第18話 勇気と優しさ

文字数 459文字

「一弥、気にしているんでしょ?」

 丁度いいバスがあるからと、一足先に別れた恭平がいなくなって乗り込んだで電車で、美鈴は前振りもなく俺に聞いてきた。

「恭平は恭平。一弥は一弥。それぞれの良いところがある」

 見透かしたような美鈴の言葉。俺には彼女の言いたいことが分からない。美鈴は電車のガラス窓に映る自分を見ているのか、外が見えているのか……。

「恭平、カッコ良かったもんね。勇気あるし、優しいし、強いし」

 その言葉で美鈴が何を言いたかったのか理解する。いちいち気にしてなんかいられない。俺とアイツの差なんてジタバタしても埋まらない。

「だから恭平はモテるんだよねぇ」

 そう言って手を組んで伸びをする。そんななんでもない仕草でさえも過敏に反応してしまう。子猫のように動くものに、美鈴の動きに目が奪われる。伸びの途中で俺の視線に気付いたのか、止めて俺を見る。疚しくなくても目を逸らしてしまう俺は、ガラス越しに美鈴を見る。
 俺はわざと不貞腐れたように聞いてみた、それはダメ元で……。

「俺の良いところって何だよ……?」
「そうねぇ……」
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