随想 『チョコレート革命』について

文字数 540文字

 短歌は不勉強なので、『サラダ記念日』さえ読めてないのだが、偶然自宅で『チョコレート革命』なる歌集を発見したので、毎日少しずつ読んでいる。
 河出書房新社の宣伝文句によると、これは「二十八歳から三十四歳までの“人を想って揺れる心”から生まれた、新しい愛の形。」だそうで、恋の抒情が多く詠まれている印象だ。性愛や不倫をテーマにした歌には次のような和歌がある。

チョコレートとろけるように抱きあいぬサウナの小部屋に肌を重ねて
愛することが追いつめることになってゆくバスルームから星が見えるよ
逢うたびに抱かれなくてもいいように一緒に暮らしてみたい七月
男ではなくて大人の返事する君にチョコレート革命起こす

 このような和歌が多いのだが、恋歌に交じって、少数ながら叙景の歌も含まれており、なまめかしい和歌が多いせいか、かえって目立つこの和歌が、ときおり清風を読む人の心に吹かせる。

サヨナラの形にススキが手を振って駆け抜けてゆく風の輪唱

 歌人は、「ほんとう」の思いを伝えるためには、とことん「うそ」をつくと述べており、どこまでほんとうのことが詠み込まれているのかわからないが、この和歌集は、自分にとって、現代短歌の世界の入り口、あるいは現代短歌の世界をかいま見せてくれる窓となってくれるにちがいない。
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