第43話 秋祭りのみーちゃん

文字数 1,019文字

 今日のみーちゃんは秋祭りです。

 みーちゃんはお祭が大好きです。お祭にはお小遣いを1000円もらえるし、型ぬきのようなお祭でしかできないことやヨーヨーみたいなお祭でしか売っていないものがあるからです。それに、普段は禁止されている買い食いもお祭ではオーケーというのも嬉しいのです。

 お祭りは白山神社で開かれます。白山神社は、みーちゃんのうちから県道に沿って南に歩いて7分くらいのところにあります。

 でも、子どもだけではお祭に行ってはいけないので、お祖母ちゃんと一緒です。

 でも、お祖母ちゃんはお参りを終えるとカラオケ大会の会場に行ってしまいます。お祖母ちゃんはお祭や盆踊りになると、家のことをほっぽり出して参加しちゃうような人なのです。

 でも、クラスの人たちもたくさん来ているので平気です。境内に来る途中で、よしのぶくんと会います。よしのぶくんは焼き鳥を食べていて、それを見てみーちゃんも何かを食べたくなります。

 でも、焼き鳥は千石の塩に限るので、みーちゃんは焼きそばにすることにします。

 そこで、参道の真ん中あたりまで戻って、焼きそば屋さんのおじさんに声をかけます。

 「おじさーん、焼きそばちょうだい」。

 大仏さまのようなヘアー・スタイルにはちまきを巻いて、ちょっとバカボンのパパに似ているおじさんは真っ黒に日焼けした顔中に汗の粒が浮いています。

 「あいよ、1個300円ね」。

 ちょっと高いなあと思いましたが、お祭は普通のときではないので、しかたがないのです。御父さんは温泉や野球場とかレジャーで行くところでは、みんな気が大きくなるから、値段が高くしてあると言っています。

 1000円札を渡すと、おじさんは手さげ金庫を開けて、それを入れ、小銭をとり出します。手のひらの上で数えてからみーちゃんに100円玉7枚を返してくれます。

 おじさんは金属のこてを両手でリズミカルにそばや具を鉄板の上でかき混ぜます。

 ──わあ、じょうず!

 おじさんは焼きそばを長方形の透明なプラスチックの器に入れて、べにしょうがを上にのせてふたを閉め、セロテープでとめます。そのとき、みーちゃんはおじさんの左手が右手とちょっと違うことに気がつきます。

 ──あれ?左の小指がない。どうしたんだろ?

 「熱いから気をつけてね」。

 そう言って、おじさんは笑顔でみーちゃんにわりばしと焼きそばを渡します。

 焼きそばを受けとりながら、目をどこにやっていいか悩むみーちゃんなのです。
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