第96話 北陸行2 谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館

文字数 1,391文字


朝から神社のある公園を歩く。

七五三のシーズンなので朝から家族連れで賑わい、社殿に隣接する駐車場は混み合っていた。
晴れ着や袴の子供たちは慣れぬ着物に夏日の暑さとあって、昇殿参拝を終える頃には早くも飽きてすぐに帰りたいようであった。
なんとか笑顔の我が子の記念写真を撮りたい家族とのせめぎ合いが微笑ましかった。

七五三はかって子供死亡率が高かったので、髪置き(三歳)、袴着(五歳)、帯解き(七歳)の節目に神社参拝を行う風習が元になっている。長く作られた千歳飴が与えられるのは長寿を祈ってのことである。

死亡率の低くなった現代においては、祈りより記念写真を撮るためのイベントと化している。
普段から観光地をぶらぶらしていると、取材用のカメラを持っているせいかシャッターを押してくれと頼まれることが多い。
かなり慣れてしまったので「1,2,3ハイで撮りますよ」と声がけもスムーズにできるようになった。

自分から声がけしないが、たまに例外がある。
父親が写真を撮ってるパターンで、家族の一人が抜けていることになる。
自分も父親と一緒の写真は一枚もないので、断られるのは元々と思い声をかけることもある。
お父さんは戸惑い半分、一緒に写りたいという気持ち半分で、焦って断ることが多いのだが「いいんですか」と念押しすると やっぱりお願いします となることが多い。

泥棒と思われたり、シャッター押した後でなにかと言い出す不審者にされるのもいやなので、
目が合って自然に会話を交わして そのついでにと言う流れがあれば 
ということにしている。

出来れば七五三のシーズンは、シャッターを押してあげる職員がいて欲しいものである。

「北陸行2 谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」

「アニメ背景美術に描かれた都市」という企画展を見に行くのが初日の目的である。
谷口吉郎氏 谷口吉生氏という親子のお名前を全く存じ上げなくて有名な建築家なのだろう程度の認識で訪館ところ、今まで足を運んだ記念館の中で一番気に入っている山形県酒田市の、土門拳記念館を設計したのが谷口吉生氏と知り大変驚愕した次第。
浅学を恥じるばかりである。
水盆を用いた静謐さを大変気に入っている。静ではあるが風に波立つことで動となるところが実に良い。

この企画展は背景美術に特化した展示で、わたしは建築学は通っていないのが若い自分には漫画のアシスタントでさんざん背景を描いてきたので、アニメーションの美術には大変興味があった。
キービジュアルとなる美術がどのような過程で生まれたかをまず動画で語り、その後実物展示がされているので、物事を知る流れがスムーズで空想ものゆえの逸脱と説得力が重要であることも認識できた。
なにやら自分でも背景原図までならやれるような気がしたが、その機会は無いだろう。

すでにはるばると金沢まで行った甲斐があったが せっかくなので名所兼六園も行ってみることにする。
ちょうど入り口で雪吊り作業の真っ最中であった。職人の作業を直接見られる機会だったが、視線があるのもやりにくかろうと数分で入場する。
平日木曜 外国人観光客が多く騒がしかったが、西日がさす頃になると人も少なくなり秋の日差しの落とす影に風情が見えた。 
有料公開されている成巽閣(せいそんかく)が、むやみに人も来ず一流の調度品が間近で見られるので、私としてはこちらをお薦めしたい。

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