第11話 ブッダの伝記を読んだみーちゃん

文字数 779文字

 今日のみーちゃんはいつまで歩いてもうちに着きません。

 みーちゃんは学校の図書館からブッダの伝記を借りて読んでいます。手塚治虫のマンガ『ブッダ』を見て、ブッダについてもっと知りたくなったからです。

 お昼休みにかりたので、まだとちゅうです。でも、みーちゃんはすべての生き物に命が宿っているというお話にすっかり感動しています。

 ──そうか、どんな生き物にも命があるのか!小さな虫も大切にしなきゃいけないんだ。

 みーちゃんは下校のときに、さっそく、その教えを実行することにします。

 みーちゃんは、アリをふんでしまわないように、そろーりそろーりと歩いて帰ることにします。前を向いて足を大きくあげて歩いたら、アリをまちがって踏んで死なせてしまうかもしれません。でも、下を見ながら、ほんのちょっとあげて歩けば、アリがズックの下になることはありません。

 ──そろーり、そろーり、アリさんをふまないように。アリさんにも命があるんだから。大切にしなきゃ。

 みーちゃんはいつもの1歩分を10歩で歩きます。

 ──ふまないように、ふまないように。

 ほそうされた歩道を見つめて、みーちゃんは集中して歩きます。

 ──命を大切に、命を大切に。

 みーちゃんはもうかなり進んだなと思い、顔を上げて、確認することにします。

 ──えー!まだ三河屋さんの前なの?ぜんぜん進んでなーい!

 三河屋さんは小学校から100メートルくらい東にあります。みーちゃんのおうちは、そこから80メートル先の国道4号線の歩道橋を渡って、北上信用金庫の前を通って、交番のおまわりさんにあいさつして、ススキの原があって、市営住宅をすぎて、墓地の横をぬけて、それからまだまだ先です。

 ──これじゃあ、日が暮れても、おうちに着かないよ!どうしよう!どうしよう!どうしよう!

 命を大切にすることは大変だと思うみーちゃんなのです。
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