第1話 みーちゃんは探偵

文字数 630文字

 今日のみーちゃんは探偵の練習です。

 みーちゃんは岩手県北上市に住んでいます。北上市立南小学校に通っていて、1986年、つまり昭和61年のこの4月から4年生です。

 みーちゃんの将来の夢は私立探偵になることです。探偵の出てくる本は教室の誰よりも読んでいます。NHKで放送される外国の探偵ドラマだって欠かしません。お父さんに頼んで、ビデオに録画しています。

 探偵になるために、みーちゃんは、ときどき、お庭で虫メガネを使って地面に残された犯人の足跡や証拠品を探す練習をします。

 でも、このあいだは失敗と反省しています。

 みーちゃんが探偵の練習をしていたのに、ウリのつけものをおすそわけにきた近所のシゲおばあちゃんときたら、「虫とりすてらの?アリんこみつかったっかい?」と言うのです。

 でも、今日はバッチリ。だって、帽子をかぶっているんです。

 探偵はみんな帽子をかぶっています。テレビで見たシャーロック・ホームズだって、エルキュール・ポワロだって、ミス・マープルだって帽子をかぶっています。

 このあいだは帽子をかぶっていなかったから、シゲおばあちゃんはみーちゃんのことを探偵だってわからなかったにちがいありません。

 おまけに、この帽子は良子おばさんがアメリカに旅行したときのおみやげです。赤いつばをしていて、黒地に赤いSとFがかさなったマークがついています。

 ──英語の帽子だもん。大丈夫!今度はぜったいまちがえられっこない。

 何ごとにも形から入るみーちゃんなのです。
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