第66話 お母さんに乳ばなれの話を聞くみーちゃん

文字数 1,102文字

 今日のみーちゃんはお母さんに乳ばなれの話を聞きます。

 家庭科の授業で自分の幼い頃の話を家族に聞いてくる宿題が出されます。歩けるようになったり、話せるようになったり、乳ばなれしたりした時期を調べるのです。

 みーちゃんは夕食後に茶の間でお母さんに聞くことにします。

 「お母さん、私が乳ばなれしたのは何歳ぐらいの時?」

 そうみーちゃんが尋ねると、お母さんはこう答えます。

 「普通。確か、3歳ぐらいだったかな」。

 みーちゃんはノートに書き留めます。

 ──なんか、歩くのも、話すのも、乳ばなれも、全部「普通」だな。

 せっかくだからお兄ちゃんたちのことも聞いてみようとみーちゃんは思います。

 「きーちゃんの乳ばなれはいつ頃だったの?」

 きーちゃんは上のお兄ちゃんです。みーちゃんと11歳はなれています。みーちゃんと6歳違いの下のお兄ちゃんがなーちゃんです。

 「きーちゃんはいつまでも、いつまでも」。

 お母さんがそう口にしたのを耳にしたみーちゃんは、思わず、聞き返します。

 「え?『いつまでも』って?」

 驚くみーちゃんにお母さんはこともなげに言います。

 「だから、きーちゃんね、乳ばなれしなかったのよ」。

 ──乳ばなれしなかった?それって……

 あっけにとられるみーちゃんにお母さんがこう続けます。

 「きーちゃんね、ことのほか、おっぱいが好きな子だったのよ。お乳が飲みたいんじゃなくて、おっぱいが大好きなの。いつまでもこれではいけないと思って、5歳ぐらいの時かな~ある日、きーちゃんが来る前におっぱいに南蛮を塗ったの」。

 「南蛮って唐辛子のこと?」

 「そう。で、いつものように、きーちゃんが来て、おっぱいにパクっとしたのよ。南蛮塗ってあるのを知らないで」。

 「それで?」

 「そしたら、きーちゃん、慌てておっぱいから口を放して、部屋から大急ぎで出て行っちゃった」。

 「うわ~」

 みーちゃんは、話を聞いているだけで 舌が熱くなったような気がして顔が歪みます。ところが、お母さんはため息をつくのです。

 「これで大丈夫と思ったんだけどね……」

 ──「これで大丈夫と思った」?「思った」って?

 「しばらくして、きーちゃんが手に水の入ったコップを持って戻って来たのよ。『これで大丈夫』と言って、コップの水で口を冷やしながら、おっぱいにしゃぶりついてね……」

 みーちゃんが開いた口がふさがらなくなっていると、お母さんは肩を落としてこうつぶやきます。

 「この子はバカではないなと思って、それで諦めた……」

 ──バカではないかもしれないけれど、頭の使い方がちょっと……

 「三つ子の魂百までも」のことわざを思い浮かべるみーちゃんなのです。
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