第53話 カセットテープB面【19】

文字数 853文字

【19】

『えーっと、イギリスのニューサウスウェールズ州立図書館には、「今日の収穫アボリジニ、十七匹」と書かれた一九二○年代の日記が保管されているそうですわ。
 イギリスが統治していたオーストラリアでは、国際連盟が発足するというその年に、世界に冠たる大英帝国の紳士諸氏が、日曜日のレジャーとして原住民狩りを行っていたようですな。
 もともとオーストラリアには六百万人のアボリジニが住んでいたそうですが、イギリス人入植者に虐殺され三十万人にまで激減してしまったそうですわ。
 仏領インドシナ、当時は仏印といいましたが、現在のカンボジアとベトナムはフランスの植民地でした。
 フランスを代表する企業であるミシュランのタイヤは、もともとインドシナやベトナム産の天然ゴムを原料としたものなんです。
 仏印では、フランスの圧制に耐えかねて何度も反乱が起きましたが、そのたびに軍隊に鎮圧され、首謀者は裁判もなく即刻ギロチンにかけられたそうです。
 また現地人には人頭税がかけられ、税を滞納した者は政治犯として監獄に入れられたそうです。多くは働き手にならない子供や老人だったが、獄死すれば遺族から葬式税を取り立てたそうですわ。
 オランダが統治していた蘭領インドシナでは、刑務所で過酷な労働をさせられている囚人らが、オランダ人の奴隷でいるより待遇が良いからと出所を拒否したそうです。
 インドシナ原住民とオランダ人入植者の所得比は一対一三○○○だったと伝えられています。
 そのオランダは、プランテーションと云う強制栽培制度を蘭印に押し付けました。
 原住民の主食である米の水田を潰して、コーヒー、サトウキビ、煙草、胡椒などの本国で高く売れる嗜好品を強制的に植えさせたのです。
 これによって米を失った原住民は飢えていきました。
 オランダ統治時代のインドシナの平均寿命は三十五歳にまで低下したそうです。
 そんな劣悪な状況でしたから、日本軍がオランダを追い出し蘭印に入ったときには、各地で地鳴りがするほどの歓声とどよめきが湧き上がったそうです。
 
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