随想 無限集合

文字数 889文字

 古来、無限は哲学あるいは数学の分野で考えられてきた。たとえば古代ギリシアでは、無限はアぺイロンと呼ばれ、数学的な探究から素数が無限に存在することが見いだされた。また中世に入ると、キリスト教神学でも無限について考えられるようになり、現代では、たとえば数学の分野でカントールが集合論を創始している。
 このように、無限というのは人間をひきつける魅力をもっており、いろいろ考えられてきたが、その結果、どの程度無限を扱えるようになったのだろう。素数が無限集合であることを確認したうえで、少し考えてみたい。

 素数は『ストイケイア』が書かれたころから、無数に存在することが知られており、いろいろな方法で確かめられている。『ストイケイア』で示されたような方法は単純でわかりやすい。

まず、証明に必要な定義などを示しておこう。1:素数とは、2以上の自然数で、1とその数自身以外に約数をもたない数のことである。2:合成数とは、2以上の自然数で、1とその数自身以外の約数をもつ整数のことであり、二つ以上の素数の積からなる。3:自然数は、1と素数と合成数に分類できる。

素数は有限個であると仮定する。有限個の素数は、P₁, P₂, P₃・・・Pnとしよう。このとき、次の数を考える。

P₁ × P₂ × P₃・・・× Pn + 1

この数は1ではない。したがって、素数か合成数かどちらかである。しかし、この数は有限個の素数のどれでもないので素数ではなく、2つ以上の素数の積であらわされるものでもないので、合成数でもない。背理法より、素数は無限に存在することになる。

 素数のような無限集合に関して、自然数と一対一に対応づけられる集合は可算無限といわれ、実数の集合はそれができない非可算無限集合といわれる。可算無限の集合より大きく、非可算無限の集合より小さい集合は存在しないという連続体仮説は、ある公理系とは独立した命題と知られるようになったが、これは無限を十分に扱えるようになったことを意味するのだろうか。少なくとも、これに関しては、内容の真偽が曖昧なまま、ある程度自由に扱えるようになったということであろう。
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