第40話

文字数 905文字

 翌日、大樹の所持していた携帯からサチの連絡先が判明し、警察から連絡を受けてアザだらけの大樹と病院で対面した。
「どうしてこんなことになったの?肋骨と指の骨が折れてるって……」
「サチ姉、ごめん、迷惑かけて……でも、俺にもわからないんだよ。人違いされて、殴られて、気づいたらこんなことになってた」
「警察の人から、店の人が事情を聞かれてたから、そのうち理由はわかると思うけど……私が言ってるのはそういうことじゃなくて、どうして大樹があんな店で働いてたのか……ってこと」
「……あぁ……前に会ったことあるだろ、ハルキ……あいつにバイトを代わってくれって頼まれたんだよ。一日だけのバイトだから申し込んだ本人じゃなくてもOKでバイト代がもらえるって……それで五時間だけなら代わってやるって、ハルキの代わりにあの店に行ったーー」
「あの店はお酒を飲ませる店だよ。大樹はあんなとこで働くような子じゃないと思ってた……」
「知らなかったんだよ。行ってみてヤバそうな店だな……とは思ったけど、ハルキの代わりに行ったのに約束は破れないだろう……俺が代わってやるって言ったんだからーー」
 二人で病室で話しているとトントンとドアをノックされて中年の男性が二人、顔を覗かせた。
「保護者の方ですか?ちょっとお話いいですか?」
警察手帳を提示されサチは廊下へ出た。
「事件の詳しいことが徐々にわかってきました。あの店で働く源氏名がハルキというホストがいるんですが、どうやら借金をかかえたまま行方をくらましていることがわかりました。ギャンブル好きな男で、いくつかのサラ金業者に追われているようです。偶然にもあの日、同じ名前で店にいた彼を本人と勘違いして取り立てに及んだようです。とんだ災難でしたな。しかし、あの店は、以前から女性客からの苦情が多数寄せられていて、違法営業の疑いで警察のマークも入っている店です。気をつけるように弟さんに伝えておいてください。では、失礼いたします」
 サチはベッドで横になっている大樹をみて思った。
(やっぱり大樹には東京は似合わないーー私が大樹を守ってあげないと……)
 サチは眠る大樹の手を取りそっとキスをして病室を後にした。
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