第19話 台湾に行きたいわん!②(艋舺龍山寺&台北MRT)

文字数 4,124文字

台北101、故宮博物院につづいて紹介したいのは、龍山寺!!
正式には、艋舺龍山寺(マンカーロンシャンスー)と呼ばれるそうよ。

1738年に創建された、台湾で最も古いお寺なの!

「艋舺」って言うのは地名なんですか?
そうそう、龍山寺は台北市の万華区に位置するのよ。
あれ!? 「艋舺」じゃなくて「万華」と表記するんですね?
台湾島はもともとオーストロネシア語族の人々が先住民として暮らしていました。

やがて大陸から渡ってきた漢民族の人々が住むようになると、先住民たちは「平埔族」と呼ばれるようになったの。

「平埔族」って初めて聞きました。
平埔族の一つであるケタガラン族の人々が交易で使っていた木彫りの船が、彼らの言葉で「バンカ」と発音されたため、「艋舺」という漢字があてられ、このあたりの地名となったそうよ。
「艋舺」は、ケタガラン族の言葉に由来する地名だったんですね!
そして日本統治時代に、「万年の繁栄」という願いこめて、「艋舺」と発音のよく似た「萬華」という漢字に表記が変わりました。
「艋舺」と「萬華」という地名には、台湾の歴史が凝縮しているんですね!
台湾の先住民のうち、平地に住んでいた人たちは「平埔族」山地に住んでいた人たちは「高山族」と呼ばれるようになったんですね。
平埔族は漢民族の文化との同化が進んで、独自の言葉や文化が失われていったそうなの。

ケタガラン族の言葉や文化の名残りが、今では地名だけに見られるわけですね。
龍山寺は、清の乾隆帝の時代に福建省泉州から台湾に移民してきた人々が建立したお寺なのだそうよ。
わあ、フルーツがテーブルにたくさん並べられてますね!?

これってお供物なんですか?

そうそう、花かごやフルーツ盛りなどに、子授祈願や安産祈願、学業成就祈願などを記したものがお供えしてあったわ!
願い事を書いて納めるって、神社の絵馬に似ていますね。

お寺なのに、なんか神社っぽい……?

龍山寺は観音菩薩だけでなく、学問の神である文昌帝君や、子授けの女神である註生娘娘、縁結びの神である月老神君など、人々の願いと強く関わる多くの神々が祀られているの。
お寺なのに多くの神々が祀られる龍山寺


仏教

【正殿】觀世音菩薩、文殊菩薩、普賢菩薩、十八羅漢、韋馱護法、伽藍護法

【後殿】地藏王菩薩


台湾で広く信仰されている神々

【後殿】文昌帝君、大魁星君、紫陽夫子、馬爺、天上聖母、太陽星君、太陰星君、註生娘娘、池頭夫人、十二婆者、水仙尊王、城隍爺、龍爺、福德正神、關聖帝君、三官大帝、華佗仙師、月老神君

お寺と神社が一体化したような、みんなの祈りの場所になっているんですね!

いや、日本のお寺も昔はこうだったんじゃないかな?

日本でお寺と神社がはっきり分かれているのは、明治の神仏分離政策によるものだから。
ああ、歴史的にはお寺の境内に神社があるみたいな、神仏習合の時代の方が長かったんだよね。
浅草寺の本堂の隣に浅草神社があるのは、神仏習合の名残りなんだよ。
日本のお寺も、明治維新前は龍山寺みたいな雰囲気だったのかも!
台湾では、こうして多くの神々を一緒に祀っているお寺がよく見られるのよ。

宗教に対して寛容と言うか、おおらかな社会なんだと感じたわね。

龍山寺のある万華区は、下町の雰囲気があってね。

200年前の街並みが保存された、剥皮寮歴史街を散策したの。

清の時代からの街並みが残っているんですか!?
万華区はかつて艋舺と呼ばれていた、というお話でしたよね。

そう、艋舺は大陸からの交易船が来る港として台北で最初に発展しました。

このあたりで、木材の樹皮を剥いで加工していたことから「剝皮寮」(ポーピリャオ)という地名になったそうよ。

今は貿易港じゃないですよね?
清朝末期には、港付近の川に砂が溜まって船が来ることができなくなって、開発の中心がどんどん東へと移っていったそうなの。

剝皮寮は、発展から取り残された街になってしまったわけですね。
1990年代から民主化が進み、台湾では自分たちの歴史を大事にしよう、という動きが広がります。

歴史を見直す流れの中で、剝皮寮も保存や修復がすすめられ、艋舺の歴史を伝える場所として整備されたそうよ。

龍山寺と剝皮寮は、艋舺が台北発祥の地だった歴史がわかる場所なんですね!
ここは龍山寺駅の目の前にある路地なんだけど、奥の方に「福州元祖 胡椒餅」という赤い看板が見えるでしょ?

うわ、よくこんな狭い路地に入って行こうと思いましたね!

道に迷いそう……

地元の若いお兄さんが、「胡椒餅(フーチャオピン)のお店はたくさんあるけど、いちばんおいしいのはここ! いつも行列できてる」って教えてくれたのよ。
それでこの路地に!

お味はどうでしたか?

売り子のお姉さんに「2時間待ってください」と言われてね……

食べるのをあきらめて龍山寺駅へ戻ったわ。

ふええ、そんなに人気店だったんですね!?

台北出身のニウ・チェンザー監督の映画『艋舺』(邦題『モンガに散る』)は、1980年代の万華区を舞台に、不良の若者たちの友情や抗争などを描いているの。

おお、万華区が映画の撮影場所になっているんですね。

『東京リベンジャーズ』や『クローズZERO』みたいな青春ヤンキー映画だ!

ええ、修羅の町じゃないですか!?

下町のレトロな街並みはすてきですけど、治安が……

万華区は、もともと出稼ぎ港湾労働者が多い貧困地域でもあったそうなのよね。

日本で言う「寄せ場」(日雇労働市場)があったわけですね。
龍山寺周辺の下町を歩いてみると、雑多な商品を地面に広げた露天商がところ狭しと並んでるし、路上生活者らしい人々も見かけたわ。
日本でも上野や新宿、渋谷、池袋あたりでは、路上生活者や生活困窮者のために炊き出しを行っているのをよく見かけますね。

そう、上野公園や新宿中央公園などと同じようにね、夜の「艋舺公園」は台北市内最大の路上生活者の寝床となっているそうなのよ。

ああ、だから治安が……
炊き出しなどの支援はされているんですか?
2011年から「台湾芒草心慈善協会」という支援団体が活動しています。

龍山寺地区の山水街の路地に自立支援センター「山水楼」を立ち上げ、路上生活者や生活困窮者の住居と就労を手助けしているそうよ。

台湾芒草心慈善協会が始めた「路上生活経験者による街歩きガイドツアー」って、ユニークな取り組みですね!
龍山寺でも、低所得者への支援などの慈善事業を積極的に行っているそうです。
台北101周辺のキラキラした顔だけじゃなくて、龍山寺周辺の下町の隠れた顔を知るのも味わい深いわね!
そう言えば、街の人たちはマスクをしているんですか?
「海外では誰もマスクしていない」ってメディアは報道してますけど……
台湾では日本と同じような感じで、マスクをしている人としていない人が半々くらいね。

外国人観光客はだいたいノーマスクで、ホテルやレストランのスタッフはみんなマスクをしていたわ。

意外とみんなマスクをしているものなんですね。

そうなの、電車やバスの車内は、乗客のほとんどがマスクをしていたから、ちゃんと持って行った方が良いわよ。

メトロに乗ったんですか!?
台北の地下鉄は、「台北捷運」(台北MRT)と呼ばれているの。

路線がとてもわかりやすくて、初めてでも迷わず乗れたわよ!

え、このプラスチックのコインがきっぷなんですか!?

自動券売機に目的の駅までの料金を投入すると、この片道きっぷ単程票」が出てくるの。

これを改札機にタッチして入場して、出るときは改札機の投入口に入れるのよ。

出場時に改札で回収されちゃうから、このコインを持って帰って何度も使ったりはできないんですね。
あ、かわいい!

マンゴーかき氷のイラスト!

何度も使えるチャージ式のICカードは、こちらの「悠遊卡」(Easy Card)ね!

このカードで地下鉄や普通列車、路線バスも乗れるわよ。

これはSuicaやPASMOと同じ、交通系ICカードなんですね!

地下鉄の改札は出場時に料金を清算するシステムみたいで、カードの残高がゼロでも入場できちゃうの。

残高不足で改札を出られないときは、改札脇の窓口でチャージしてもらえるわ。

JR西日本と同じようなシステム設計なんですね。

地下鉄の駅構内や車内は、日本よりも清潔だと感じたわ!

地下鉄の駅構内や車内での飲食や喫煙が全面禁止されているからだと思うの。

マナーってレベルじゃなくて、違反すると罰金を科せられる本気の禁止なんですね。

日本では、夜になると駅構内や車内に酔っぱらいが多くなって治安が悪いから、飲食禁止にするのは良いアイディアかも……
台北の地下鉄では、路線ごとに色が分けられているの!

龍山寺駅からブルーライン(板南線)に乗って、台北車站駅でレッドライン(淡水信義線)に乗り換えて、台北101/世貿駅で降りたわ。

世貿駅……?
台北101の隣に世界貿易センタービルがあるの。
世界貿易センタービルって、ニューヨークだけじゃなくて、世界中にあるものなんですね。
日本の世界貿易センタービルは港区浜松町にあったんだけど、老朽化のため2021年に閉館となって、解体工事の真っ最中なのよね。
ホテルの目の前に地下鉄の駅があるって、便利ですね!
個人旅行の場合は、公共交通機関を使って観光地を巡ることになるから、なるべく駅に近いホテルを選ぶのがおすすめよ!
初めての土地で知らない電車やバスに乗るのって、怖くないんですか?
電車や路線バスに乗ると、地元の人々の暮らしを肌で感じることができるの。

車窓から街並みをボーっと眺めるのも楽しいわね!

でも、アナウンスを聞き落して、降車駅を間違ったりしたら……

台北の地下鉄では英語と日本語でもアナウンスしてくれるから、乗る方向さえ間違えなければ、降車駅に迷うことないわ。

わあ、日本語の車内アナウンスがあるんですか!?
そうなの、親切すぎてびっくりしちゃったわ!

海外の公共交通機関に乗っていると、現地の言葉だけの場合も多いから、英語アナウンスが聞こえると安心するんだけど、まさか日本語まで聞けるなんてね!

ようし! メトロに乗って、次はどこへ向かいますか?
剣潭駅までと言いたいところだけど……

長くなったから、つづきはまた次回ね!

2023/06/12
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

南津海(なつみ)ちゃん


社会科研究部の部員。好奇心旺盛。

寿太郎(じゅたろう)くん


社会科研究部の部員。南津海ちゃんとは幼なじみ。

せとか先生


社会科研究部の顧問。専門は世界史。

みはや先生


専門は音楽。せとか先生と仲良し。

考えるカエル


『バイブル・スタディ・コーヒー』から出張

本を読むウサギ


『バイブル・スタディ・コーヒー』から出張

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色