随想 πの評価

文字数 948文字

 円周率というのは直径に対して円周がどのぐらいの倍率であるかを示すもので、ふつうπで表される。この無限につづくπの値は古来から探究されており、現代でもコンピュータを利用した探究がつづけられている。たとえば、円周率の評価で有名なのものの1つにアルキメデスの研究があり、正96角形を用いて3.14に近い円周率が見いだされたことが知られている。
 複素平面の単位円の周上には、1のn乗根が存在し、シンメトリーが美しい正多角形をそこに見出すことができるのだが、ここでは、その正多角形を利用し、初等的な方法で円周率を評価してみたい。

 1の n 乗根は複素平面における単位円の周上に等間隔で並ぶことが知られている。これは代数学の基本定理やド・モアブルの定理などを用いて証明されるのだが、ともかく、そのn乗根のそれぞれを、

Zk=cos(2πk÷n)+i・sin(2πk÷n) (k=0, 1, ⋯, n−1)

としよう。ここからは、円と円に内接および外接する正多角形の面積について考えていくことになるが、複素数の計算などはまったく不要である。

単位円に内接する正多角形

 0と1とZ₁で構成される三角形について、原点から垂線を下ろし、sinを用いた三角形の面積公式を利用すると、その面積が求められるが、それと単位円の面積を比較すると、

1÷2×1×1×sin(2π÷n)×n<1×1×π

という関係式が得られる。

正多角形に内接する円

 上記の正多角形とそれに内接する、半径 sin(π÷2-π÷n)の円の面積を比較すると

sin(π÷2-π÷n)×sin(π÷2-π÷n)×π<1÷2×1×1×sin(2π÷n)×n

という関係式が得られる。

 上記で示した関係式は、弧度法を用いているのだが、度数法を用い、たとえば、sin1°で円周率を評価してみると、3.1413・・<π<3.142・・といった大小関係が得られる。

 以上、初等的な方法で円周率を評価してみた。上の評価はアルキメデスが見出した評価とあまり変わらない程度のものであり、彼らの探究能力に驚くばかりである。アルキメデスの評価以降も円周率の近似値は求められ続けているのだが、それにしても、どうして人類はこの循環しない無限小数の、より正確な近似値を求め続けるのだろうか。
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