第16話 選挙が大好きみーちゃんのお祖父ちゃん 

文字数 948文字

 今日のみーちゃんは選挙が始まります。

 中曽根首相が絶対にしないと言っていたのに、急に衆議院を解散して、参議院と一緒に選挙することになります。総理大臣がうそをつくのはいけないんじゃないかなと思ってお父さんにに聞くと、「解散のことはいいんだ、あれは死んだふりをしていただけだから」と教えてくれます。

 みーちゃんのお祖父ちゃんは選挙が大好きです。開票の特別番組をプロレス中継の時のように興奮して見ています。

 お祖父ちゃんは自民党の椎名素夫先生の後援会員です。素夫先生のお父さんの悦三郎先生の頃から講演会に参加しています。悦三郎先生は自民党の副総裁を務め、三木武夫首相を誕生させた「椎名裁定」で知られています。

 選挙になると、お祖父ちゃんは朝ご飯を食べてすぐ黒い自転車にまたがって出かけます。晩ご飯まで家に帰って来ません。

 選挙の応援に行っているのですが、どんなことをしているのか詳しくはみーちゃんも知りません。選挙と言うと、みーちゃんには選挙カーです。立候補者の名前を繰り返し叫ぶ選挙カーが走り回っている光景がみーちゃんにとっての選挙です。選挙カーに手を振ると、手を振り返してくれます。選挙カーは子どもにもやさしいので、みーちゃんは大好きです。

 けれども、お祖父ちゃんが選挙カーに乗っているのは見たことがありません。お祖父ちゃんが選挙カーにいると、職業軍人だったので、右翼の街宣車と見間違えるからかもしれません。

 お祖父ちゃんは選挙のときだけでなく、椎名先生によく会いに行っています。みーちゃんはお祖父ちゃんに「椎名先生ってどういう人?」と聞いたことがあります。

 「悦三郎先生と違って、素夫先生は学者肌だからな~」

 そうお祖父ちゃんは少しもどかしそうに話します。

 選挙期間中、お祖父ちゃんはあちこち自転車で回って、椎名先生への投票をお願いしているそうです。けれども、おじいちゃんはおしゃべりなので、選挙だけでなく、他の噂話もしてしまいます。

 「みーちゃんのお祖父ちゃんって、『放送局』だよねー」・

 そんなふうに、えつこちゃんやまなぶくんから言われます。

 ──あ~あ~、お祖父ちゃん、また余計なことを言っちゃうんだろうな~。

 選挙になると、自転車に乗ったお祖父ちゃんが恥ずかしくなるみーちゃんなのです。
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