12 S級との激闘
文字数 2,378文字
第1隊の葵 が最後の戦神八姫 、フレイア・グラムロックを召喚した頃──。
第2隊。シノと生存者、聖王女マルグリットは先行してビジネスホテルへと向かう。
そしてひとり残った鉄拳豪腕娘リッカの猛攻は続いていた。
装甲を外し、フェザーフォームになったリッカのスピードにS級魔族 シャバはついていけない。
回し蹴りで壁にめり込んだシャバの足をつかみ、リッカは引きずり出して宙へ投げる。
瞬時に跳躍、空中で拳と蹴りの連打。
ゴゴガガガッ、と激しい閃光と衝撃音。
さらに打ち下ろしの蹴りで地面へ叩きつけられるシャバ。
「ぐあっ……ナメんなっ!」
すぐに起き上がり、上からの追撃に向けカウンターの拳打。
だが左腕2本の攻撃をすり抜け、リッカの飛び込みながらの拳。ゴシャッ、とシャバの顔面にめり込む。
のけ反りながらもシャバは右の2本の腕を伸ばす──が、手刀で弾かれながら懐に潜り込まれ、痛烈なヒジ打ちを脇腹に喰らった。
「う……ごっ」
前のめりになるシャバ。その下がった顔面をリッカのヒザ蹴りが打ち抜いた。
ブシュウウ、と黒い血を吹き出しながらうしろへさがるシャバ。
残心の構えでそれを見届けるリッカ。倒れる──そう思ったが、ギリギリのところで踏ん張り、それどころかガバアッ、と勢いよく反撃してきた。
「ちいっ」
バックステップでそれをかわすリッカ。
シャバの拳は地面を大きく抉る。
シャバはべっ、と血を吐きながら首をゴキゴキと鳴らす。
「あー、スピードはたしかにスゲーけどよ。一発一発の重さはさっきの装甲付きのほうが効いたわ。そんなんでマジに俺に勝てると思ってんのかね。それに……」
ギイイイ、ギチギチとシャバの身体の筋肉が音を立て、引き締まっていく。細い鋼のように。
「スピード重視のスタイルならなあ! 俺だって余裕でやれんだよっっ!」
踏み込んでの左拳。ビッ、とリッカの頬をかすめた。
「テメエッ……」
「ぼやぼやしてんなよ、どんどんいくぜぇ!」
シャバの4本腕の連打。ボボボッ、とリッカはかわしながら後退──だが、さらに踏み込んだシャバの追撃。
ドゴゴッ、とついにリッカの身体にヒット。ガードの上からだが、それでもリッカは吹っ飛ばされて地面の上をバウンドする。
「それとなあ、防御力も下がってるぜ。簡単に吹っ飛ぶしよ。ヤベーんじゃねーの? お前」
「……うっるせえ! もう勝った気でいやがるのか。オレの息の根を完全に止めてからほざきやがれ」
リッカは口から出た血を拭いながら立ち上がる。
シャバは4本の手をプラプラさせながらニタリと笑う。
「へっ、だったらそうさせてもらうぜ。覚悟はできてるようだしな」
ドッ、と突進するシャバ。リッカも突っ込み、拳を繰り出す。
「おらあああっっ!」
「うおおおおっっ!」
連撃 の応酬。お互いの拳が次々とヒットし、ふたりの赤と黒の血がボタボタと地面へ落ちる。
互角に見えた連打戦だが、その均衡は早くも崩れてきた。手数、威力ともにシャバのほうが上回っている。
リッカはよろめき、ヒザから崩れ落ちそうになる。
「終わらせてやるぜ! よくやったよお前は──たったひとりでよう!」
ボッ、と4つの拳が一度にリッカに迫る。だがそれがリッカに届くことはなかった。
斜め上方からの閃光がシャバに衝突。シャバは吹っ飛び、リッカも衝撃でうしろへ倒れる。
「なんっ……だ! いてぇっ、クソがあっ」
怒りをあらわにし、すぐに立って見上げるシャバ。リッカの視線も閃光の飛んできた場所へ。
旧国道沿いの商店。その屋根の上に青いシスター服の少女がガンランスの砲口をシャバのほうへ向けていた。
聖王女マルグリット。顔は汗だくで、大きく肩で息をしている。
「お前、なんでここに……」
リッカの質問に、マルグリットはぜぇぜぇ言いながら答える。
「生存者は……無事目的地に送り届けた……勇者様が……戻ってお前の手助けをしろと指示を……不本意だが、手を貸してやる」
「お前、走ってここまできたのか」
「……それ以外、方法があるのか。……甲冑は脱いだが、この槍……クソ重い」
それを聞いてリッカはぶふっ、と吹き出した。何がおかしい、不敬だぞとマルグリットがにらむ。
「ハハハッ、王女様がクソなんて言葉使うと思ってなかったからよ。あー、わりぃ、わりぃ。面白れーな、お前」
「……笑うのは……目の前の……敵を倒してからにしろ、まったく」
大きく息を整えながらマルグリットは次弾を装填。ガシャン、と照準を合わせ、引き金を引く。
ドギャッ、と放たれたガンランスの砲弾がシャバへ。それをかわしながらシャバは走る。その標的はマルグリットだ。
「かあっ、ふたりがかりでも俺には勝てねーってのによ! 悪あがきだぜっ!」
ガンランスを構えなおし、次弾を装填する間にシャバがマルグリットのもとへ到達してしまう。それほどの速さ。だが──。
跳躍したシャバの眼前にいきなりリッカが現れた。
「テメエッ、まだ動けるのか」
「早くトドメを刺しておくべきだったな。もうおせーけど」
ぐるっと前転し、右足のかかとをシャバの脳天へ叩きつける。
呻きながら落下するシャバ。4本の腕で受け身を取り、地面への激突は避けたが、またもマルグリットの砲撃。
ズギャアッ、と命中し、十字形の閃光が発生する。
シャバは4本腕でガードしていたが、被弾部分は黒くブスブスと焼き焦げていた。
「テメーら、いい加減にしとけよ……こっから先はマジでいくぜ」
バッと4本腕を広げ、シャバは唸り声をあげる。
ゴゴゴゴ、と地響きが起こり、大気もビリビリと振動する。
「S級魔族の本気……油断するとすぐに死ぬぞ。装甲女」
「今は装甲つけてねーよ、王女様。しんどいけど踏ん張るしかねーな」
マルグリットが横にきて十字聖槍の形を戻して身構え、リッカは不敵な笑みを浮かべながら手の平に拳を打ちあてた。
第2隊。シノと生存者、聖王女マルグリットは先行してビジネスホテルへと向かう。
そしてひとり残った鉄拳豪腕娘リッカの猛攻は続いていた。
装甲を外し、フェザーフォームになったリッカのスピードにS級
回し蹴りで壁にめり込んだシャバの足をつかみ、リッカは引きずり出して宙へ投げる。
瞬時に跳躍、空中で拳と蹴りの連打。
ゴゴガガガッ、と激しい閃光と衝撃音。
さらに打ち下ろしの蹴りで地面へ叩きつけられるシャバ。
「ぐあっ……ナメんなっ!」
すぐに起き上がり、上からの追撃に向けカウンターの拳打。
だが左腕2本の攻撃をすり抜け、リッカの飛び込みながらの拳。ゴシャッ、とシャバの顔面にめり込む。
のけ反りながらもシャバは右の2本の腕を伸ばす──が、手刀で弾かれながら懐に潜り込まれ、痛烈なヒジ打ちを脇腹に喰らった。
「う……ごっ」
前のめりになるシャバ。その下がった顔面をリッカのヒザ蹴りが打ち抜いた。
ブシュウウ、と黒い血を吹き出しながらうしろへさがるシャバ。
残心の構えでそれを見届けるリッカ。倒れる──そう思ったが、ギリギリのところで踏ん張り、それどころかガバアッ、と勢いよく反撃してきた。
「ちいっ」
バックステップでそれをかわすリッカ。
シャバの拳は地面を大きく抉る。
シャバはべっ、と血を吐きながら首をゴキゴキと鳴らす。
「あー、スピードはたしかにスゲーけどよ。一発一発の重さはさっきの装甲付きのほうが効いたわ。そんなんでマジに俺に勝てると思ってんのかね。それに……」
ギイイイ、ギチギチとシャバの身体の筋肉が音を立て、引き締まっていく。細い鋼のように。
「スピード重視のスタイルならなあ! 俺だって余裕でやれんだよっっ!」
踏み込んでの左拳。ビッ、とリッカの頬をかすめた。
「テメエッ……」
「ぼやぼやしてんなよ、どんどんいくぜぇ!」
シャバの4本腕の連打。ボボボッ、とリッカはかわしながら後退──だが、さらに踏み込んだシャバの追撃。
ドゴゴッ、とついにリッカの身体にヒット。ガードの上からだが、それでもリッカは吹っ飛ばされて地面の上をバウンドする。
「それとなあ、防御力も下がってるぜ。簡単に吹っ飛ぶしよ。ヤベーんじゃねーの? お前」
「……うっるせえ! もう勝った気でいやがるのか。オレの息の根を完全に止めてからほざきやがれ」
リッカは口から出た血を拭いながら立ち上がる。
シャバは4本の手をプラプラさせながらニタリと笑う。
「へっ、だったらそうさせてもらうぜ。覚悟はできてるようだしな」
ドッ、と突進するシャバ。リッカも突っ込み、拳を繰り出す。
「おらあああっっ!」
「うおおおおっっ!」
互角に見えた連打戦だが、その均衡は早くも崩れてきた。手数、威力ともにシャバのほうが上回っている。
リッカはよろめき、ヒザから崩れ落ちそうになる。
「終わらせてやるぜ! よくやったよお前は──たったひとりでよう!」
ボッ、と4つの拳が一度にリッカに迫る。だがそれがリッカに届くことはなかった。
斜め上方からの閃光がシャバに衝突。シャバは吹っ飛び、リッカも衝撃でうしろへ倒れる。
「なんっ……だ! いてぇっ、クソがあっ」
怒りをあらわにし、すぐに立って見上げるシャバ。リッカの視線も閃光の飛んできた場所へ。
旧国道沿いの商店。その屋根の上に青いシスター服の少女がガンランスの砲口をシャバのほうへ向けていた。
聖王女マルグリット。顔は汗だくで、大きく肩で息をしている。
「お前、なんでここに……」
リッカの質問に、マルグリットはぜぇぜぇ言いながら答える。
「生存者は……無事目的地に送り届けた……勇者様が……戻ってお前の手助けをしろと指示を……不本意だが、手を貸してやる」
「お前、走ってここまできたのか」
「……それ以外、方法があるのか。……甲冑は脱いだが、この槍……クソ重い」
それを聞いてリッカはぶふっ、と吹き出した。何がおかしい、不敬だぞとマルグリットがにらむ。
「ハハハッ、王女様がクソなんて言葉使うと思ってなかったからよ。あー、わりぃ、わりぃ。面白れーな、お前」
「……笑うのは……目の前の……敵を倒してからにしろ、まったく」
大きく息を整えながらマルグリットは次弾を装填。ガシャン、と照準を合わせ、引き金を引く。
ドギャッ、と放たれたガンランスの砲弾がシャバへ。それをかわしながらシャバは走る。その標的はマルグリットだ。
「かあっ、ふたりがかりでも俺には勝てねーってのによ! 悪あがきだぜっ!」
ガンランスを構えなおし、次弾を装填する間にシャバがマルグリットのもとへ到達してしまう。それほどの速さ。だが──。
跳躍したシャバの眼前にいきなりリッカが現れた。
「テメエッ、まだ動けるのか」
「早くトドメを刺しておくべきだったな。もうおせーけど」
ぐるっと前転し、右足のかかとをシャバの脳天へ叩きつける。
呻きながら落下するシャバ。4本の腕で受け身を取り、地面への激突は避けたが、またもマルグリットの砲撃。
ズギャアッ、と命中し、十字形の閃光が発生する。
シャバは4本腕でガードしていたが、被弾部分は黒くブスブスと焼き焦げていた。
「テメーら、いい加減にしとけよ……こっから先はマジでいくぜ」
バッと4本腕を広げ、シャバは唸り声をあげる。
ゴゴゴゴ、と地響きが起こり、大気もビリビリと振動する。
「S級魔族の本気……油断するとすぐに死ぬぞ。装甲女」
「今は装甲つけてねーよ、王女様。しんどいけど踏ん張るしかねーな」
マルグリットが横にきて十字聖槍の形を戻して身構え、リッカは不敵な笑みを浮かべながら手の平に拳を打ちあてた。