さんじゅういち

文字数 817文字

 -半年後
 
「えー、みなさんご存知の通り、修学旅行は京都と奈良です。自由行動があるので、みなさんの好きなようにグループを作ってください」
 大澤先生は教卓に手を置き、私たちに言った。
「せんせーい、敢えてあみだくじとかで決めません?その方がおもしろそうだし」
 髪をいじりながら提案するのは夏実だ。
「さんせーい」春海が夏実に同調している。この2人、研修が終わった直後は気まずそうにしていたが、今ではすっかり元通りの関係に戻っている。
 3年生に進級するときのクラス替えは無く、同じメンバーが顔を揃えている。絆をさらに深めるための配慮だろう。
「そうか、みんな異論はないな?」
 先生はそう言うと、黒板に一本ずつ線を引き始めた。そして「よーし、前に出てこい」という言葉ともに、みんな一斉に前に出てきて各々の名前を書き始めている。
 賑やかな雰囲気がクラス中を包んでいる。
 私たちの班は、聡、佑太郎、隆志、夏実、そして藍美だ。中々濃いメンバーで、楽しくなりそうだ。
「みんな、できるだけたくさんの場所を回ろうね!」
 藍美はいつものように無邪気な笑顔を見せている。このメンバーをまとめることができるのは、藍美しかいない。隣を見ると、善行が博に京都の名所を熱弁している。博は興味深そうに頷いている。善行の熱に、同じグループの人たちが少し引き始めているが、なんだかんだ楽しそうだ。
 私はこのゲームを経て、クラスのみんなのことを知ることができた。そして好きになることができた。残りの学校生活も存分に楽しもうと思っている。
 佑太郎が「楽しい修学旅行にしようぜ」と私たちに言った。私は佑太郎に「うんっ!」と言って、半年前から筆箱に入れてあるお守りを握りしめた。
「あ、これ懐かしい!筆箱に入れてたんだ!」
 藍美が嬉しそうに私の顔を見ている。
 私はこのクラスが良くなったところでまだ満足しているわけではない。
 
 
 佑太郎を巡った夏実との

は、これからが本番だから。
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