第58話 秘密の実験を目撃するみーちゃん

文字数 891文字

 今日のみーちゃんは理科室で秘密の現場を目撃してしまいます。

 みーちゃんの小学校には理科室が1階と2階に一つずつあります。1階の理科室にはちょっと怖い生物の標本があります。2階にはアルコールランプとかフラスコとか化学の実験道具があります。

 みーちゃんが2階の理科室の前を通ると、中からカチャカチャという音がします。

 ──なんだろ?

 静かにドアを開けると、同級生のまさよしくんがいます。まさよしくんはやせていて、目が大きく、顔が三角形なので、「かまきり」と男子から呼ばれています。

 まさよしくんは、流し場の前で、図画のときに、筆を洗うための水入れで、何かをかき混ぜています。悪魔がどうのこうのと小さな声でつぶやいています。

 ──あれ、ひとりで何してるんだろう?

 みーちゃんは近づきながら、こう尋ねます。

 「まさよしくん、何してるの?」

 びくっとして、まさよしくんが顔をあげます。

 「あ、みーちゃん。ちっ、見られてしまったか」。

 「見られたって、何を?」

 白い大きな机の上にフィルム・ケースが数個あります。中には、粉や砂みたいなものが入っているように見えます。

 「誰にも言わない?」

 まさよしくんは声をひそめて、そう言います。

 「うん。誰にも言わない」。

 みーちゃんも声の大きさをおとします。

 「毒をつくってるんだ」。

 まさよしくんはさらに声を小さくしています。

 「毒?」

 みーちゃんは口が閉じなくなってしまいます。

 「そう。毒。それも猛毒だよ」。

 ガラスのかき混ぜ棒の角に立てかけてある水入れをのぞきこむと、真っ黒な液体が見えます。

 「それ、どうするの?」

 「給食のおつゆに入れて、みな殺しにしてやるんだ」。

 まさよしくんは吸血鬼のような笑みを浮かべて、そう言います。

 「ふーん」。

 でも、心配なんかしてません。みーちゃんはまさよしくんがそんなことできるわけがないと見ぬいちゃってるんです。

 だって、そんなことをしたら、ゆーちゃんまで死んじゃいます。まさよしくんはゆーちゃんのことが好きなんですから、できっこありません。

 探偵の目はごまかせないよと心の中でつぶやくみーちゃんなのです。
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