第59話 みーちゃんの学芸会

文字数 878文字

 今日のみーちゃんは学芸会です。

 みーちゃんのクラスは学芸会で『こぶとりじいさん』のお芝居をすることになります。ところが、配役を決めるホームルームの時、誰も主役のこぶとりじいさんをやりたいと手を挙げません。

 ──ヒーローならやりたいけど、ほっぺたにこぶをつけたおじいさんはカッコ悪いもんな~。

 みーちゃんがそう思って居ると、岩田先生が首をせわしなく左右に動かし、クラスのみんなにこう言います。

 「なんだ、誰もいないのか?こぶとりじいさんは主役だぞ。主役がいないと、劇は始まらないぞ」。

 ──なんか、みんな困ってるなー、よし、助けてあげよう!

 みーちゃんは正義感ですから、みんなが困っている時に見て見ぬふりはできません。

 「はい!先生、私がやります!」

 手を挙げるみーちゃんを見て、岩田先生がホッとした表情をします。

 「や、やってくれるか!よし!主役は決まりだ!先生は嬉しいぞ、がんばれよ!」

 『こぶとりじいさん』は有名なお話です。みーちゃんのうちにも絵本があります。ですから、お芝居で初めて主役を演じるみーちゃんですが、セリフを覚えることや演技をすることもむずかしくありません。

 ただ、リハーサルではこぶをつけません。けれども、みーちゃんはついているつもりで演技をします。自分ではなかなかうまくできてると思っています。

 今日は学芸会の当日です。

 みーちゃんたちのクラスの番が近づいてきたので、教室で用意をして出番に備えます。岩田先生が自分で作ったこぶをみーちゃんの左のほっぺに両面テープではりつけます。こぶは切ったストッキングに綿を軽くつめたものです。

 「よし、うまくくっついた」。

 岩田先生はすっかりご満悦です。みーちゃんはこぶをつけた自分の姿を姿見で確認します。

 ──えー!何これー!みっともなーい!

 顔の左側が大きくはれ上がって、まるでおたふくかぜをひいているみたいです。カッコ悪くて、すっかり後悔してしまいます。

 デヴィッド・ボウイがエレファントマンを演じたように、むずかしい役ほど役者冥利に尽きるなどとはまったく思いもよらないみーちゃんなのです。
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