第2話
文字数 915文字
道は混むことなく予定通り、一時間ほどで現地に着いた。空き地に車を停めると、荒れた河原が目に飛び込んできた。その向こうには穏やかな優しい流れの川が、あの頃のまま流れていた。
海人は車を降りてすぐに川へ向かって走り出した。
「わーっ、広いなぁ、川だ、川だー。お父さん、お母さん、早くおいでよ」
「おい、海人、まだ川に入るなよ。一人じゃ危ないからな」
「うん、わかってるよ。だから早くサンダル持ってきてー」
大樹とサチは顔を見合わせ苦笑した。
「しょうがないなぁ。ちょっと待ってて」
トランクからタオルとサンダルを取り出しサチは急いで海人の元へ走っていった。
大樹がバーベキューセットを降ろしてキャンプの準備をしているとサチが戻ってきた。
二人でチェアに腰をおろし海人のはしゃぐ姿を見つめていた。
「なんだか懐かしいな。よく川遊びをしたな」
「うん、思い出すわね。昔は楽しかったね」
変わり果てた後ろの山の景色を背にキラキラ光る穏やかな川の流れを見て思い出話に花が咲いた。
しばらくすると海人が二人に向かって何か叫んでいることに気がついた。
「なーに?聞こえない」
サチは叫ぶと大樹とともに海人のもとへ走った。
「ねぇ見て、あそこ。笑ってる石が落ちてる」
「笑ってる石ってなに?どこ?」
「ほら、あそこ」
海人の指さす方へ入ってみると、浅い流れの中に確かに笑顔の楕円形の石が見えた。
サチははっと息をのんだ。
「大樹、あれ、お地蔵さまじゃない?」
大樹が石を拾い上げるとそれは間違いなく山の斜面にあったお地蔵さまだった。
山が崩れて土砂とともに川まで流されてしまったのだろう。
「海人、すごいものを見つけたな。今日からこの石は我が家の守り神だ」
「へぇー、そんなすごい石なの?」
海人はきょとんとしていた。
「よくわからないけど、お父さんとお母さんがこんなに喜んでくれるなら見つけた甲斐があったかな」
笑顔のお地蔵さまを見つめ、三人で笑いあった。
「さぁ、お腹すいたね。一緒にバーベキューの準備をしようか」
「うん」
駆け出した海人の後を追ってサチが走った。石を大切に抱えて大樹も二人の後を追いかけた。
大樹の目には昔の山の景色が見えていた。
時は遡ること三十年も前のことーー
海人は車を降りてすぐに川へ向かって走り出した。
「わーっ、広いなぁ、川だ、川だー。お父さん、お母さん、早くおいでよ」
「おい、海人、まだ川に入るなよ。一人じゃ危ないからな」
「うん、わかってるよ。だから早くサンダル持ってきてー」
大樹とサチは顔を見合わせ苦笑した。
「しょうがないなぁ。ちょっと待ってて」
トランクからタオルとサンダルを取り出しサチは急いで海人の元へ走っていった。
大樹がバーベキューセットを降ろしてキャンプの準備をしているとサチが戻ってきた。
二人でチェアに腰をおろし海人のはしゃぐ姿を見つめていた。
「なんだか懐かしいな。よく川遊びをしたな」
「うん、思い出すわね。昔は楽しかったね」
変わり果てた後ろの山の景色を背にキラキラ光る穏やかな川の流れを見て思い出話に花が咲いた。
しばらくすると海人が二人に向かって何か叫んでいることに気がついた。
「なーに?聞こえない」
サチは叫ぶと大樹とともに海人のもとへ走った。
「ねぇ見て、あそこ。笑ってる石が落ちてる」
「笑ってる石ってなに?どこ?」
「ほら、あそこ」
海人の指さす方へ入ってみると、浅い流れの中に確かに笑顔の楕円形の石が見えた。
サチははっと息をのんだ。
「大樹、あれ、お地蔵さまじゃない?」
大樹が石を拾い上げるとそれは間違いなく山の斜面にあったお地蔵さまだった。
山が崩れて土砂とともに川まで流されてしまったのだろう。
「海人、すごいものを見つけたな。今日からこの石は我が家の守り神だ」
「へぇー、そんなすごい石なの?」
海人はきょとんとしていた。
「よくわからないけど、お父さんとお母さんがこんなに喜んでくれるなら見つけた甲斐があったかな」
笑顔のお地蔵さまを見つめ、三人で笑いあった。
「さぁ、お腹すいたね。一緒にバーベキューの準備をしようか」
「うん」
駆け出した海人の後を追ってサチが走った。石を大切に抱えて大樹も二人の後を追いかけた。
大樹の目には昔の山の景色が見えていた。
時は遡ること三十年も前のことーー