第21話 軍団

文字数 13,797文字

鎧の擦れる音と馬の嘶きで目が覚めた…。



百地三佐は木製の窓を押し上げている…。
眼の奥が痛くなるほどの光が差し込んで来ていた。



どうやら、私は深い眠りに落ちていたらしい。
光に慣れる前に、馬の嘶きと具足が擦れる音で頭が忙しくなってしまっている。

瞬きの先には… 砦の回りを囲む〝赤い兵団〟が蠢いていた。
赤鬼達には別働隊がいたのだろうか…? 皆、槍や弓で武装している。
一個中隊ほどの規模だが、鎧の触れ合う音が存在感を誇張していた。


・・・梯子を下りた。・・・


砦の1階に張ったテントの中に殿と誉田の姿は無い。
丸太の防護壁裏へと回った。


すると、殿は昨日と同じ姿勢でキャンピング・チェアに座っている。
誉田は殿の傍で丸太の防壁を背にして地べたへと座っていた。
やはり滑稽な光景である…。

キャンピングチェア + 丁髷(ちょんまげ)+ 良い姿勢のインパクトは大きい。


「殿、傷はどうだ?」
「痛みはあるが昨日ほどでは御座らん。 腕も少しなら上げられ申す。」
「そうか。ちょっと見せてみろ。」


包帯の下にある滅菌ガーゼの血は黒く変色している… 鮮血は見えなかった。
顔色も良い。回復の方向へと向かっている。

地べたに座っている誉田の顔色も格段に良くなっていた。
昨日とは別人の様相である。
鹿肉を食べたのが効いたのだろう。
鹿肉は良質なタンパク質の宝庫なのだ。


「出血は止まっている。 このガーゼは暫く外すな。7日後に抜鈎(ばっこう)だ。」
「針を抜くのか?」
「そうだ。」
「七日後… 相分かった。」


百地三佐が水筒と竹筒を持って歩いてきた。


「賢人殿、抗生剤は飲ませたわ。」
「…了解。」


早速、〝賢人殿〟と私を名前で呼んでいる。
やはり、女性は順応するのが早いらしい…。


「風間殿、半刻後に出立致す。」
「出立? 何処へ?」
「我が城… 」
「その傷で山歩きは無理。」


殿の話を聞いていた百地三佐は、真剣な表情で殿の言葉を遮った。


「馬に乗る。 問題は御座らん。」
「馬に乗ったとしても、走らせたら傷が開きます。」
「走りは致さぬ。」


…走らなければ問題はないが、それにしてもせっかちな男だ。


「風間殿、此処には兵糧が無い。 囲まれれば負ける。」
「・・・分かった。 ちょっと待ってろ。」



その通りだった。
此処で敵に包囲されれば持久戦は不可能なのだ。
私はメディック・バッグから張り替え用の滅菌ガーゼとハサミ、ピンセット、抗生物質の軟膏を取り出した。


「これから暫くは魚や肉類、大豆などを食べるようにしろ。 内側の傷を癒やしてくれるからな。 7日経ったら傷を止めてある針を引き抜け。 誉田にやり方を教える。 誉田、来い。」


「・・・何を仰るのか? 風間殿も一緒に参るのですぞ。」


誉田は怪訝な顔をしていた。
次に ”私達が城に行く事は当然の事だ” という表情を見せている。

殿はゆっくりと立ち上がった。
砦の1階へと向かって歩いて行く… 丸太の防御壁裏から戻って来た殿が意味深な視線を送って来ている… テーブルやキャンピング・チェアをまじまじと見比べていた。


「長持の類いは・・・此処にあるだけで御座るか?」


殿は誉田に何やら命じている。
どうやら、私の荷物を運ぼうという事らしい… 殿と誉田の頭の中では、私達が同行を拒否するという考えは無いのか?



…私達の置かれている状況を考えてみた…



糧食は残り1日分しか無く、自給自足を確立する前に飢餓状態は間違いない。
しかも、侍が戦闘を行っている地域にいるのだ。
…が、〝殿〟と呼ばれる大きな権力を持っていそうな男が ”我が城” へ連れて行くと申し出ている状況だった。
〝殿〟 の庇護を受けながら、元に時代に戻る方法を探した方が得策だろう…。


百地三佐に視線を向けると私に向かって大きく2度ほど頷いた。


「ああ、荷物はそれだけだ…」


誉田は兵達の元に行き何やら相談をしている… 周囲の兵達が集まってきた。
すると、兵達はハードケースに縄を器用に結び付け、縄に長槍を差し込むと肩へ担げる仕様にしてしまった。
大きなハードケースは槍2本で担ぐようにしている。
しかも、槍は簡単に縄から抜く事ができるのだ… 武器を死なせてはいない。
機械に頼らない時代の知恵を見せ付けられた。


殿がキャンピング・チェアを真剣な表情で眺めている…


「風間殿、頼みがある…。」
「どうした?」
「異国の蚊帳(かや)… それと、この椅子なんじゃが… 儂に譲ってくれまいか?」


〝カヤ〟… テントの事を〝カヤ〟というのだろうか?


「気に入ったのか?」
「うむ。 この椅子は実に心地が良い。…気に入った。」
「そうか… ちょっと待っていろ。」


私は砦の1階に戻り、テントを畳み収納袋へと仕舞った。
マットも丸めてマジックテープで留める。
倉庫へ行き、タープの入った袋を取り出した。
キャンピング・チェアの1つを畳んで、全てを殿の足下に置いた。


「好きに使ってくれ。」
「忝い。」


殿の顔が少年のような笑顔に変わった。
やはり、30歳前後だろう。
私達のやり取りを聞いていた百地三佐は、手を口元に当てて〝クスクスッ〟と笑っている… それを見た私は多少の罪悪感を覚えた。
このテント一式は私の物ではないのである。

誉田が再び兵に指示をしている…

兵の一団に声を掛けると、簡素な具足を着けた兵がすっ飛んできた。
殿の近くで片膝を付き頭を下げる… テントとキャンピング・チェアを恭しく運んで行った。
〝コショウガシラ〟とは、殿の身の回りの世話も仕事なのだろう。


ふと視線をずらすと、櫓の柱へと吊したままだった鹿がいた。
大量のハエがたかっている…。


私は懐剣でロープを切り、吊されていた鹿を地面に下ろした。
倉庫にあったスコップを地面に突き刺しながら、柔らかい土の場所を探す。
山の斜面際は腐葉土で柔らかかった。
スコップを刺す… 木の根も余り張ってはいない。


鹿の身体が収まるよりも、かなり深い穴を掘って鹿を収めた。


土を被せ終わると百地三佐は私の後ろでしゃがみ、胸元で両手を合わせた。
殿が近付いてくる… 誉田もこちらへと歩いてきた。


「いつもこうして弔っておるのか…?」
「俺達の命を長らえさせる為に俺はこいつの命を奪った。 尊厳は守ってやりたいのさ。」


殿は左手を顔の前に出して頭を垂れた。
誉田は殿の左後ろで同じように頭を垂れている。


〝ガシャガシャ〟と音をさせながら赤鬼が歩いてきた。
殿の後ろで片膝を付く。


「報告致しまする。 物見を放ちましたが軍勢はおりませぬ。」
「うむ。輝明、準備は良いか?」
「はい。」

「…よし、孫六。ちと早いが出立致す。」
「御意。」


「馬引けぇい!」


赤鬼が大きな声で声を掛けると兵達が馬を四頭引いてきた。
殿は兵に手伝われながらキャンプ道具が括られている馬に乗っている。
馬の尻だけ見ると、まるでカウ・ボーイみたいだった。
誉田も兵の肩に手を掛けながら慎重に乗馬している。


誉田が私を見て頷いている… 残りの馬は、どうやら私と百地三佐に用意しくれた馬らしい。


私は(あぶみ)に足を掛けて乗馬した。
振り返ると、地上の百地三佐は首を左右に細かく振っている。


「誉田、百地…いや、楓殿は馬を操れない。」
「分かり申した。」


誉田は馬を連れてきた兵に何か指図をした… すると、その兵は百地三佐の乗馬を手伝い、手綱を引き始めた。
誉田はこちらを振り向いて大きく頷く。…私も答えた。


赤鬼が速歩で馬を駆って来る… 三拍子の足音が心地良い。


だが、真っ赤な甲冑と兜に長刀の威圧感は相当なものだ。
これで突撃されたならば、銃を持っていたとしても怯んでしまうだろう…。
殿の前に来た赤鬼は、見事な手綱捌きで〝くるり〟と方向転換した。


殿が左手を挙げた。


「出立!」


そう声を掛けると赤鬼が先頭に立ち、馬を常歩(なみあし)で進ませ始める…


赤鬼の後ろに強弓を携えた十騎ほどの鎧武者が従った。
殿の周囲には、長槍を携えた鎧武者と弓を持った兵達が徒歩で付き添い防備を固めている… 殿が振り返り〝私の後ろに着くように〟と言ってきた。
誉田は私の後ろに百地三佐を着け、その後に続いた。

槍を持った騎馬武者隊が誉田の後ろに着く…

槍兵の隊はハードケースを担いだ兵を前後で挟み、最後尾には強弓を携えた八騎の鎧武者達が着いた。
理に叶った隊列だった。


常歩のまま南の門を出た。


東に進路を変えた赤鬼は、唐突に草叢へと馬を突っ込ませた。
下草が目立つ間道を暫く進むと、細いが踏み固められた小径へと出た… 私が探索した時には気付けなかった小径だった。


振り返ると隊列が長く伸びている。


赤鬼は常歩をキープしながら進んでいた。
右前方の森の中から、簡素で身軽な具足を身に着けた男が音も無く走り寄ってきた… 赤鬼の隣に片膝を付いている。


「御注進! 前方に軍勢は御座いませぬ!」
「よしっ!」


ドローンは勿論、レーダーや双眼鏡も無い時代なのだ… 偵察は最重要任務である。
赤鬼を先頭にした隊列は常歩でゆっくりと行軍を続けた。


1時間を超えたが休憩は無い… 深い山の中を行軍し続けた。
2時間を超えても休憩する気配は一向に無い… 違う斥候が戻ってきた。
3時間を超えても全く休憩する雰囲気は無かった… 私の尻は痺れきっている。
4時間ほどでようやく平地に出た… 湿気にうんざりさせられた。


振り返って兵達を確認すると… 標高差があり下り坂の行軍だったが、兵達は顔色すら変えずにハードケースを担いで歩を進めている… 驚異的な足腰である。
長く伸びた隊列の前方の山肌に段々畑が作られているのが見えた… 人の住む領域に戻ったという事を示していた。


人の往来があると思われる道を小一時間ほど進んだ。
いつの間にか、私達は広大な田園風景の中を行軍している。


視界の先には延々と黄金色が続いているのだが… 良く見てみると米でなく麦だった。
…とすると、今は5月位の季節だという事になる。
遠目には、小川に沿って集落が見え始めている。


…しかし、不思議だ…


人の姿が全く見えない。
これだけの田畑と集落があるにも関わらず、子供の姿すら見えないのだ。
土塁や堀を作っている様に見える大規模な土木工事現場にも、木の足場が組まれてはいるが作業を行っている人の姿はなかった…。


一抹の不安を感じながら馬を進めていると、田んぼのど真ん中を南西方面へと貫く道に出た。


地面はしっかりと踏み固められている… 荷車の跡も確認できた。
途中には道標や地蔵なども設置されており、人や馬が頻繁に往来している事を示していた… しかし、農民や子供の姿は一切見えない。


・・・やはり何かおかしい・・・


暫くすると、遠くの小山の山頂に城が見えてきた… あれは天守だろう。
昔、本か雑誌で見た記憶がある…。
先頭の赤鬼は常歩のまま、天守の方角へと進んでいった。


城に近付くにつれて、農家と思われる集落が纏まって建つようになっている。


やはり、住民の姿は見当たらない。
人っ子一人見当たらない農村を行軍している… 違和感を通り越して、私は不気味な恐怖を感じ始めていた。


百地三佐の馬に轡を並べた。
周りの兵士に悟られぬ様に英語で話し掛ける…


「What do you think?(どう思う?)」
「It's creepy…(不気味よね。)」
「Me too.(私もだ。)」


百地三佐の馬の手綱を持っている兵が不思議そうな顔をしている。
構わずに続けた。


「Nobody is here.」(誰も居ない。)
「There's something spooky about this village.(薄気味悪い村だわ、此処。)


無人の集落を抜けると川が現れた。


川幅は20mほどだろうか。
木製の橋が架けられている。
ほぼ垂直に石が組まれた護岸の上には背の高い木が植えられており、橋の先にある風景は見通す事は出来ない。


木々の先を伺いながら橋を渡った。


すると… 今までの景色とは一変した。
橋を渡った先のエリアは白い壁で囲われた作りの〝屋敷〟が建ち並んでいる。
だが、屋敷のエリアにも人の気配は無い。
百地三佐に目をやると、私と同じ事を感じているのであろう。
何度も首を傾げている。


屋敷エリアの中にある角を数回曲がった。
すると、再び川が現れて視界が開けた。
曲線を描いた白壁の上に物見櫓が見える。


〝カーン〟…〝カーン〟…〝カーン〟


突然、単発で間を開けて鳴らす鐘の音が響き始めた。
白壁の手前には幅が5m深さが2m程の〝堀〟が作られていて、綺麗な水が流れている… 水幅は狭いが小魚の群れが泳いでいる。

白い壁は城壁だろう。
この内部には人がいる。

左に湾曲した堀に沿ってを100mほど進むと、上部に櫓が設置された城門が現れた… 。

城門の櫓にいる赤い鎧の兵達が弓や槍を高々と掲げている。
赤鬼が長刀を大きく掲げて答えた直後、櫓の兵が再び鐘を鳴らし始めた。
城門前のスペースに橋は架けられておらず、堀を跨ぐ〝吊り橋〟が設置されている。
吊り橋は持ち上げられていた。


城と城下の作りは、こんな感じである…


・城壁に辿り着く前に護岸が石造りになった川が2本
・城には真っ直ぐに辿り着けない町割り
・城壁の下には幅5m、深さ2mほどの堀
・城門には弓の撃ち下ろしポイントが3カ所
・城内には吊り橋を渡らないと入れない


川に掛けられた橋を落としてしまえば川も堀の役目を果たすだろう。
地形を上手く使って、大軍では近付けない〝いやらしい城郭〟を作っていた。


「三の丸開門! 殿の御帰還じゃぁーっ! 」


赤鬼の大きな声が響いた。
どうやら、この城門は〝三の丸〟と言うらしい… 覚えておこう。


太い綱に繋がれた吊り橋が此方に向かって倒れてきた。
それと同時に〝ゴゴゴゴゴッ〟と低い音と共に門がゆっくりと開く… 映画のワンシーンで見た事のある光景だった。


吊り橋を渡り城門を潜る… 馬の向きが変わった瞬間、私の全身に鳥肌が立った。


真っ赤な甲冑と槍を携えた騎馬武者達が隊列を整えている。
その後方には… 槍と刀で武装した歩兵の軍団が控えていた。
白い城壁に沿って、大きな弓を手にした兵の集団が取り囲んでいる。


城門の中は〝赤い軍団〟で埋め尽くされていた。


赤鬼が左へと進路を変えた。
殿はそのまま前進している…。
すると、真っ白い頭髪と髭を携えた小柄な男が進み寄ってきた… 殿の馬前に片手片膝を付く。
その瞬間、広場にいた〝赤い軍団〟が一斉に片膝を付いた。


「殿、戦の準備、整うてございまする!」
「うむ。大義!」
「先ずは傷の御手当を!」
「爺、もう済んでおる。大事ないぞ。」


殿は馬の腹を〝コツン〟と蹴ると、天守の見える方向へと常歩で進んでいった。


赤い鎧武者の軍団が左右に分かれてゆく…
モーゼの十戒を彷彿させる光景だ。
再び、私の全身に鳥肌が立った。


坂を上り小さめの城門を過ぎると… 再び大きな広場が現れた。


広場の左右には、簡単な作りの平屋が数十棟作られている… 老人や女性、子供達の姿がたくさん見えた・・いや、女子供と老人達だけだ… 煙が上がっているという事は、炊事をする場所もあるのだろう。

殿の姿を見た人々が頭を下げている… すると、初老の男性が小走りで近付いてきた。
簡素な鎧と刀を身に付けており、手には短い槍を持っていた。


「若様っ! お怪我をなされましたか! 大丈夫でございますかぁ!」
「おう、又右衛門! 掠り傷じゃ。それより、二の丸の飯は足りておるか?」
「充分にいただいておりまする! 」
「うむ。」


「みんなぁ、若様は御無事じゃぞぉーっ!」


その声を合図に長屋から続々と農民姿の人々が出て来た。
やはり、女性と子供、それに老人達である。
女性達は着物の脇と肩を白い布や網紐で結んでいる… こちらの姿を見届けると深々と頭を下げてきた。

建物の入口で白髪の老婆が手を振っている… 泣いている女性もいる…。

農民達の姿が全く見えなかった理由が分かった。
殿が行方不明になったという事で、戦いに備えて城下の人々を城内へと避難させていたのだ。


・・・突然、数十人の子供達が走り寄ってきた。・・・


子供達はそれぞれに〝ペコリ〟と頭を下げる。
子供達まで実に礼儀正しい。
遅れて走ってきた幼い女の子の手には、たくさんのタンポポが握られていた。


「わかしゃまぁ!」


女の子は殿を見上げて、タンポポを差し出している。
付き添っていた鎧武者が笑顔で受け取り、殿に恭しく手渡した。
殿も嬉しそうに受け取り、女の子の方を見て満面の笑顔を見せた。
女の子も嬉しそうに手を振っている…。


農民達から慕われている事が良く分かる光景だった。


殿は上半身裸で包帯姿だったが、威風堂々と広場の真ん中を進んで行った。
石階段の前で止まると、護衛していた鎧武者に手助けされながら馬を下りている。
騎馬武者達が下馬をしたので、私達も続いた。


誉田に促され、殿の後に続いて石階段を登る…。


途中、殿の後ろ姿を確認したが、巻かれた包帯に新しい血の痕跡は見当たらない… 傷は開いていないだろう。

階段を登ると再び吊り橋が現れた。
城門にあった吊り橋の半分ほどの大きさだが… その下には深い堀があった。
堀の底に水を流す代わりに先端を鋭く尖らせた竹の柵が無数に設置されている。


外からでは想像できなかったが、三重の堀と城壁で囲われた堅牢な城だ。


2つ目の吊り橋を渡った先の城門も ”コの字型” に櫓が組まれていた。
どの城門も城内を直線的に窺えない様に角度を付けて作られている。
堀を渡って来られたとしても、城門に拒まれている最中に櫓の3方向から弓矢の一斉射撃を喰らうという作りだ… この城を弓と槍レベルの装備で攻略するには、相当な被害を覚悟しなければならないだろう。


吊り橋を渡り城門を潜ると、扇型の空間が現れた。


聳え立つ天守の横には、小山を背にした大きな平屋の館があった。
天守と館を扇状に取り囲む様に幾つもの土盛りが築かれ、無数の木の盾が置かれている… 盾の後ろには弓を持った〝黒い鎧の兵士達〟がいた。


黒い甲冑の侍達が歩み出て来て跪いた… 兵達が一斉に盾の前で片膝を付き頭を下げる。


館の入口には、着物の両肩を布で結んでいる若い侍達が控えているのが見えた… 若いというより少年と言ってもいい顔をした侍もいる。
殿の姿を確認した若侍が中腰で近寄って来た。


「お帰りなさいませ。…怪我の御手当を。」
「大丈夫じゃ。それより直ぐに皆を集めよ。評定じゃ。」
「ははっ。」


殿は腰から太刀を外し、若い侍に手渡した。
若い侍は恭しく両手で太刀を受け取っている。


殿は玄関部分に作られた板張りの廊下まで進むと、こちらを向いてゆっくりと腰掛けた。


使用人と思われる男達が大きな木の桶を持って小走りで近付いてくる… その後ろから、ちょっと遅れて水桶を持った女性達が現れた。
殿は足下に置かれた大きな桶に両手を出す… 着物の肩を布で結んでいる女性が水が入った桶から柄杓でを使い、殿の手に水を掛けた。
殿が両足を大きな木の桶に入れる… 女性達が土や泥で汚れた足を水で綺麗に洗い流した。


手足を洗った殿は綺麗な水で湿らせた布を受け取り、館の奥へと消えて行ってしまった。


「風間殿、楓殿、お履き物を脱いでお座りくだされ。」


新しく二つの木桶が置かれた… 誉田が座れという。
誉田は殿が使った木桶で足を洗われている。


私達の前でも使用人達が柄杓で水を汲み待機していた。
殿と同じ様に座り、ブーツとソックスを脱いだ… ブーツを見た使用人達が珍妙な面持ちで眺めている。

両手を木桶に差し出すと柄杓から手に水を掛けられ、女性に両足を綺麗に洗われた… かなり恥ずかしい。

最後に、固く絞った綺麗なタオル(と、いうか布)を渡された… 顔や首周りの汚れを拭けという事らしい。
日本人の衛生観念は、侍が主役の頃から出来上がっていた様子である。


一連の儀式が終わり、私達は誉田に案内されて館へと入っていった。
手入れされた庭に沿って板張りの廊下を歩いて行くと畳が敷かれた部屋に通された。


「風間殿、楓殿。 暫しお待ちくだされ。仔細整い次第、呼びに参りまする。」


誉田は廊下の奥へと消えて行った。


畳の香りが心地良い…。
百地三佐は正座になって部屋を見回している。
私は正座が出来ない… 胡座になった。


「襖の上も見て。立派な欄間。 凄い彫刻だわ。」


部屋を仕切っている襖の上には、龍や鳥をモチーフにした木の彫刻がはめ込まれている。
襖には竹林と虎の絵がモノトーンで描かれていた。


「これは知っている。 水墨画だろう?」
「そうよ。 凄い迫力ね。」
「ああ。」


10分ほど経っただろうか。
廊下を戻ってくる足音が聞こえてくる… 真新しい着物を纏った誉田が現れた。


「ご案内致しまする。こちらへ。」


左肩に痛みが残っているのだろう、左腕を動かさないようにして歩いている。
誉田に先導されて廊下を歩いて行った先には、板張りの大広間が現れた。
其処には既に、兜を脱いだ甲冑武者達が座っていた。
誉田を入れると総勢で11名である。


皆、分厚い畳が敷いてあり、立派な掛け軸が掛けられた壁の方向を向いて胡座になっている… 私と百地三佐は分厚い畳の左横に敷かれてある、丸く編まれた草の敷物へ着席する様に促された。

甲冑武者達と斜めに向かい合う場所に座る形になっている。

私達に向かって甲冑武者達からの鋭い視線が一斉に注がれた… 尻の座りが悪い。
幾つもの鋭い視線が私の全身を舐め回している。
黒い迷彩の戦闘服とアーマー姿はインパクトが強かったらしい。


赤鬼と目が合った。
ニヤリと不敵な笑顔を見せると会釈をしてくる… 私も会釈で返した。


1分も経たない内に、キャンピング・チェアを持った若い侍に先導された殿が入ってきた。
殿も真新しい着物に着替えている…。
殿の後には5歳位の男の子、その後ろには美しい着物を着た女性が歩いていた。


若い侍が分厚い畳の上にキャンピング・チェアを恭しくセットしている。


殿はセットされたキャンピング・チェアへと向かっていた。
まさかとは思うが… 其処に座るのか?
座った… まさかの光景である…。


殿が着座したのと同時に皆が一斉に両拳を床に付けて頭を下げた。
一応、私も真似て頭を下げてみた。


「お帰りなさいませ。」


白髭の男の言葉に、皆が〝お帰りなさいませ〟と続く…


「皆、心配を掛けた。許せ。」


赤鬼が頭を上げるのが視界に入ったので、私も頭を上げた。
殿の方に顔を向けると… 殿は立派な掛け軸を背にして、分厚い畳の上にキャンピング・チェアを置いて座っている。


丁髷 + 良い姿勢 + キャンピング・チェア… このインパクトは凄い。


思わず吹き出しそうになってしまった。
小馬鹿にしているのではない。
アンバランスと違和感のオーラで満たされているのだ。
とても滑稽な光景だったが、椅子に座りたくなる理由は理解出来る。
胡座になると姿勢を保つために上半身の筋肉を使う。
背もたれと肘掛けのある椅子に腰掛けている姿勢が楽なのだろう。


「先ずは… 皆に紹介したい。 こちらの御仁は儂と輝明の命を救うてくれた恩人である。 風間賢人殿と御内儀の楓殿じゃ。 細川京兆家に繋がる御仁じゃが、今は故あって諸国を流浪しておる。 暫し当家に逗留する故、無礼の無いように致せ。」

「ははぁ。」


皆が頭を下げる。
頭が上がったと同時に、また一斉に視線が集まった…。


「風間殿、紹介致そう。 我が妻の桔梗で御座る。」


桃色の着物には金や銀、原色系の花柄が刺繍されている… 頭には白いはちまきを付け、若侍と同様に着物の両脇と肩を白い布で結び、両腕を肘まで露出させていた。
透き通るような白い腕だ…。


「風間殿、楓殿。我が殿のお命をお救い頂いた事… 心から御礼申し上げまする。」


桔梗の話す顔を見て私は驚いた… 歯がオニキスのように黒光りしているのだ…。
呆気に取られていると、桔梗は優雅な仕草で両手を綺麗に揃えて床に付き、額が床に付くのではないかという程に深々と頭を下げた…。
恐縮してしまった私達は、釣られて同じ姿勢を取ってしまった。


「これは我が嫡男の寿王丸じゃ。」


髷を結っているが前髪がある… 背筋をピンと伸ばして正座をしながら、太ももの上に手を乗せて45度のお辞儀をした。


「寿王丸と申しまする。 父上をお助けくださった事、御礼申し上げまする。」


この少年も実に礼儀正しい。
またまた、私達は同じように挨拶をしてしまった。


「輝明、皆に事と次第を説明致せ。」
「御意。」


誉田は遠掛けから黒装束による待ち伏せ、山中を丸一晩逃避行をした事を話し、黒装束達の襲撃で次郎丸と一郎太、三郎が斬られた事を詫びた。
それから、私が懐剣で殿のピンチを救った話、百地三佐の太刀捌きの情景を多少の尾ひれを付けて物語風に話して聞かせた。


皆、感情豊かな表情で誉田の話を聞き入っていた。


次に、殿に刺さった矢を百地三佐が一刀両断し、私が矢を引き抜き異国製の道具を使って傷を縫い合わせた事、殿が〝風間殿、拙者は侍でござる。矢傷など屁でも無い。さっさと抜いてくだされ!〟と言う勇ましい姿に惚れ惚れした事などをかなり〝盛って〟話をした。

3名の命が失われた大事件を笑い話に持っていける事に違和感を覚えた。
この時代は命の価値が低いのか…?

それにしても、誉田は話が上手い。
座って聞いていた一同は身を乗り出して目を輝かせている。
すると、殿が話に割って入ってきた。


「その後にな、風間殿は立派な雄鹿を仕留めて振る舞うてくれたのじゃ。 この鹿肉がのう、実に美味かった。 そうじゃ、楓殿。 あの野草は何と言ったかな?」


突然、話を振られた百地三佐は動揺している(笑)


「あ、えー… 行者にんにくと紫蘇の葉です。」

「それじゃそれじゃ。 これ位の大きな肉の塊にな、楓殿が摘んできた行者にんにくをこう… ぶすぶすと刺してだな、岩の塩を砕いた物を振り掛けて炭火で焼くのじゃ。 それをこう、小刀で削ぎ落す… これが、まっこと美味い!」


殿は身振り手振りを添えて表情豊かに話している… 〝ジビエ鹿肉の行者にんにく焼き〟を殿は相当気に入っている様子である。
聞いている者達は感嘆の声を出している… 寿王丸は目を輝かせて聞いていた。


「父上さま。 寿王丸も食べてみとうございます。」


寿王丸の無邪気な言葉に、居並ぶ厳つい甲冑武者達は愛おしそうな表情になった。
赤鬼が両拳を使い腰を浮かせ、皆が座っている方へと身体を向けた。


「儂はな、殿からこれ位の大きな肉の塊をこう、小刀で切ったものを頂戴致した! 実に美味でござった。しかもな、殿は我が兵達にも振る舞うてくれたのじゃ!」


赤鬼は〝どうだ〟といわんばかりに腕を組んでいる。
それを見ていた殿は笑いながら赤鬼を諫めた。


「孫六。 振る舞うたのは儂ではない。風間殿と楓殿の御厚意であろうに。」
「…あ、そうでございましたな。これはこれは風間殿、楓殿、失礼致した!」


赤鬼が自分の頭をぴしゃりと叩き、私の方に向かい〝ぺこり〟と頭を下げた。
そして〝がはははぁ!〟と豪快に笑い出す。
それに釣られて皆も笑い出した。
百地三佐も口元へ手を当てて笑っている。
場が一気に和やかになった。

微笑みながら話を聞いていた桔梗は百地三佐を見つめている。


「楓殿。此処を我が家と思ってお過ごしくださいませ。 殿、よろしゅうございまするな。」
「ああ、勿論じゃ。 桔梗、楓殿は未だに戦装束。 よろしく頼むぞ。」
「はい。では… 楓殿、参りましょう。」


桔梗が優雅な所作で立ち上がる… 私の前を会釈しながら歩いて行った。
香の匂いだろうか?
懐かしい様な気持ちにさせる柔らかい香りが流れていった。

百地三佐の手を取り立ち上がるよう促している。

百地三佐は返事に困っているみたいだ…。
私が殿に視線を向けると、殿は大きく頷いた。


「殿と桔梗殿の御厚意に甘えよう。」
「あ、はい…」


百地三佐は桔梗殿に導かれ、館の奥へと向かって行った。
3人と侍女の姿が奥に消えたのを確認した白髭の男が少し身を乗り出す。
この男は城門に入った時に我々に出迎えの挨拶をした侍だ。


「殿、扇谷上杉の事でございまするが… 古河公方(こがくぼう)の動きも気になりまする。 このまま放って置くわけには参りませぬな…。」


侍達の眼光が一斉に鋭くなった。


「左様。 卑怯な手で殿のお命を狙うてきた。許すわけには参らん。」
「その通りじゃ。」
「田植えが始まれば秋まで待つ事になろうぞ。急ぎ討つべき!」
「いや、殿は手負うておられる。時は傷が癒えてからと存ずる。」
「次郎丸達の弔い合戦じゃ!」
「明日にでも此処を攻めて来るやも知れませんぞ!」
「出陣の準備は整っておりまする。上杉討伐の御下知を!」


様々な意見をぶつけ合っている… この男達は軍議に参加できる者達という事だろう。
赤鬼が身を乗り出して頭を下げた。


「殿! 儂にお命じくださいませ… 天誅を下して参りまする!」


殿は目を瞑って聞いている。


「・・・風間殿、貴殿はどう思われるか。」


突然のキラーパスだった。
領主同士の殺し合いというナーバスな問題に下手なアドバイスは出来ない… 私は嫌な予感に襲われていた。

居並ぶ侍達の視線が私を射貫いている。
中途半端な意見をしたならば、足下を見られるのは間違いないだろう。


私は頭をフル回転させて言葉を探した。


誰かが〝田植えが始まれば戦は出来ない〟と言っていた…。
暗殺を仕掛け、失敗したら丸一晩も山を追って来るような相手でもある…。
お頭と呼ばれた黒装束を取り逃がしているし、そいつは殿が重傷を負っている事を知っていた… 早めに対処する事に越した事はないだろう。


「殿、私は客の身。意見しても良いのか?」
「是非も無い。そのつもりで我が城へ招き申した。」


赤鬼は一際鋭い視線を送ってきている。
私は頭の中で今までの状況を整理した。


黒装束の男達は殿と敵対する上杉が放った Assassin(刺客)… つまり、戦わずして暗殺しようとしたのだ。
領主とその子供や親類を殺して家臣達の拠り所を無くし弱体化する… 弱ったところを攻めるのは封建時代の戦いでは定石だ。


「殿、兄弟は?」
「弟が一人。」


伊勢の家を継ぐ者は殿と弟、それに寿王丸という事になる。
殿が死ねば、寿王丸を傀儡に仕立て上げて伊勢家を操る事も可能だ… いや、殿の血筋を全て絶ってしまえば、丸ごと乗っ取る事も可能だろう。


戦争を始める切っ掛けが私になってしまう事を避ける言葉を必死で探した。


「殿、黒装束の男達は間違いなく上杉家の者なのかな?」
「孫六、河越の戦で見た事のある男と言っておったが、氏素性は知っておるのか?」


赤鬼(孫六)は少し戸惑っていた。


「名までは知りませぬ… しかし、あの不貞不貞しい顔は絶対に忘れ申さん。 死んでおったが、間違いなく河越の戦で槍を合わせた男に御座った。」


殿は目を瞑って考えている。


「殿、今は襲って来た者の名前も分からない状態だ。 戦争を始める大義名分が無い。 此処で攻め込んだなら、理不尽な理由で攻め込んだと世間から言われてしまわないか?」


殿は目を瞑ったままだ。


「刺客を送ってくるという事は、この家を継ぐ者… つまり、殿だけじゃななく、妻子や弟まで襲う可能性があると思う。…それに、相手は一度失敗している。 次は確実に狙ってくるだろう… 先ずは、城の警備を強化するのが大切なんじゃないか?」


束の間の沈黙が流れた…


「風間殿、次郎丸達を斬って逃げた黒装束の顔… 見たと言われたな。」
「見た。額から左目・左頬にかけて派手な刀傷があった。」


殿がゆっくりと目を開いた。


「・・・儂は風間殿の意見に一理あると思う。 爺、出陣の支度を解け。」

「…なんと。」

「皆、良く聞け。 次郎丸達の仇は取らねばならん… 黒装束を放った輩の首は、この手で討るつもりじゃ。 しかし、今は時では無い。」


爺と呼ばれていた白髭の男は、懐から紙に巻かれた毛髪を取り出した。
筆書きで文字が書かれている… 爺は見つめながら唇を噛みしめていた。
斬られた若侍の身内なのだろうか…?


「…殿… 承知仕った。」


居並ぶ男達からの強い異論は出なかった。
それを確認した殿の目に強い力が込められた。


「爺、扇谷の上杉と古河公方(こがくぼう)へ間者を放て。 動きを探るのじゃ。」
「御意!」

「輝明、本丸の兵を増やせ。武蔵の城代達にも警護を厚くせよと伝よ。」
「ははっ!」

「孫六、何時でも出陣出来るように準備しておけ。」
「承知!」

「典泰、河越の氏尭(うじたか)へは儂から書状を出す。直ぐに届けるのじゃ。」
「畏まり申した!」


殿は私の方をチラッと見た・・


「皆の者、今後の評定には風間殿にも加わおうて貰う。 良いな。」
「ははっ。」


一同が声を揃えた…。


殿は大きく頷いている。
その後方で控えている誉田は、じっと私を見ていた…。


しかし、まんまと(この表現が正しいかどうかは分からないが…)伊勢一族の紛争に一枚噛む事になってしまっている。
殿のしたたかな一面を垣間見た気がした。


…すると、廊下の奥から桔梗殿と百地三佐の笑い声が聞こえてきた。
此方へと歩いてくる。


「おぉ…」「…なんと」
「これはこれは…」


廊下に視線を向けると着物姿の百地三佐が広間に入ってきた。
桔梗殿に連れられて来た百地三佐を見た侍達は、一様に感嘆の声を上げている。


黄色とレモン色の着物には草花が描かれており、桔梗殿と同様に金銀の糸で所々に刺繍が施されていた。
帯には扇子を携え、髪は下ろされて一つに束ねられている。
唇には赤いルージュが引かれていた…。
歩き方や所作は桔梗殿と遜色なかった。


まるで、桔梗と楓の2つの艶花が共演しているかの様に華々しい。


誉田と赤鬼、それに殿までも〝ぽかん〟とした表情で、百地三佐を目で追っている… 私の隣に淑やかな所作で正座をすると、全員の視線が百地三佐に注がれた。

百地三佐が〝茶道〟をやっていた事を思い出した。
着物には慣れ親しんでいたのだろう。
違和感を全く感じさせない所作だった。

視線が自分に集まっている事に気付いた百地三佐は、恥じらうように軽く会釈をして床に視線を落としている。


〝楓殿〟という言葉がぴったりと当て嵌まっていた… 実に美しい。


先に着座していた桔梗殿は、百地三佐を見て満足そうな表情で何度も頷いている。
殿と目が合った… 私が頭を下げると、満足そうに大きく頷いた。


「輝明、風間殿には〝離れ〟を使こうて貰え。 不便を掛けさせぬようにな。」
「ははっ。」
「風間殿、楓殿。 此処を我が家だと思い過ごして欲しい。」


殿はそう言うと、ゆっくり立ち上がった。


「今日はこれまでじゃ。」


広間から出て行く… 桔梗殿が続いた。
座っていた男達は、両拳を床に付き頭を下げた。
私もそれに倣った。


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