第54話 ケンカ
文字数 454文字
別れ際、紗雪は俺に言う。それは俺を試すような言葉だ。
「ね、明日も紗雪と出かけない?」
「え?」
さっき恭平に誘われたばかりだ。紗雪だって聞いていたはずだ。返答に困る。それを楽しむように紗雪は微笑む。俺を見つめる紗雪の瞳から逃げるように目先を落とす。何もないアスファルトが無言で俺の視線を受け止める。アスファルトのグレーが俺の気持ちを表している、どこまでも灰色だった。
左手に巻かれた腕時計の秒針がうるさく聞こえてくる。それを見透かしたように紗雪が畳み掛ける。
「ね、それ美鈴たちとお揃いでしょ」
俺は直接言葉では答えなかったけれど、肯定の趣を表していたのは間違いない。紗雪も俺の足元の道路に目を落とす。その眼差しには俺と同じグレーのアスファルトが映っているのであろうか? ふと寂しく思う。
「いいなぁ。紗雪もそういうのしたい」
可愛く小首を傾げる紗雪に俺の天秤は傾いた。
「いいよ、行こう」
その俺の言葉に紗雪の瞳に光が戻る。それを見て俺は色んな不安が吹き飛んだ。でもそれは安心を得た訳ではないことも分かっていた。
「ね、明日も紗雪と出かけない?」
「え?」
さっき恭平に誘われたばかりだ。紗雪だって聞いていたはずだ。返答に困る。それを楽しむように紗雪は微笑む。俺を見つめる紗雪の瞳から逃げるように目先を落とす。何もないアスファルトが無言で俺の視線を受け止める。アスファルトのグレーが俺の気持ちを表している、どこまでも灰色だった。
左手に巻かれた腕時計の秒針がうるさく聞こえてくる。それを見透かしたように紗雪が畳み掛ける。
「ね、それ美鈴たちとお揃いでしょ」
俺は直接言葉では答えなかったけれど、肯定の趣を表していたのは間違いない。紗雪も俺の足元の道路に目を落とす。その眼差しには俺と同じグレーのアスファルトが映っているのであろうか? ふと寂しく思う。
「いいなぁ。紗雪もそういうのしたい」
可愛く小首を傾げる紗雪に俺の天秤は傾いた。
「いいよ、行こう」
その俺の言葉に紗雪の瞳に光が戻る。それを見て俺は色んな不安が吹き飛んだ。でもそれは安心を得た訳ではないことも分かっていた。