第6話 ゲーム場
文字数 1,244文字
「おっほー! きたきた! ドブ川みたいな
入ってすぐ、対戦相手が私に何か言ってきた。
無視して、私はゲーム場を見渡す。対戦相手よりも、
私がいた部屋のドアと向き合うようにドアがある。対戦相手の控室のドアだろう。ドアからドアまでの距離は三十メートルほどはありそうだ。
床はマットも何も敷かれていない、種を植えたら芽が出てきそうな土だった。歩くと、さっそく、新品のシューズが汚れた。
ゲーム場は、縦三十メートル、横十メートルほどの、木の板に囲まれた長方形の部屋だった。周りが木の板ではなくビニールだったら、野菜を育てるビニールハウスになるかもしれない。長方形の部屋は、元々は農業用に作られたのだと思う。それを救済組織の組員が買い取ったか、あるいは何かしらの条件付きで借りたのだ。
すう、と息を吸って吐く。土と自分の体臭と、無法地区 で嗅ぎ慣れているからだ。
間違いなく、ここでゲームは何度も行われている。プレイヤーたちが流した血のにおいが、部屋中に染みついているのだ。
さすがに、この長方形の部屋の中で死ぬまで殴り合いをさせられるわけではないだろう。恐らくは、長方形の部屋の中央に設置された箱の中で何かさせられるのだ。
箱は透明な板で作られており、中の広さは六畳ほどだった。高さは二メートルはあり、中に黒塗りのテーブルが一台、設置されている。向かい合うように椅子が置かれているので、プレイヤーが向き合って座り、テーブルの上でカードゲームだったり、ボードゲームなどを行うのだと思う。しかもそれは、プレイヤーが確実に流血する、危険なルールのデスゲームだろう。中に入るための入口は、テーブルを挟んで一つずつ、合計二か所、取り付けられていた。
「ねーねー。無視しないでよぉ」
かまってほしいのか、対戦相手が傍にきて、私の顔を覗き込んだ。
十代後半くらいだろうか。紫色のひらひらしたドレスを着た少女だ。丸い顔にツインテールヘアーがよく似合っている。身長は低いが胸は大きい、ロリ巨乳だった。
「あんたが〈捕食者 〉?」
「そう呼ばれているらしいね」
童顔の可愛らしい少女だが、私を見る目は妙にギラギラしていた。
「お姉さんの名前は?」
「名前?」
自分が先に名乗れ、と言おうとした瞬間、少女が「蛇沼 日紫喜 」と名乗った。
「神居 玲緒奈 」
「神居さんは、あんまり美味しくなさそうだね」
「……は?」
「だって、ドブ川みたいな
私は蛇沼を睨んだ。こいつは〈捕食者 〉という異名持ちの周回プレイヤーで、命懸けの救済ゲームを五回もクリアしている実力者だ。絶対に油断はできない。私を侮辱する発言も、冷静さを失わせるための作戦だろう。
「ゲームに負けて死んでも、私を恨まないでね」
「神居さんは餌にはならないけど、
蛇沼は唇を舌でペロリと舐め、不気味に微笑んだ。
におい
のする女の人がきたよ!」入ってすぐ、対戦相手が私に何か言ってきた。
無視して、私はゲーム場を見渡す。対戦相手よりも、
そっち
のほうが見るべき価値がある。私がいた部屋のドアと向き合うようにドアがある。対戦相手の控室のドアだろう。ドアからドアまでの距離は三十メートルほどはありそうだ。
床はマットも何も敷かれていない、種を植えたら芽が出てきそうな土だった。歩くと、さっそく、新品のシューズが汚れた。
ゲーム場は、縦三十メートル、横十メートルほどの、木の板に囲まれた長方形の部屋だった。周りが木の板ではなくビニールだったら、野菜を育てるビニールハウスになるかもしれない。長方形の部屋は、元々は農業用に作られたのだと思う。それを救済組織の組員が買い取ったか、あるいは何かしらの条件付きで借りたのだ。
すう、と息を吸って吐く。土と自分の体臭と、
血のにおい
がする。家畜ではなく、人間の血のにおいだと判別できたのは、間違いなく、ここでゲームは何度も行われている。プレイヤーたちが流した血のにおいが、部屋中に染みついているのだ。
さすがに、この長方形の部屋の中で死ぬまで殴り合いをさせられるわけではないだろう。恐らくは、長方形の部屋の中央に設置された箱の中で何かさせられるのだ。
箱は透明な板で作られており、中の広さは六畳ほどだった。高さは二メートルはあり、中に黒塗りのテーブルが一台、設置されている。向かい合うように椅子が置かれているので、プレイヤーが向き合って座り、テーブルの上でカードゲームだったり、ボードゲームなどを行うのだと思う。しかもそれは、プレイヤーが確実に流血する、危険なルールのデスゲームだろう。中に入るための入口は、テーブルを挟んで一つずつ、合計二か所、取り付けられていた。
「ねーねー。無視しないでよぉ」
かまってほしいのか、対戦相手が傍にきて、私の顔を覗き込んだ。
十代後半くらいだろうか。紫色のひらひらしたドレスを着た少女だ。丸い顔にツインテールヘアーがよく似合っている。身長は低いが胸は大きい、ロリ巨乳だった。
「あんたが〈
「そう呼ばれているらしいね」
童顔の可愛らしい少女だが、私を見る目は妙にギラギラしていた。
「お姉さんの名前は?」
「名前?」
自分が先に名乗れ、と言おうとした瞬間、少女が「
「
「神居さんは、あんまり美味しくなさそうだね」
「……は?」
「だって、ドブ川みたいな
におい
がするんだもん」私は蛇沼を睨んだ。こいつは〈
「ゲームに負けて死んでも、私を恨まないでね」
「神居さんは餌にはならないけど、
狩り甲斐
がありそうな獲物だね」蛇沼は唇を舌でペロリと舐め、不気味に微笑んだ。