第56話
文字数 618文字
「一弥、こんなところで何やってんだ?!」
その手には俺が蹴った石が握られていて、その顔は怒りよりも呆れた様子に見てとれた。バツが悪いにもほどがある。俺は今日も恭平たちの誘いを無下にした後ろめたさがある。
「あ、ありがと。助かったよ恭平」
とりあえずの礼を告げる。そしてそれ以上の言葉が出てこない。意味もなくポケットに手を入れたり出したり鞄を触ったりして、何かをやり過ごそうとしている自分がいる。
「今日、何やってたんだ?」
やはりそのままで済むわけがない。俺は小学生のように不貞腐れて応える以外疚しい気持ちを隠す方法を知らなかった。
「別に……」
「また麻木と居たのか」
恭平のその言葉には応えない。しかし誰が見たって分かる態度を取っているのは、自身でも分かっている。
「一弥は知らないかも知れないし、こんなこと言いたくもないし、大きなお世話なのも分かってるけど……麻木、評判良くないぞ。いろんな男に貢がせてるって……」
少し……聞いたこともある……。変わらず恭平の目すら見れないで黙ってるしかできない。
「一弥、本気なのか? 俺が言いたかないけど、お前は美鈴のことが好きだったんじゃないのか?」
紗雪にも同じようなことを言われたのを思い出し、ハッと顔を上げる。恭平は悔しそうな表情を俺に向けている。その気持ちが分かる。恭平自身も美鈴のことが好きなんだ、それなのに敵とも言える俺にそんなことを言う……やっぱり恭平は親友だ、そう感じざるを得なかった。
その手には俺が蹴った石が握られていて、その顔は怒りよりも呆れた様子に見てとれた。バツが悪いにもほどがある。俺は今日も恭平たちの誘いを無下にした後ろめたさがある。
「あ、ありがと。助かったよ恭平」
とりあえずの礼を告げる。そしてそれ以上の言葉が出てこない。意味もなくポケットに手を入れたり出したり鞄を触ったりして、何かをやり過ごそうとしている自分がいる。
「今日、何やってたんだ?」
やはりそのままで済むわけがない。俺は小学生のように不貞腐れて応える以外疚しい気持ちを隠す方法を知らなかった。
「別に……」
「また麻木と居たのか」
恭平のその言葉には応えない。しかし誰が見たって分かる態度を取っているのは、自身でも分かっている。
「一弥は知らないかも知れないし、こんなこと言いたくもないし、大きなお世話なのも分かってるけど……麻木、評判良くないぞ。いろんな男に貢がせてるって……」
少し……聞いたこともある……。変わらず恭平の目すら見れないで黙ってるしかできない。
「一弥、本気なのか? 俺が言いたかないけど、お前は美鈴のことが好きだったんじゃないのか?」
紗雪にも同じようなことを言われたのを思い出し、ハッと顔を上げる。恭平は悔しそうな表情を俺に向けている。その気持ちが分かる。恭平自身も美鈴のことが好きなんだ、それなのに敵とも言える俺にそんなことを言う……やっぱり恭平は親友だ、そう感じざるを得なかった。