第104話 由紀さおり・安田祥子童謡コンサートに行くみーちゃん

文字数 1,157文字

 今日のみーちゃんは童謡コンサートに行きます。

 北上市民会館に、由紀さおり・安田祥子姉妹がやって来ます。

 開演は6時からです。みーちゃんは、5時半には前から5列目の真ん中にお母さんと座っています。

 コンサートが始まって、45分くらいしたところで、リクエスト・コーナーになります。

 由紀さおりさんと安田祥子さんが交互に、こう言います。

 「これからみなさんのリクエストに応えて歌いたいと思いま~す。でも、全員のリクエストに応えることは、残念ですが、できませんから、何人かの子供たちに代表してもらうことにしまーす。選ばれた人は、どうぞステージまで来てくださいね。は~い、歌って欲しいお歌がある人は手を上げてくださーい」。

 ──もし誰も手を上げなかったら、かわいそうだな。遠くから来たのに。それじゃあんまりだ。よし、助けてあげよう。

 「はーい!!」

 みーちゃんは、だれよりも早く手を上げます。

 「まあ、こんなにいっぱい!だれにしましょうか?えーと、は~い、そこの一番はやく手を上げた女の子。は~い、あなたよ。1、2、3、4、5列目の真ん中の。どうぞステージにあがって来てください」。

 由紀さおりさんがみーちゃんを手招きします。

 ほかに、男子2人と女子1人が選ばれています。

 みーちゃんは、せまい座席の間を通りぬけ、通路に出ます。向かって左側の下からステージにあがると、安田祥子さんが迎えてくれます。

 子どもたち4人がステージの中央に集まると、由紀さおりさんがしゃがんで、まず、みーちゃんの目を見つめて、こう言います。

 「お名前を教えてください」。

 ─きれいな人だなあ。それに、なんか、いい香りがする~!

 みーちゃんは、自分の名前とお父さんとお母さんのお名前と学校の名前と担任の岩田先生の名前まで答えます。こういうときは、お世話になっている人に感謝しなくてはいけません。

 「岩田先生は独身で、お嫁さんを募集しているそうです」。

 会場は大爆笑につつまれます。

 「まあ、しっかりしてるのね~」。

 安田祥子さんが客席を見渡しながら、笑顔でそう言います。お母さんを見ると、下を向いています。

 由紀さおりさんは、ほかの子たちの名前を聞きき終わると、またみーちゃんのところに戻ってきます。

 「歌って欲しいお歌は何ですか?」

 みーちゃんは思いきってこう答えます。

 「えーと、『グッドバイ』をお願いします」。

 「『グッドバイ』?ああ、は~い、『グッドバイ』ですね。せっかく会ったのに、『グッドバイ』。それでは、『グッドバイ』を歌いま~す。みなさんもいっしょに歌ってくださいね」。

 由紀さおりさんが立ち上がり、安田祥子さんと『グッドバイ』を歌い始めます。

 やらなければならないことを果たして「よかった、よかった」と満足するみーちゃんなのです。
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