第15話

文字数 693文字

 大樹くんが二年生の夏休みに以前、約束していた川遊びの計画を実行した。
 子供達だけでは危ないと、結局、村長さんがバーベキューセットを準備してくれて、子供九人、大人四人、総勢十三人の大掛かりな川遊びになってしまった。
 子供は、サチの同級生五人と大樹くんの同級生四人、大人はサチのじいちゃん、ばあちゃんと村長夫妻だ。
 村で子供達の事故があっては、村長の責任問題となるという理由で、結局のところ、こんなかたちになってしまった。
 それでも大樹くんはとても楽しそうだった。
村長は張り切って肉や野菜をいっぱい焼いてくれた。いつも静かな河原が、その日はカラフルなパラソルとシートで夏の一日を彩っていた。
 夏の思い出にと写真をいっぱい撮った。大樹くんとのツーショットも撮ってもらった。サチはみんながはしゃぐ様子を遠くから見つめ
(これが最後の楽しい思い出になるのかなぁ……)と思った。
 そう、サチには時間がないのだ。
これから受験勉強で忙しくなるだろう。三年生の夏以降は東京で勉強する予定だ。東京の高校受験がそんなに甘くないことをじゅうぶん理解していた。サチは気持ちの焦りを表に出さないように過ごしていたつもりだったが、少しずつ友達との受験に対する温度差に苛立ちを隠せないでいた。
 そんなサチの様子を祖父母は、心配そうに見つめつつ、そっと見守っていた。同級生の四人は一番近い市内の県立高校へ進学予定だ。村の生徒の殆どが家から一番近い県立高校を希望する。その後は、東京の大学と地元の大学の二つに分かれる。
 東京の学校を希望するサチは、のちに進学してくる同級生をひと足先に行って東京で待つ……そんな感じなのだ。
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