11 オクタプルシャイニング
文字数 2,300文字
カエデの金属バットの連続殴打。
脚を中心にメッタ打ちにし、さしもの滅界竜もグラつく。
位置が低いために反撃がしづらいようだ。
アドラフレストはここで両腕を地面につけ、四つん這いの格好に。
ボヒュウッ、と尾の薙ぎ払い。かがんでかわす。アドラフレストは回転しながらの噛みつき攻撃。
フレイアに何本かは折られた牙だが、まだ殺傷力は十分にある。
カエデは今度はかわさず、野球の打者のようなフォームでカウンター。
打撃音が響き、アドラフレストの牙がまた何本か宙を舞う。だがカエデも衝撃で後ろへ吹っ飛ばされていた。
金属バットは真っ二つに折れ、カエデは倒壊したビルの瓦礫の中に埋もれる。だがすぐに飛び出し、グロック18Cの連射から左手に装着したメリケンサックで殴りつける。
この攻撃も意外にもアドラフレストを後退させるほどの威力。
桐生 カエデはもともと結界術や支援を得意とする後衛型の戦姫 だ。
だがこの強さ──先程の真言の効果だろうが、疲労した肉体を限界以上に酷使するものに違いなかった。
殴りつけた左腕。手首の部分が不自然に曲がっている。折れているに違いないが、それでも構わず殴り続けている。
いや、腕だけではない。右ヒザも外れているか折れている。口や耳からは流血していた。
「退魔師、無理をしてはいけません。一旦退きなさい」
見かねた雛形結 が近づいて声をかけるが、カエデは首を横に振る。
「アンタこそ力を温存しときなよ。最後の最後で頼りにするのはアンタなんだからさー。見ときなよ、カエデの秘奥義──」
葵 と結が止めるのも間に合わず、カエデは単身で、満身創痍の身体で突っ込んでいく。
「無駄なことヲ。あなたがを命を振り絞ったところでアドラフレストには通用しナイ。犬死にというやつデス」
シノの嘲笑にも構わず、カエデはジャラアアアッ、とギターケースから引っ張り出した鎖を投げつける。
所々に霊苻の付いている鎖はアドラフレストの身体に巻き付き、締め上げる。
動きを封じることには成功したが、よくて十数秒。すでに鎖はギチギチと引きちぎられそうだ。
「その鎖は少しの間もてば十分。カエデの秘奥義は──」
ズバババ、と複雑な印を結び、カエデは真言を唱えはじめる。
「オン ソンバ ニソンバ ウン バザラ ウン パッタ」
立っているのも不思議なほどのケガ。それでもカエデは力強く真言を繰り返す。
いつの間にかカエデの周りに光る球体が集まっている。翠 や紅 、青に紫、金に黒……。
葵はハッと気付く。あれは、戦姫たちが消えるときに放っていた光。
色とりどりの光る球体は人の形に姿を変えていく。
玉響 、フレイア、ツァイシー、リッカ、マルグリット、みさき……。
死んだはずの戦姫が甦り、そこに存在していた。
桐生カエデの秘奥義──魂魄還流 。
死者の魂を呼び戻し、その肉体までも復活させる絶技。
ここに8人全員の戦姫が勢揃いした。
鎖を引きちぎり、アドラフレストが8人へ襲いかかる。
「このデカブツがっ!」
リッカの双鉄拳飛環烈迅砲 がヒザに命中。
よろめいたところにみさきが接近。左腕を魔狼マーナガルムに変化させ、ハウリングキャノンを連続で撃ち込む。
「でっかいからいい的だね。効くでしょ、ボクの攻撃」
怯んだところに跳躍したフレイアが竜殺剣バルムンクを振りかざす。
「まだ続くからねェ。当たりやすいように下を向いてなよ」
頭部の角をへし折られ、さらに衝撃でアドラフレストはアゴを地面に打ちつける。
「神に仇なす邪竜め。我が聖槍の一撃を受けよ」
突進したマルグリットが十字聖槍を突き出す。
槍の穂先はアドラフレストの鼻の穴から上部へと貫通。黒い体液がブシュウウッ、と飛び散る。
「葵ちゃ……葵殿。今度こそあなたの側で戦い、守り抜いてみせる」
ツァイシーの神仙気が込められた一矢。
右目を貫き、アドラフレストは叫び声をあげた。
「さっきはようもやってくれたのう。倍返しじゃ」
玉響の鬼兵召喚。巨大な妖 、ダイダラボッチの足がアドラフレストの背をメキメキと踏みつける。
6人の戦姫が攻撃を終えると、その身体はまたも光りだし、輝く球体へと変化した。
その変化はカエデにも起きていた。
「パイセン、ゴメンね。カエデのこの術はほんの少しの間しか甦れないんだ。でも最後にみんなの力を合わせるから……」
ピンク色の光に包まれながらカエデも球体へ。
七つの光る球体は雛形結のほうへ集まり、ぐるぐると回転しはじめる。
「これは……」
球体は次々と結の持つ太刀へ吸い込まれていく。
神刀──鬼屠破斬魔ノ華叉丸 が七つの光を放ち出し、結の身体も共鳴するように白いオーラに包まれた。
「みなさんがこの太刀に……。伝わってくる。みなさんの力。想いが。これなら……いけます」
結は太刀を正眼に構える。
アドラフレストの怒りの咆哮。両腕で起き上がりながらその口の奥を結へ向ける。
超高熱の息吹 攻撃。真っ赤なレーザー光線が大地を抉りながら結へ迫る。
「結っ!」
葵の声が届いていないのか、結はかわそうとしない。
静かに太刀の切っ先を上げ、前進。
光線の帯を真っ二つに裂きながら結は歩く。次第に速度を上げ、走り出した。
光り輝く太刀はついにアドラフレストの鼻先へと届く。
葵は結の姿を見失った。気付いたときには結はアドラフレストの背後に。
滅界竜の身体はビキビキといびつな音を立てながら頭部から裂けていく。
裂け目からは八種の光があふれ出てあたりを眩く照らす。
八戦姫同時攻撃 ──。
SS級魔族、滅界竜アドラフレストは完全に両断され、その身体はボロボロと崩壊。最後には塵のように消滅した。
脚を中心にメッタ打ちにし、さしもの滅界竜もグラつく。
位置が低いために反撃がしづらいようだ。
アドラフレストはここで両腕を地面につけ、四つん這いの格好に。
ボヒュウッ、と尾の薙ぎ払い。かがんでかわす。アドラフレストは回転しながらの噛みつき攻撃。
フレイアに何本かは折られた牙だが、まだ殺傷力は十分にある。
カエデは今度はかわさず、野球の打者のようなフォームでカウンター。
打撃音が響き、アドラフレストの牙がまた何本か宙を舞う。だがカエデも衝撃で後ろへ吹っ飛ばされていた。
金属バットは真っ二つに折れ、カエデは倒壊したビルの瓦礫の中に埋もれる。だがすぐに飛び出し、グロック18Cの連射から左手に装着したメリケンサックで殴りつける。
この攻撃も意外にもアドラフレストを後退させるほどの威力。
だがこの強さ──先程の真言の効果だろうが、疲労した肉体を限界以上に酷使するものに違いなかった。
殴りつけた左腕。手首の部分が不自然に曲がっている。折れているに違いないが、それでも構わず殴り続けている。
いや、腕だけではない。右ヒザも外れているか折れている。口や耳からは流血していた。
「退魔師、無理をしてはいけません。一旦退きなさい」
見かねた
「アンタこそ力を温存しときなよ。最後の最後で頼りにするのはアンタなんだからさー。見ときなよ、カエデの秘奥義──」
「無駄なことヲ。あなたがを命を振り絞ったところでアドラフレストには通用しナイ。犬死にというやつデス」
シノの嘲笑にも構わず、カエデはジャラアアアッ、とギターケースから引っ張り出した鎖を投げつける。
所々に霊苻の付いている鎖はアドラフレストの身体に巻き付き、締め上げる。
動きを封じることには成功したが、よくて十数秒。すでに鎖はギチギチと引きちぎられそうだ。
「その鎖は少しの間もてば十分。カエデの秘奥義は──」
ズバババ、と複雑な印を結び、カエデは真言を唱えはじめる。
「オン ソンバ ニソンバ ウン バザラ ウン パッタ」
立っているのも不思議なほどのケガ。それでもカエデは力強く真言を繰り返す。
いつの間にかカエデの周りに光る球体が集まっている。
葵はハッと気付く。あれは、戦姫たちが消えるときに放っていた光。
色とりどりの光る球体は人の形に姿を変えていく。
死んだはずの戦姫が甦り、そこに存在していた。
桐生カエデの秘奥義──
死者の魂を呼び戻し、その肉体までも復活させる絶技。
ここに8人全員の戦姫が勢揃いした。
鎖を引きちぎり、アドラフレストが8人へ襲いかかる。
「このデカブツがっ!」
リッカの
よろめいたところにみさきが接近。左腕を魔狼マーナガルムに変化させ、ハウリングキャノンを連続で撃ち込む。
「でっかいからいい的だね。効くでしょ、ボクの攻撃」
怯んだところに跳躍したフレイアが竜殺剣バルムンクを振りかざす。
「まだ続くからねェ。当たりやすいように下を向いてなよ」
頭部の角をへし折られ、さらに衝撃でアドラフレストはアゴを地面に打ちつける。
「神に仇なす邪竜め。我が聖槍の一撃を受けよ」
突進したマルグリットが十字聖槍を突き出す。
槍の穂先はアドラフレストの鼻の穴から上部へと貫通。黒い体液がブシュウウッ、と飛び散る。
「葵ちゃ……葵殿。今度こそあなたの側で戦い、守り抜いてみせる」
ツァイシーの神仙気が込められた一矢。
右目を貫き、アドラフレストは叫び声をあげた。
「さっきはようもやってくれたのう。倍返しじゃ」
玉響の鬼兵召喚。巨大な
6人の戦姫が攻撃を終えると、その身体はまたも光りだし、輝く球体へと変化した。
その変化はカエデにも起きていた。
「パイセン、ゴメンね。カエデのこの術はほんの少しの間しか甦れないんだ。でも最後にみんなの力を合わせるから……」
ピンク色の光に包まれながらカエデも球体へ。
七つの光る球体は雛形結のほうへ集まり、ぐるぐると回転しはじめる。
「これは……」
球体は次々と結の持つ太刀へ吸い込まれていく。
神刀──
「みなさんがこの太刀に……。伝わってくる。みなさんの力。想いが。これなら……いけます」
結は太刀を正眼に構える。
アドラフレストの怒りの咆哮。両腕で起き上がりながらその口の奥を結へ向ける。
超高熱の
「結っ!」
葵の声が届いていないのか、結はかわそうとしない。
静かに太刀の切っ先を上げ、前進。
光線の帯を真っ二つに裂きながら結は歩く。次第に速度を上げ、走り出した。
光り輝く太刀はついにアドラフレストの鼻先へと届く。
葵は結の姿を見失った。気付いたときには結はアドラフレストの背後に。
滅界竜の身体はビキビキといびつな音を立てながら頭部から裂けていく。
裂け目からは八種の光があふれ出てあたりを眩く照らす。
SS級魔族、滅界竜アドラフレストは完全に両断され、その身体はボロボロと崩壊。最後には塵のように消滅した。