第1話 俺と彼女とアイツ

文字数 637文字

「何か思い出に残ることをしようよ! 青春(あおはる)真っ盛りな思い出!」

 彼女のその一言で全てが始まった……俺たちの熱い夏……。


* * *


 俺は宇留間一弥(うるまかずや)。令和高校2年、花の17歳、男、帰宅部、彼女はいない。将来の夢も、やりたいことも特に見つからず、学校と家の往復を繰り返すだけの毎日。

 県内では人気の進学校である令和高校に入学するも、成績もそこそこ、体育祭や球技大会などで活躍するわけもなし、文化祭でリーダーシップを発揮するなんてこともなければクラスで目立つポジションでもなく、休み時間毎に誰かの机の周りに出向くほど社交的でもない。
 それでも何故か何の取柄もない俺の周りには人が寄ってきたりもする……もちろん基本男限定で……。

 学校ではスマホ、家ではパソコン……今、俺の人生で一番俺と向き合っているのはこの二つのコンピュータ。このAIと呼ばれる感情のない知能が俺のことを一番理解している。
『き』の文字を打てば……ほら……『今日のトレンド検索ワード』と俺の気持ちを先回りしてくれる。因みに『え』を入力すれば……『エッチな動画』が予測変換される。

 そこには何の気遣いも遠慮も要らない。躾けることさえ無用なそれには、俺が好き勝手に見聞きしたものを勝手に学習してくれて、それらに対して感謝を要求されることも無いのだから、気軽なもんだ。

 ブルーライトをカットしたディスプレイが目にも優しく、俺が右に傾けば、俺が見つめる先の画面も右に傾いてくれる。どうやら機械の方が俺に気を使ってくれてるようだ。
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