に残り続けた、悔い。

「は、ハハハ…」
 どこかの誰かと、ナニも変わらない。

 願いがあり。
 望みがあり。
 ただ、デキることを。
 積み木のように、積み上げていっただけ。

 ときには、崩れ。
 ときには、思ってもいなかった、形になる。

 なぜ、わざわざ無駄な努力を、積み重ねるのか。

 誰に聞かれても、馬鹿にされても。
 後ろ指を、指されても。

 積み木を、ただ、ただ、積み上げただけ。
 望む形が、あるからこそ。

 どこかの誰かに、持たされた、力と。
 ナニが、違うのだろう。

 繰り返し、繰り返し。
 ないと思っていた、チュートリアルを、説明され続けていた。

 言葉では伝わらない。
 空気と、肌で感じた「ソレ」が、なければ、理解できないから。

「ブルーは、一石で。ドレだけ、残そうとしたんだ…」

 今日までの一日、一日が、すべてチュートリアルなら。

 本当のゲーム開始は、ドコにあるのか。

 こうして、区切ることすら。

 バカバカしく、思えているのは、ナゼなのだろう。

「…ドコに、そんなもの、あったんだ?」

 国境線を、引きたがっていた、だけだ。
 決まりとして、引いてあるが。

 それが、世界の全てでは、ない。

 そして、何より。

 ソウは、ならないと、思っていた。
 ブルーと、同じ物語を、刻もうとしている。

 無意識に、なぞろうと、してしまっている。

 古い考えだと、やり方だと。

 おじさんだからと。

 だから、分からないんだ、と。

 繰り返し、口にした、ソノ体で。

「毒だ、コレは…」
 知識は、過去でしかない。

 知識は、使われるべき、ツールであって。
 ルールなどでは、ない。

 未来を縁取る、道具などでもなく。

 あのとき、アノ瞬間。
 何が使えるのか。
 ナニをすれば、望みに届くのか。

 思いつくための、力でしかない。

 なにが必要になるのか、分かりはしないのだから。
 無駄だと切り捨てられている、モノも。
 誰が見ても、ヒドい生活も、経験も。

 意味がないのに、やり続けているソレも。
 無駄だったと、言い切れるのは、死んだ本人、だけだ。

 美談は、美談でしかなく。
 作り話は、ドコまで行っても、作り話でしかない。
 史実に基づいた、記述であっても。
 記載した人間の意思が、ソコにある限り。

 いつから、この世の理のように。
 思い込んで、しまっていたのか。

 この世は、すべて数字だけで。
 表せると、思い込んでいるのだろう。

 考えてしまい。
 先の世界を、決めつけて、しまっていたのだろう。
 
 彼女たちが、望んでいるのは。
 白龍・ブルーの、事後談などではない。

 昔は、ヒドかったが。
 みんなが、救われたと言える、未来より。

 もっと、上位にある。

 誰でもない。
 私達の望みが叶っている、未来を、目指したい。
 
 必要なのは、スキルでも、何でもなく。

 手段でも、人脈でも、行動でもない。

 全ての根幹を成す、「覚悟」あってこそ。

 中身が、ふにゃふにゃの、ソレらは。
 中身がないから、何も得られないだけ。

 何かを手にしても、嬉しくないだけ。

 周りに評価を求めても、それだけだ。

 欲しいモノなど、何一つ、手にすることがデキない。

 全てを飲み込んだ上で、ロマンを求めるなら。
 ロマンは、ドコまでも「夢物語」で、あるべきだ。

 いかなる手段を、もってして、努力を続けても。
 どうなるのか、分かりは、しないのだから。

 伸ばした手が、届くか、届かないのか。
 判断するために。

 本当に欲しいモノを。
 ガラにもない方法で、手にするように。

 初恋の相手に。
 やり方も分からず。
 嫌われるほど、露骨なアクションを、見せようと。

 その、未来が、欲しいのだから。

 解決するだけの、白龍では。
 望みを、叶えるだけの白龍では。

 沙羅の、望みを叶えるには、ほど遠く。

 彼女たちの願いを、叶えるには。

 何もかもが、足りていない。

 沙羅は、目元を拭い。
 シッカリと、二本の足で立つ。

「オマエらの、願いは却下だ」

 ピクリと動く、みなを見渡し。

 沙羅は。

「オレが、悲しまないようにしたい、だったな?」

 彼女たちは、首を落とされた、囚人のように。

 足に、力が入らなくなっているのが、見え。

「オマエら、頭を下げていないで。
 いつもみたいに、立ってみろよ」

 沙羅は、ダメ子の後ろに回り。

 頭を両手で、つかみ上げた。
「痛い痛い痛い!」

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