第98話 整形外科にお母さんと一緒に行くみーちゃん

文字数 844文字

 今日のみーちゃんはお母さんと一緒に佐々木整形外科に行きます。

 みーちゃんは、休み時間に、階段を踏みはずし、右足を痛くしてしまいます。歩いて下校できないので、お母さんに迎えに来てもらい、病院に行くことになります。

 お母さんは佐々木整形外科に診てもらうことに決めます。最近、開業したばかりなのに、腕がいいと評判です。病院は街の中心から少しはずれたところにあります。駐車場が広くて、新築の二階建てで、待合室には背もたれのないこげ茶色の新品のソファーがあります。運動部の高校生や日焼けしたおじさん、居眠りをしているおばあちゃんなど数人が待っています。

 診察室に入ると、お医者さんが「こんにちは、どうしましたか?」とみーちゃんたちに話しかけます。お医者さんは30歳前半くらいの男の先生です。メガネをかけていて、髪の毛七三にきれいに分けています。スマートな体形で、都会的な雰囲気です。

 みーちゃんがケガをした時のことを話すと、「うんうん、なるほど」とお医者さんはうなずきます。

 「ちょっとごめんね、足に触るからね」。

 そう言って先生はみーちゃんの右足を触り、時々、「痛い?」とやさしい話し方で確かめます。
 先生は机のカルテに万年筆を走らせた後、みーちゃんたちの方を向いてこう言います。

 「捻挫ですね。骨は折れてません。湿布を出しておきます。晴れや痛みは1週間ほどでなくなると思います。念のため、1週間後にまた来てください」。

 みーちゃんとお母さんがお礼をすると、先生は「はい、お大事に」と軽く微笑みます。

 診察室から出ると、お母さんが目を輝かせてみーちゃんにこう言います。

 「ねえ、今のお医者さん、ステキだったでしょう?」

 ──は?

 「ステキよね~、知的で、都会的っていうの、そういう雰囲気よね~」。

 ──あの~、私の足は心配じゃないのかな~

 お母さんはすっかりルンルンです。

 ──佐々木整形を選んだのって、まさかこれが目的?

 お母さんと一緒に病院に行くのはやめようと心に決めたみーちゃんなのです。
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