第82話

文字数 772文字

「本番5秒前、4・3……」
 合図と共に番組収録がスタートする。
「燃えているか―――???」

 俺たちは言葉とは言えない身振りと歓声で応える。

「こんばんは。お待ちかね。高校生クイズ、決勝戦がついに始まります。見事ここまでを勝ち抜いて残った3校は……」

 司会者の話が耳に入って来ない。集中していないのが分かる。隣を見ると恭平も落ち着きがないのが見て取れる。やはり俺たちはこんなことしている場合ではないのかもしれない。このまま問題に入っても解ける気がしない、いや問題すら理解できないかもしれない。

「決勝戦は恒例、早押しクイズ。一問正解で1ポイント、お手付き誤答はマイナス1、10ポイント先取で優勝が決まります。さぁ今年の高校生クイズを制するのはどこの高校か、間もなく始まります」

 間もなく……その言葉にふと腕時計を見ると、しっかり秒針は回っている……いつの間に? 俺はしっかり時刻を合わせ直した。何故か胸騒ぎがする。
 マイクの位置、ボタンの動作の確認などスタッフのチェックが再度行われて、カメラが回る、司会者がゲストとトーク。この後いざスタートという場面で異変が起きた。

 美鈴が来た。

 俺たちが解答台の前に飛びだすのをスタッフが制する。その挙動で司会者が俺たちの視線の先に気付く。

 美鈴の足取りは重い。恐らくディレクターからの合図があったと思われる。

「あっとここで令和高校、風散美鈴さんが参りました。先程申し上げたように、令和高校・風散美鈴さんは準決勝で体調不良となり、決勝戦は二人で戦うというハンデの中、それでも決戦に臨む……『美鈴さんの分まで戦いきる』という意気込みを見せてくれたばかり……正に青春、若さの必定!
 そして今度はその美鈴さんが勇気を見せてくれましたっ!! 突き進むことのできる活力! the spring of life真っただ中!」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み