随想 坂口安吾の堕落論
文字数 490文字
ふと続堕落論の抜粋を目にする機会に恵まれ、くだらぬ誤解が霧消したことを喜ばしく思う。
目にした文章で、坂口安吾は、天皇の尊厳が利用されるというカラクリが存在しており、これが存在する限り、真の人間らしい幸福も苦悩も、人間の真実なる姿もあらわれないといっている。そのうえで、堕落せよという心の叫びを言葉にして日本人に訴えるのである。
「我々はかかる封建遺性のカラクリにみちた『健全なる道義』から転落し、裸となって真実の大地へ降り立たなければならない」
「我々は『健全なる道義』から堕落することによって、真実の人間へ復帰しなければならない。」
善人は、義理に生き、社会制度に則って平然と生きるにすぎないが、この堕落する人間は、ひとに見捨てられ、孤独になる。しかし、これは神や天国に通じる道であり、「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」の道である。これが人間の実相である。坂口はそう言っている。
表題だけで中身を見ずに誤解していた自分の過ちを恥じ入るばかりだが、武士や軍人すらおとしめた坂口を三島由紀夫が称賛し、敬愛していたというのだから、なおさら坂口という人間に魅かれ、興味を覚える。
目にした文章で、坂口安吾は、天皇の尊厳が利用されるというカラクリが存在しており、これが存在する限り、真の人間らしい幸福も苦悩も、人間の真実なる姿もあらわれないといっている。そのうえで、堕落せよという心の叫びを言葉にして日本人に訴えるのである。
「我々はかかる封建遺性のカラクリにみちた『健全なる道義』から転落し、裸となって真実の大地へ降り立たなければならない」
「我々は『健全なる道義』から堕落することによって、真実の人間へ復帰しなければならない。」
善人は、義理に生き、社会制度に則って平然と生きるにすぎないが、この堕落する人間は、ひとに見捨てられ、孤独になる。しかし、これは神や天国に通じる道であり、「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」の道である。これが人間の実相である。坂口はそう言っている。
表題だけで中身を見ずに誤解していた自分の過ちを恥じ入るばかりだが、武士や軍人すらおとしめた坂口を三島由紀夫が称賛し、敬愛していたというのだから、なおさら坂口という人間に魅かれ、興味を覚える。