第65話 夕景を見る

文字数 1,003文字

正義感は人間を狂わせる。
不当な扱いから回復させることに発揮されるのは理解できる正義だが、「不正な扱いがあるに違いないから先んじて正そう」というのは弾圧に繋がる。

「正義」を聴き馴染みになる言葉にしたのは、川内康範作、東京放送「月光仮面」のTVドラマであったとと思われる。 テレビ放送黎明期に驚異的な視聴率と言われているが、受信機台数もあまり増えてはいない時代なので正確な視聴者数は分からない。
それでも昭和30年代前半のムーブメントであったことは間違いない。

川内康範氏は「正義の人」では無く「正義の助っ人/正義の味方」と呼んでいる。
正体を隠した人間が、正すべき時に現れるからこそ視聴者の心を掴んだのであろう。
川内氏も月光仮面は補助者であると公言している。

悪事があると、それを正すべき自分は「正義」と誤解してしまう。これは「社会的賞賛への飢え」と考えれば本能的、獣の行為であろう。
当事者で無いなら助っ人であるべきで、率先して悪を滅ぼそうというのは正義とは言えない「不正をただすのを目的とした行為」になってしまう。
数百人の児童を性的搾取したことに対する正義が渦巻いているが、被害者の救済以外の一族糾弾は正義とは呼べない気がする。

「夕景を見る」

19時から始まる集まりのために都内に出かけることがある。
車や電車を使うこともあるがもっぱらバイクで移動する。
定時の集まりなので移動時間はまだ明るかったり日没後だったりする。
太陽の出入りは毎日数分ぐらい変わっていく。
今の自分外出時にはまだ明るい。
いつかは、前の車のリアガラスに黄金色の空が映ることもあった。

南風の時は都心部上空から羽田空港へ飛行機が侵入する。
ビルの間から見る着陸ライトが分かる薄暮の航空機の姿は、現代なりの東京情緒ではないかと思う。
夕刻風景は気象条件に左右されるために確実に見ることは難しいが、日没時間前後に出歩くことは出来る。
夕焼けを見られる東京の予報も欲しいところだが、たぶん1時間前でも難しいのでやらないのであろう。

すさまじく美しい夕景を見た後は、もうあの光景を見ることが出来ないと思う。
おおよそたまたま見上げた彼方にある

意図して夕焼けを見るのは、定位置に居続けなければ難しい。
高台の見通しのいい、出来れば屋上が全方位に視界が開けている家に住みたいものだといつも思う。

おもしろかったらまたどうぞ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み