第135話 錆びた線路【6】

文字数 706文字

【6】

【昭和6年(1931年)10月4日午前7時1分、淋代海岸を大勢の村民に見送られて離陸したミスビードル号は、行程7910㎞、飛行時間41時間12分、平均速度192㎞/hで、日本時間6日午後0時11分、アメリカのウェナッチ市郊外に胴体着陸し、世界初の太平洋無着陸横断の大偉業は成し遂げられました。
 この成功には、淋代村民が斜面に杉板を敷き詰めた臨時の滑走路を造ったり、淋代村長(小比類巻要人氏)が自宅を宿舎に提供したりと、日本人の手厚い協力がありました。
 また、満タンの燃料に加え、二ヶ月分の食料(バター・チーズ・コーヒー・黒パン・リンゴ・鳥の丸焼き等)が村民の好意で積み込まれたことや、成功の知らせが三沢に届くと、祝電を打つために臨時村議会を召集して予算支出を決めるという騒ぎまであったと記録にあります。
 この太平洋横断飛行の成功は日米両国の間に大きな友情の輪をかけましたが、折りしも日米の関係は悪化の一途をたどり、リンドバーグの大西洋無着陸横断飛行を上回る快挙を挙げながらも、歴史からは抹殺され続け、忌まわしい太平洋戦争終結から60年以上が経過した現在でも一般にはあまり知られていない事は残念です。】

【パイロットは、日本人から受けた手厚いもてなしを米国各地で語ったことから、既に悪化していた米国民の対日感情が、一時急改善される現象が起きたそうです。】

 私の頬を、ひんやりとした風がスッと掠めた。

〈なるほど、冷たい風だ……〉

 地元では、夏に吹く冷涼な海風と濃霧を「ヤマセ」と云うそうだ。
 このヤマセが強い年は、日光が遮られ極めて低温となるため稲作も畑作も不作となるので人々は毎年戦々恐々としていたそうである。
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