6 さらなる召喚
文字数 2,188文字
ボッ、と地面を砕きながらの跳躍。
一蹴りで鴫野みさきはウルルペクへ接近。
──そこから昆虫の右脚、デストラクションホッパーのヒザ蹴り。
「おっっほ、元気イイねっ!」
蹴りを受け止めたウルルペクの身体は衝撃で後ろへ大きくズレる。
「まだまだっ!」
さらに上から叩きつけるような蹴り。
これも受け止めたが、ウルルペクはガクッとヒザをつく。
ビキビキバキッ、と今度はみさきの左足が変化。
アイスゴーレムの力。氷巨兵の脚で勢いをつけ、顔面に向けて蹴り。
これもウルルペクは腕をクロスして防御。だがバガアッ、と弾き飛ばされてガードががら空きになる。
「いでぇっ──調子に乗りやがって」
追撃しようとするみさきに向けて毒霧攻撃。
まともに喰らい、よろめいたところにウルルペクのシッポが蛇のように伸びて先端で何度も突いた。
突いた場所からは黒い血が噴水のように噴き出る。シッポの先は鋭く尖らせた骨がむき出しになっていた。
「ハッハ~ッ! 俺っちの毒霧に毒針。もうひとりのお嬢ちゃん、アンタはもうオシマイさ。毒で醜く膨れあがって死んじまうんだよォ!」
みさきは血まみれになりながらアイスゴーレムの脚で大地を踏みつける。
ビシビシッ、と地を這う氷の刃。容赦なく下からウルルペクを突き上げる。
「なっ──にィ!? 俺っちの毒が効かねぇのかっっ!」
「効くわけないよ。ボク死んでるんだから。残念だったね」
みさきはデストラクションホッパーの左脚でグググと溜め、その場でボンッ、と宙高く飛び上がる。
そしてその高さとアイスゴーレムの重さ、堅固さを加えた急降下蹴り。ちょうど落下地点には聖王女マルグリットも突進している。
「くらえ、我が聖槍の一撃!」
「ゴーレムスタンプッッ!」
二戦姫同時攻撃 ──。
ビジネスホテルが倒壊するのではないかと思うほどの揺れ。
マルグリットとみさきが攻撃した地点は隕石が落ちたようなクレーターができていた。
その中心にいるウルルペクは右半身を大きく損傷。普通の人間なら間違いなく死んでいる怪我だが──。
「ハハアッ! やるねェ~。スゴいよお嬢ちゃんたち。エライエライ」
舌を出しながら笑い、もげかけている右腕をみずから引きちぎった。
呆気に取られているマルグリットとみさきが見ている間に、身体の損傷がみるみる癒えていく。
そして自切した腕までずるりと伸びて再生。
「はあ? デタラメな再生力だね。ボクらの同時攻撃を受けたのに。どうする、お姫様?」
「知れたこと。その再生力が尽きるまで攻撃を続けるのみ!」
「言うと思った。真面目で熱血だもんねー」
「軽口を叩くヒマがあるなら我に続け。ヤツを仕留めなければ勇者様に危害が及ぶ」
槍を構え、走り出すマルグリット。両足を元に戻したみさきもハイハイとそのあとについていく。
マルグリットの連続刺突。ウルルペクのシッポがそれに劣らぬ速さでぶつかり、弾く。
ガッ、とマルグリットの肩を踏み台にしてみさきが跳躍。左腕を魔狼マーナガルムへ変化。口からハウリングキャノンを放つ。
不敬な、とマルグリットが叫んだのと衝撃波がウルルペクに命中したのが同時。
たたらを踏むウルルペクにふたりが左右から迫る。
槍はウルルペクの首を貫き、マーナガルムの牙は脇腹を喰いちぎった。だが──。
ふたりは頭をわしづかみにされ、そのまま地面に叩きつけられる。ビジネスホテル内でシノが悲鳴をあげた。
「やっぱりふたりがかりでもS級には勝てナイ…! このままじゃやられてしまいマス」
だが現時点で桐生カエデ、マルグリット、鴫野みさき。3人の戦姫を呼び出している。
そのうちのひとり、カエデはこのビジネスホテルに強固な結界を張るための儀式に入っている。戦闘には加われない。
「あとひとり──あのS級を倒すためにあとひとり戦姫を喚び出さないといけない。今の俺にできるか」
体調はまだ万全ではない。4人もの戦姫を出現させるのも初めてだ。発動に失敗すれば召喚時間切れを早めてしまう結果になるかもしれない。
「葵サン……」
心配そうに見つめるシノの前で葵はバシン、と自分の頬を叩いた。
「くそっ、何を弱気になってるんだ、俺は。やれるかどうかじゃない。絶対やらなきゃダメなんだ」
マルグリットは蹴りあげられ、みさきはシッポに胴体を貫かれた。
血を吐きながら倒れるふたりを踏みつけ、ウルルペクは両手の爪をギリギリと伸ばして狙いを定める。
「さて、もう俺っち飽きちゃったよ。戦神八姫 だっけ? なかなかやるけどさ、やっぱ本気出したら相手にならないねェ。この毒爪でオシマイっとォ」
「待ちなさい、禍々 しい魂よ」
ウルルペクの動きが止まった。
声の方。巫女姿の少女が太刀を鞘からズラア、と抜いた。
「またかよ……あんましつこいと俺っちも怒るよ。何人来ようと一緒だっつーの。3人目のお嬢ちゃん」
鬼斬りの巫女、雛形結 。
葵の魔導書発動は成功し、彼女が召喚されたのだった。
「あなたたちの力はそんなものではないはず。立ちなさい、葵様をお守りするために」
結はウルルペクを無視し、マルグリットとみさきに呼びかける。
「不敬な……我を見下して命令するとは」
「なんかムカつくよね。わかりきった事をエラソーに言われると」
マルグリットとみさきは立ち上がりながらウルルペクに攻撃。それをガードしながらS級魔族はやれやれと飛び退いた。
一蹴りで鴫野みさきはウルルペクへ接近。
──そこから昆虫の右脚、デストラクションホッパーのヒザ蹴り。
「おっっほ、元気イイねっ!」
蹴りを受け止めたウルルペクの身体は衝撃で後ろへ大きくズレる。
「まだまだっ!」
さらに上から叩きつけるような蹴り。
これも受け止めたが、ウルルペクはガクッとヒザをつく。
ビキビキバキッ、と今度はみさきの左足が変化。
アイスゴーレムの力。氷巨兵の脚で勢いをつけ、顔面に向けて蹴り。
これもウルルペクは腕をクロスして防御。だがバガアッ、と弾き飛ばされてガードががら空きになる。
「いでぇっ──調子に乗りやがって」
追撃しようとするみさきに向けて毒霧攻撃。
まともに喰らい、よろめいたところにウルルペクのシッポが蛇のように伸びて先端で何度も突いた。
突いた場所からは黒い血が噴水のように噴き出る。シッポの先は鋭く尖らせた骨がむき出しになっていた。
「ハッハ~ッ! 俺っちの毒霧に毒針。もうひとりのお嬢ちゃん、アンタはもうオシマイさ。毒で醜く膨れあがって死んじまうんだよォ!」
みさきは血まみれになりながらアイスゴーレムの脚で大地を踏みつける。
ビシビシッ、と地を這う氷の刃。容赦なく下からウルルペクを突き上げる。
「なっ──にィ!? 俺っちの毒が効かねぇのかっっ!」
「効くわけないよ。ボク死んでるんだから。残念だったね」
みさきはデストラクションホッパーの左脚でグググと溜め、その場でボンッ、と宙高く飛び上がる。
そしてその高さとアイスゴーレムの重さ、堅固さを加えた急降下蹴り。ちょうど落下地点には聖王女マルグリットも突進している。
「くらえ、我が聖槍の一撃!」
「ゴーレムスタンプッッ!」
ビジネスホテルが倒壊するのではないかと思うほどの揺れ。
マルグリットとみさきが攻撃した地点は隕石が落ちたようなクレーターができていた。
その中心にいるウルルペクは右半身を大きく損傷。普通の人間なら間違いなく死んでいる怪我だが──。
「ハハアッ! やるねェ~。スゴいよお嬢ちゃんたち。エライエライ」
舌を出しながら笑い、もげかけている右腕をみずから引きちぎった。
呆気に取られているマルグリットとみさきが見ている間に、身体の損傷がみるみる癒えていく。
そして自切した腕までずるりと伸びて再生。
「はあ? デタラメな再生力だね。ボクらの同時攻撃を受けたのに。どうする、お姫様?」
「知れたこと。その再生力が尽きるまで攻撃を続けるのみ!」
「言うと思った。真面目で熱血だもんねー」
「軽口を叩くヒマがあるなら我に続け。ヤツを仕留めなければ勇者様に危害が及ぶ」
槍を構え、走り出すマルグリット。両足を元に戻したみさきもハイハイとそのあとについていく。
マルグリットの連続刺突。ウルルペクのシッポがそれに劣らぬ速さでぶつかり、弾く。
ガッ、とマルグリットの肩を踏み台にしてみさきが跳躍。左腕を魔狼マーナガルムへ変化。口からハウリングキャノンを放つ。
不敬な、とマルグリットが叫んだのと衝撃波がウルルペクに命中したのが同時。
たたらを踏むウルルペクにふたりが左右から迫る。
槍はウルルペクの首を貫き、マーナガルムの牙は脇腹を喰いちぎった。だが──。
ふたりは頭をわしづかみにされ、そのまま地面に叩きつけられる。ビジネスホテル内でシノが悲鳴をあげた。
「やっぱりふたりがかりでもS級には勝てナイ…! このままじゃやられてしまいマス」
だが現時点で桐生カエデ、マルグリット、鴫野みさき。3人の戦姫を呼び出している。
そのうちのひとり、カエデはこのビジネスホテルに強固な結界を張るための儀式に入っている。戦闘には加われない。
「あとひとり──あのS級を倒すためにあとひとり戦姫を喚び出さないといけない。今の俺にできるか」
体調はまだ万全ではない。4人もの戦姫を出現させるのも初めてだ。発動に失敗すれば召喚時間切れを早めてしまう結果になるかもしれない。
「葵サン……」
心配そうに見つめるシノの前で葵はバシン、と自分の頬を叩いた。
「くそっ、何を弱気になってるんだ、俺は。やれるかどうかじゃない。絶対やらなきゃダメなんだ」
マルグリットは蹴りあげられ、みさきはシッポに胴体を貫かれた。
血を吐きながら倒れるふたりを踏みつけ、ウルルペクは両手の爪をギリギリと伸ばして狙いを定める。
「さて、もう俺っち飽きちゃったよ。
「待ちなさい、
ウルルペクの動きが止まった。
声の方。巫女姿の少女が太刀を鞘からズラア、と抜いた。
「またかよ……あんましつこいと俺っちも怒るよ。何人来ようと一緒だっつーの。3人目のお嬢ちゃん」
鬼斬りの巫女、
葵の魔導書発動は成功し、彼女が召喚されたのだった。
「あなたたちの力はそんなものではないはず。立ちなさい、葵様をお守りするために」
結はウルルペクを無視し、マルグリットとみさきに呼びかける。
「不敬な……我を見下して命令するとは」
「なんかムカつくよね。わかりきった事をエラソーに言われると」
マルグリットとみさきは立ち上がりながらウルルペクに攻撃。それをガードしながらS級魔族はやれやれと飛び退いた。