15・恐ろしい、エクソシズムの記録

文字数 7,044文字

エクソシズムというものを皆さんはご存知でしょうか。
主にキリスト教のカソリックによって行われる、悪魔祓いの儀式の事です。

こう言うと、おいおい悪魔なんて居るわけないだろ、悪魔が取り憑いたというのは精神病の症状で
悪魔祓いの儀式なんて迷信だろ…と、多くの人は思うのではないでしょうか。

自分も以前はそう思っていました。
しかし、どうやらそうではないらしいのです。

悪魔が人に取り付いた時に陥る状態と、精神病による症状は似てはいるようなのですが、
それでも様々な違いがそこには見出されるらしいのです。

一般的にイメージされる精神病の症状といえば、
脳の代謝の変調から来る幻覚や幻聴、妄想などがあります。
その幻覚幻聴や妄想に基づいた行動をしてしまう事によって自分、あるいは他人を
傷つけてしまったりする事もあるというのが精神障害の主なイメージであると思います。

その他にも欝や、あるいはその逆の躁状態、取り憑かれたように何度も手洗いなどをしたりする
強迫行動などそういったものがあるようです。

しかしそういった症状とは別に、異常な怪力を発揮する、突如乱暴に罵り言葉を発する、
本人が知らないはずの外国語を話す(異言)、本人が知らないはずの他人の秘密を話す、
そして聖職者や教会、十字架などの宗教的シンボルに対して激しく憎悪と嫌悪を示すなど
悪魔に取り憑かれた人はこのような状態に陥るようです。

もちろん、精神障害に陥ってもこれに似たような症状が出る可能性は否定できません。
外国語に聞こえるようで出鱈目な言葉の羅列だったり、他人の秘密を話すというのも
偶然当たったか、推理あるいは誘導質問によるものだったりするという事も考えられます。

しかし、長年精神医学に携わり悪魔憑きを研究した精神医学博士や
エクソシズムに携わった聖職者なども、悪魔に取り憑かれたとされる人が知るはずのない事柄を言い当て
あるいは取り憑かれた人の体が浮かび上がる、コップが空中で静止するなどの超常的現象を目撃するに当たって、
初めは悪魔憑きに否定的だったそれらの人々もそういった現象が現実にあるという事を
認めるようになりました。

悪魔祓い、エクソシズムは様々な映画の題材としても取り上げられ、
見たことのある人も多いのではないのでしょうか。
そして映画に描かれているような事が、エクソシズムの現場では実際に起こっているらしいのです…。


・様々な宗派に存在する悪魔祓い

悪魔祓いというとカソリックのものが有名ですが、神道や仏教等にも
それに類するものがあったりします。

神道ですとお祓いですとか、仏教でも宗派によってですが
加持祈祷や調伏と呼ばれる悪霊払いの儀式が存在しているようです。

さらに獅子舞いや人形流しなどの民間信仰における厄払いなどは、
様々な所で色んな形の物が行われているようです。

人は古来から悪霊を恐れ、それが人に悪い影響を及ぼす事のないよう
神に祈りを捧げて来ました。

信仰によるある種の気休め…とも捉える事もできるでしょうけれども、
それと同時に恐らく、はっきりと目には見えないまでも何かしらの影響を
古代から人は何となく漠然と感じ取って来たのではないでしょうか。

ですので、何となく気分が優れない時はお寺や神社にお参りして見れば、
意外と気分がすっきりしたりするかも知れません。
もちろん、効果を過信し過ぎてはいけないのでしょうけれど…。


・エクソシズムの事例

カソリックによるエクソシズムの事例をネットで検索して見ますと、
いくつかの事例が出てきます。

しかし多くの場合、乗り移られた人も、また悪魔を祓う側も
多くの危険を伴うのが常のようです。
そのような事情があってか、悪魔祓い、エクソシズムを行う聖職者は
後継者不足に悩んでいるようです。

実際に悪魔祓いには様々な事例がありますが、
どのような事が起こるのか記録されているいくつかの事例を紹介します。


・クララ・ゲルママ・セレの事例

1906年、南アフリカ ナタールで聖ミカエルミッションスクールの学生だった
クララ・ゲルママ・セレという16歳の女子学生が、どういういきさつがあったのか不明ですが
悪魔と契約を結んでしまい、それからというもの本人の知らないはずのいくつかの外国語で話す、
周囲の人たちの思考を読む、十字架や宗教的シンボルに対する嫌悪など
典型的な悪魔憑きの症状が現れました。

さらに取り憑かれた彼女は獣のような恐ろしい声をあげ、
体が1.5mほど浮き上がる現象も起こったと伝えられています。

そして、悪魔祓いの儀式のためにやってきた二人の聖職者が聖書を読み上げると
彼女の体が宙に浮くのを170人の人が目撃したとあります。

2日以上行われた悪魔祓いの儀式のあと、悪魔は彼女の体を離れていったと
伝わっています。


・メリーランド州悪魔祓い事件

1940年代後半、メリーランド州に住む14歳の少年ローランド・ドウ(仮名)は
親しかった叔母に教えてもらったウィジャボード(西洋版こっくりさん)を好んで行っていました。

そして1949年1月15日の晩、祖母とローランドを家に残し両親が外出した際に
家のどこかで水が滴るような音が響きだしたといいます。

彼ら二人は家中の水道を確かめて水の漏れている箇所を探そうとしましたが、
どの水道からも水は出ていませんでした。にも関わらず、家の中には
水が滴るような音が響いていたと言います。そしてその際に、
飾ってあったイエスキリストの絵が揺れだすのを二人は目撃したそうです。

そして両親が帰ってくると同時にその音は止みましたが、
今度はコツコツと何かを叩くような音や、キーキーと何かを引っかくような音が聞こえ始めました。

その出来事から11日後、親しくしていたローランドにウィジャボードを教えた叔母が急に亡くなり、
それに前後して何かを叩くような音や引っかくような音に加え、
家具が動いたり花瓶が飛ぶなどの現象が起こり始めローランドの性格は急変し、
体には「助けて」や「閉じ込められた」等不可解な文字が浮かび、
彼のそばにあった聖水の容器はひとりでに床に叩きつけられるといった現象が起きたそうです。
また彼が学校に行った際、彼の机がひとりでに移動したりするのを48名の生徒が目撃したと伝えられています。

そして彼に取り付いた悪魔を祓うためカソリックの神父による
エクソシズムが執り行われる事になりましたが、その視察のために神父が訪れた際に
ベッドや壁から異様な音がしてベッドに寝かされていたローランドは
説明のつかない異様な動きで部屋の中を動き回ったと報告されています。
そしてエクソシズムの際、
ローランドは神父を負傷させ儀式は中断されてしまいます。

その後、彼の胸に叔母が亡くなった地であるセント・ルイスの血の文字が浮かび
何かを感じた一家はその地に移動。
そこで改めて悪魔祓いの儀式が行われる事になりました。

悪魔祓いの儀式は2ヶ月以上に渡り、計30回以上行われました。
その最中にローランドは異様な声で叫び、ベッドは異常な揺れ方をし聖水の壜が空中に浮くなどの事が起こり、
彼の体には様々な文字や文様が浮かび、そして彼は儀式に携わった神父の鼻を折るなどの怪我を負わせました。

しかしついに儀式は成功し、神父が悪魔に去れと命じると悪魔は去り
ローランドは「主キリスト」あるいは「神よ」と普段の声で喋りました。
その瞬間、雷鳴あるいは銃声のような音が辺りに響いたと伝えられています。
そしてローランドは「終わった、終わったよ」と呟いたとされています。

悪魔祓いに使われた部屋は封印され、その後ローランドは
平穏な人生を送ったと伝わっています。
悪魔に取り憑かれていた時期の記憶はないそうです。

一説によれば、叔母から教わり彼が好んで行っていた
ウィジャボードによる交霊が悪魔が彼に取り憑くきっかけになったとも言われています。

このメリーランド州悪魔祓い事件は、
映画「エクソシスト」のモデルとなった事件とも伝えられています。


・マイケル・テイラーの事例

1974年のイギリス、オセットという町に
マイケル・テイラーという男性が妻と5人の子供と暮らしていました。

マイケルは友人から21歳の女性マリー・ロビンソンが率いる
新興的なキリスト教団体を紹介され、彼の人生は少しづつ変わっていきました。

宗教にはそんなに熱心ではなかったマイケルですが、教団のリーダー
マリーのカリスマ性に魅せられ、やがて熱心に活動にのめり込んでいきました。
それと同じくして、彼の家庭ではマイケルの熱心すぎる宗教活動を巡って口論が絶えなくなったそうです。
彼自身の性格にも変化が見られ、常にいら立ち、何にでも不快感を表すようになりました。

そしてある日、マイケルが教会にいる時にマイケルの妻がそこに訪れ、
信者の前で彼が浮気をしていると罵り始めました。

すると突如マイケルは激高、そして妻ではなく
何故か近くにいたマリーに暴言を吐き襲い掛かりました。

彼女は暴力を受けている間、イエスキリストの名前を叫び続けました。
そしてマイケルの妻も必死に彼を止め、神の名を叫び続けました。
マリーはこの時にイエスキリストの名を叫び続けたお陰で、
何とか命拾いしたと語っています。

この時以来、マイケルの奇行はエスカレートし
ついに地元の聖職者はマイケルに悪魔が取り憑いていると判断し、
取り憑いた悪魔を祓うためエクソシズムが執行される事になりました。

悪魔祓いの際、マイケルは体をかきむしり、つばを吐きかけ、
近づく者には吠えかかり神父に噛み付こうとしたためベッドに縛り付けられました。

そして儀式は8時間に及び、
取り付いていた40もの悪魔が祓われたと言われています。

しかし、憎悪、狂気、殺人の悪魔だけは祓いきる事ができず、
休息のためにマイケルは一時的に帰宅を許されます。

その時、悪魔祓いを見守っていた一人の夫人は頭の中で
「マイケルの妻を殺す」と悪魔が呟く声が聞こえたと言います。

そして自宅に戻り2時間後、マイケルは妻を絞め殺し
眼球をえぐり、舌をひっこ抜き、顔の皮を剥いで
飼い犬のプードルもバラバラにするという凄惨な事件を起こします。

裸で全身に血を浴びたマイケルはフラフラと歩き回り、
「これは悪魔の血だ!」と何度も叫んだと言われています。

逮捕されたマイケルは裁判にかけられ、心神喪失と判断され
精神病院に収容されます。
現在は出所しているようですが、精神状態は良くないとも言われています。

この事件ではもともと精神に問題の出始めていたマイケルが
エクソシズムを受ける事によってさらなる状態の悪化を招き、妻と飼い犬を惨殺するという
凄惨な事件を起こすきっかけとなったと世間の批判を浴び、
英国国教会で記録される最後のエクソシズムとなりました。
儀式を行った神父は、これは本物の悪魔の憑依によるものと主張しています。


・アンナ・エクランドの事例

アメリカ、ウィスコンシン州に住むアンナ・エクランドは敬虔なカトリック教徒でしたが、
14歳の頃宗教的なものへの激しい嫌悪を覚え、教会に入る事が出来なくなってしまいました。
彼女の父親、叔母が呪術的なハーブを彼女の食事に取り入れていたためとも言われています。

アンナは性的にひどく乱れた生活を送るようになり、
更に常に他人を汚い言葉で罵るようになりました。

1912年、彼女に対しエクソシズムが執り行われ
この時一旦は回復が見られます。

しかし1928年、再び彼女に悪魔憑きが発生し、
この2回目の悪魔祓いは苛烈なものとなりました。

悪魔祓いは修道院で執り行われましたが、暴れるアンナの力があまりに強く
抑えるためには体格のいい修道女が6人がかりで当たらなければなりませんでした。

拘束具で体を拘束されていてもそれを破壊し、
さらに横たわったまま壁を伝い天井で静止するという現象も起こったと
伝えられています。

そして口を閉じたまま喉から直接声が出ているように彼女が知らないはずの言語を喋り、
神父や修道女の過去の罪を言い当て哄笑しました。

アンナは儀式の最中祝福された食べ物を拒み床に叩きつけ、ほとんど飲まず食わずであったにも関わらず
口からタバコの葉のようなものや瓦礫に似たものを吐き出し続け、
また排泄も頻繁に行ったため部屋は大変な悪臭だったそうです。

そして部屋の中には異常な数の蝿が発生し、
エクソシズムを執り行う神父はアンナに取り付いた悪魔を
蝿の魔王ベールゼブブと断定します。

そして奇妙な事に、悪魔祓いが進むにつれ彼女の体は原型を留めないほど膨張し、
その重さでベッドの足が曲がるほどになったと伝えられています。

悪魔祓いは23日の間行われましたが、ついに儀式は成功し
アンナがイエスキリストへの賛辞を叫んだ時に、
悪魔は彼女の体から消え去ったと伝えられています。


・命の危険が伴う悪魔祓い

悪魔祓いは、上手く成功すればいいのですが時には取り付かれた人の命に関わる場合もあるようです。
2005年にルーマニア正教会で行われた悪魔祓いでは、見習い修道女マリチカに悪魔が取り憑いたとされ
その悪魔を祓う儀式の際に十字架に磔にされた彼女は命を落としました。
そして、悪魔祓いを行った司祭と4名の修道女は殺害の容疑で裁判にかけられる事になります。

日本でも時々、取り憑いた悪魔を祓うと称して被害者に激しい殴打を加えたり
絶食などをさせ死亡させてしまうという事件が起こったりします。

実際にカソリック教会が悪魔祓いを行う際には
まず医療機関での診察が行われ、慎重に悪魔憑きかどうかが判断されるそうです。
もし悪魔祓いの必要のない人が苛烈な悪魔祓いの儀式を受けたら死亡してしまう場合も考えられます。
悪魔憑きかどうか、エクソシズムが必要かどうかの判断が慎重になるのは当然とも言えます。
悪魔祓いは安易に行うと、死亡などの事故に繋がる可能性もありますから…。


・悪魔に取り憑かれる原因

悪魔祓いの事例を見ていると、
多くの場合呪術や魔術に類するものが関わっているように思えます。
紹介した事例の中でも、メリーランド州悪魔祓い事件やアンナ・エクランドの事例などは
ウィジャボードによる交霊や呪術的なハーブが原因となったのではないかと疑われます。

その他にも不幸な事件のあった場所や生贄などを行っていた異教の寺院、
いわく付きの場所などそういった場所に立ち寄った際に取り憑かれたりもすると言われています。

そして、取り憑かれやすい体質というのもまたあるようです。
何が原因で取り憑かれやすくなるのか、またはそうでないのかは謎ですが…。

これを見るに、悪魔憑きに呪術や魔術が関連しているとして、
それを用いて相手を呪ったりするのは危険なのかも知れません。

例えば誰かを黒魔術で呪ったりした場合に、自分も相手も霊的なものに影響を受けにくい体質なら
何も起こらないでしょうけれど、もし自分だけが霊的なものに影響を受けやすい体質ならば
呪いはむしろ自分のほうに降りかかってくると考えられます。
そして、例にあげた通りの悪魔憑きがあなたに発生してしまうかも知れません。

霊的に良くないとされる物に、
安易に手を出してしまうことは避けるようにした方が安全かと思われます。

それから悪魔祓いの事例を見ていますと、憑依が起こる際にはある種の予兆がある様に思えます。
奇妙な音がしたりですとか、硫黄や獣のような匂いが充満するといったような。
こういう現象が身近に起こり始めたら、注意しておいた方がいいのかも知れません。

そして良くない存在に取り付かれると、気分は重くなりイライラする事が増え、
まるで突然性格が変わってしまったかのような状態に陥るようです。

日本でも、精神的なものが原因とされている事件の中には例に挙げた悪魔憑きであるかのような事例も
存在します。事件の真偽を確かめる事は、難しいのでしょうけれど…。

日本では、憑き物祓いはお寺や神社でお祓いを受けるというのが古くから一般的でした。
また、キリスト教徒の方は神父さんからそんな大げさなものではなくお祈りのような形で
祓いを受けたりする場合もあったりするようです。
もちろん、体調不良は医療期間に頼る事を第一に考えるべきですが…。

以上に見てきました通り、悪魔憑きは実際に存在している可能性が高いです。
しかしどういう原因でそれが発生し、防ぐためには何をしたらいいのか謎だらけで
科学的な分析はほとんど行われていません。

けれども、紹介したような現象が現実に起こっている以上、
悪魔憑きは将来科学で解明できるような科学的な原因は必ずあるような気がしています。

悪魔憑きが科学的に分析され、原因と祓いかたなどの対策がはっきりしたなら。
例にあげたような悪魔の憑依による事件が起こるのを、
防ぐことが出来るようになるのかも知れません。


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