第10話 一目惚れ

文字数 796文字

 帰路……雨は降っていなかった。

 三人は大体揃って帰る。美鈴は毎月何回か学校帰りに病院に通っている。何の病気だか詳しくは聞けていない。そして週3~4程のペースでコンビニのバイトもやっている。
 恭平は基本、米倉に運ばれてくる大量の米を大型トラックから卸すのを手伝う。それはほとんどが午前中に来て、パレットと呼ばれる敷台に積まれたものをフォークリフトで下ろすだけなのだが、時折昔ながらの手卸しする業者がある。
 そういうところほど付き合いの長い業者らしい。午後に納品や配達がある場合恭平はそれを手伝う。

 20Kほどある米の袋を、パレットに椪積(はいづみ)と言って荷崩れしにくいように向きを組んで積み上げていく。
 嫌々ながら俺も、何度かこの作業の手伝いをさせられたことがある。ネットで調べた知識だけでは到底できないであろう、頭で分かっていても身体に染み込ませたその才力は男の俺から見ても男らしかった。


 今日は放課後、三人とも何もない。いや、俺に至っては毎日何もない。家に帰ったら、風呂、飯、後はゲーム、アニメ……時々エロサイト……パソコンやらスマホをひたすら触っているだけだ。
 何もない帰り道は、決まって大きな公園の芝生に座り込んで実のない話をして帰る。雨の日は屋根のあるベンチが指定席。そして専ら俺は聞き役だった。
 それは美鈴がバイトなどでいなくても俺と恭平の二人でも変わらない日課だった。

 恭平がいつも話しをする。美鈴がいるときは一生懸命美鈴に。二人のときは『あの子が可愛い』とか『あの子のおっぱいが大きい』とか、美鈴がいると話し辛い女子の話題がほとんど。

「昨日のドラマ見た?」
「見た見た、あれ、来週どうなるんだろ~」
「きっとあの後、元カノと抱き合ってるところを彼女に見られちゃうんだよ、絶対」
「あのドラマに出てくるカフェってあそこだろ?」
「一弥ん家の方だよね?」

 そんな話から日曜、三人で行くことになった。
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