第99話
文字数 765文字
◆◇◆◇
そんなことも知らずに俺は家でバカ面して過ごしていた。恭平の告白の話は、さっき恭平から聞いたばかりだ。
美鈴は倒れた……優勝トロフィーを渡された直後。チーム令和高校の『高校生クイズ』優勝を見届けて……。
番組は異例の余韻を残さず終了、救急車が呼ばれる。俺はあのときと同じように、Тシャツの上に羽織っている薄手の半袖シャツを脱ぐと美鈴に掛けた。美鈴の身体は夏なのに、血が巡っていないように肌色も悪く、冷えているように思われた。
美鈴はすぐさま搬送された。ここは地元ではない、東京だ。掛かりつけの病院などあるわけもなく、緊急病院へと連れ去られていく美鈴。
そこにいる誰もが茫然と見送った。華やかだったスタジオは夏祭りを終えた翌日のような寂しさ……熱気に包まれていた空気はどん底まで冷え込んだ。屋内なのに今にも雨が降り出しそうな重く湿った空気。何の音を拾うこともないマイクが静かに見守っていた。
「俺のせいだ……」
そのときの恭平の小さな言葉をマイクが拾ったのだった……。
* * *
海の見える砂浜に来ると、風が気持ち良い。恭平はアイスを二つ買って美鈴の元へと走る。踏み締める靴のゴム底を通しても砂浜の熱さを感じる。砂浜を駆け上がり舗装されたところまで来ると、靴の中に入った砂を払う。
木陰のベンチで待つ美鈴の元へと再び走る。
「はい美鈴の好きな『爽やかレモン』」
恭平はアイスを渡しながら言う。美鈴は『ありがとう』と受け取りながら答える。
「『サイコロと鍵』と『アイスの物語』って知ってる?」
「何それ知らない?」
二人はカップルに見えるけれども、周囲の水着たちのようなアベックとは一線を画している。露出の量はそのまんま心の衣服を表しているようだ。
それは距離や隔たりがある、というより恥ずかしい、照れ臭いと言った類の初々しさだ。
そんなことも知らずに俺は家でバカ面して過ごしていた。恭平の告白の話は、さっき恭平から聞いたばかりだ。
美鈴は倒れた……優勝トロフィーを渡された直後。チーム令和高校の『高校生クイズ』優勝を見届けて……。
番組は異例の余韻を残さず終了、救急車が呼ばれる。俺はあのときと同じように、Тシャツの上に羽織っている薄手の半袖シャツを脱ぐと美鈴に掛けた。美鈴の身体は夏なのに、血が巡っていないように肌色も悪く、冷えているように思われた。
美鈴はすぐさま搬送された。ここは地元ではない、東京だ。掛かりつけの病院などあるわけもなく、緊急病院へと連れ去られていく美鈴。
そこにいる誰もが茫然と見送った。華やかだったスタジオは夏祭りを終えた翌日のような寂しさ……熱気に包まれていた空気はどん底まで冷え込んだ。屋内なのに今にも雨が降り出しそうな重く湿った空気。何の音を拾うこともないマイクが静かに見守っていた。
「俺のせいだ……」
そのときの恭平の小さな言葉をマイクが拾ったのだった……。
* * *
海の見える砂浜に来ると、風が気持ち良い。恭平はアイスを二つ買って美鈴の元へと走る。踏み締める靴のゴム底を通しても砂浜の熱さを感じる。砂浜を駆け上がり舗装されたところまで来ると、靴の中に入った砂を払う。
木陰のベンチで待つ美鈴の元へと再び走る。
「はい美鈴の好きな『爽やかレモン』」
恭平はアイスを渡しながら言う。美鈴は『ありがとう』と受け取りながら答える。
「『サイコロと鍵』と『アイスの物語』って知ってる?」
「何それ知らない?」
二人はカップルに見えるけれども、周囲の水着たちのようなアベックとは一線を画している。露出の量はそのまんま心の衣服を表しているようだ。
それは距離や隔たりがある、というより恥ずかしい、照れ臭いと言った類の初々しさだ。