第83話 お祖母ちゃんに口止め料を渡されるみーちゃん

文字数 1,002文字

 今日のみーちゃんはお祖母ちゃんから口止め料を渡されます。

 みーちゃんがお祖母ちゃんと茶の間でテレビを見ていると、台所の方から変なにおいがしてきます。

 「ん?なんか、焦げくさい・・・」

 みーちゃんがそうつぶやくと、お祖母ちゃんが突然立ちあがり、台所へ駆け出します。

 ──え~!まさか、また~?

 みーちゃんが台所に行ってみると、案の定です。お祖母ちゃんが流しになべを入れて大慌てで水道の蛇口をひねっています。ジュ―という大きな音がして、白い煙が上がっています。

 お祖母ちゃんは、火にかけたことを忘れてしまい、これまで何度もなべをダメにしています。おなべを火にかけたまま、街に買い物に行ってしまったこともあります。火事にならなかったのは、たまたま誰かが見つけたなど運がよかっただけです。

 お祖母ちゃんがダメにしたのはおなべだけではありません。空炊きをして風呂釜も2度ダメにしたことがあります。

 ひいばあちゃんは火の始末にはとても用心しています。ひいばあちゃんが嫁入りしてから、2回火事に見舞われたからです。どちらももらい火でしたが、昔は火災保険がありませんから、家を建て直すのに本当に苦労したそうです。

 ですから、ひっこさんは床に就く前に、「先さ寝るども、火の始末は気つけろや」と必ず家族に言います。ところが、お祖母ちゃんは、その度に、「いっつもうるせじゃ」と悪態をつくのです。

 「お祖母ちゃん、またおなべを焦がしたの?」

 みーちゃんがそう声をかけると、お祖母ちゃんは今度は茶の間に急いで戻ります。茶だんすの戸棚から財布を取り出して台所に戻り、みーちゃんに1000円札を渡します。

 「お母(か)さんには黙ってろな」。

 ──これって、もしかして口止め料?

 「ただいまー」。

 その直後に、玄関からお母さんの声がします。「おかえりー」とみーちゃんが返すやいなやお母さんが大声をあげます。

 「何、この匂い?焦げくさい!またお祖母ちゃんがなべを焦がしたの?」

 実は、お母さんはとても鼻が利くのです。誰もわからない時でも、お母さんだけ匂いに気づくことがあります。東京のデパートで道に迷った時、匂いをたよりに元いたところに戻ってきたことがあるのです。

 お祖母ちゃんは舌打ちをして、いまいましそうに、こうつぶやきます。

 「ああ!渡すんじゃなかった!」

 今回のこともお祖母ちゃんには教訓にならないなと呆れるみーちゃんなのです。
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