ドイツ語 『新ドイツ語の基礎』

文字数 992文字

 陸軍幼年学校でドイツ語を学び始め、わけもわからず『罪と罰』のドイツ語訳を読んで勉強した関口(せきぐち)存男(つぎお)による本。もともと、全三巻で構成される新ドイツ語大講座の上巻として出版されたものだが、これ一冊でドイツ語の初級文法を学ぶことができる¹。
 ただし、例文のレベルが高く、ドイツ語の読み方と初級文法を学んだうえで取り組んだ方が効果的という印象を受けた。たとえば例文を引用すると、次のようなものがある²。

例文: Wer Gott ein Amt gibt, dem gibt er auch den Verstand. 
読み方: ヴェーア ゴット アイン アムト ギープト デム ギープト エア アオホ デン フェアシュタント
訳:神、人に役目を授くれば、また智恵をも授く。(これは皮肉らしく、関口によれば「どんな馬鹿でも、ある地位につけば、その地位だけの智恵は自然と生じてくる、ということ。金持の馬鹿息子が親父の後をついで社長になっても、結構やっていく、など」を意味する文らしい。)

Wer 不定関係代名詞  誰であれ~する人に  3格(「~に」を示す与格)
Gott 男性名詞 1格(「~は」 を示す主格)
gibt  直説法現在 三人称、単数であるGott に合わせて変化した動詞 ~を与える
ein  不定冠詞 中性名詞Amt(「~を」を示す4格) に合わせて変化したもの
Amt 中世名詞 4格(目的格) 関口の説明では appointment、chargeという訳がある
er   人称代名詞 彼は Gottを指している
auch 副詞 また~も
den  指示代名詞 その者に(神が役目を与えるその人に)
Verstand 男性名詞 関口はsense, wit という訳を示している

 非常にすぐれたテキストだが、語学に才能のある人はともかく、ドイツ語をはじめて学ぶ人にとっては読み進めるのが難しいかもしれない



₁ 新ドイツ語大講座は以下に公開されているようである。
https://www.babelbible.net/pdf/sekink1.pdf
https://www.babelbible.net/pdf/sekink2.pdf
https://www.babelbible.net/pdf/sekink3.pdf
₂ 関口存男. 関口・新ドイツ語の基礎. 三修社. pp.160-161
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