第10話

文字数 540文字

 村役場のすぐ近くにある養護施設いずみ園では、現在四十人ほどの子供たちが生活しているという。園長先生の野田先生は、見た目がふくよかで温厚そうな感じの人だ。ちょっと恵比寿さまを想像させる。そこで働く女性の先生たちもみな明るくて施設の中は、いつも何か日常の事件が起こっているかのような賑やかさがあった。

 学校が夏休みに入った。

 あれからサチは、ばあちゃんからあの赤ちゃんの情報を少しずつ聞いていたので無事に成長していることは確認できていた。

 そして、この前、村長さんが養子に引き取る予定であることも聞いていた。あれから母親は現れず、健康状態も問題ないと診断されて、いずみ園でスクスク育っているとのこと。
 名前は村長さんが大樹と名付けたそうだ。困難を乗り越えて大きな樹に育ってほしいという願いから名付けたそうだ。
 村長さんちには子供がいない。石井村長は、去年、村長になったばかりの四十五歳。村では小さい子供がいてもおかしくない年齢だ。
 奥さんも天からの授かりものだと大変喜んで引き取ることに賛成したようだ。
 これでアタルくん、いや、大樹くんはきっと幸せになるだろう。きっと近い将来、大樹くんに会える……里波小中学校で会える。サチは東京の学校へ戻る前に成長した大樹くんに会いたいと思った。
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