4・自身に起こった出来事 その2 身体に現れた異変

文字数 2,540文字

ノートルダム大聖堂の火災において、自身の書いた聖書をラノベ化した作品に対して
様々な符合が生じまるで神がお怒りになられたかのような感覚を受け、
ショックのあまり目を閉じ、意識を遮断しようと布団に横になった自分。

しかし、逃げる事は許さんとばかりに
今度は身体的な異常が発生し始めました。

胸に、焼け付くような熱い感覚がマグマのように流れ込んできて
やがてそれは胃や腸などの内臓全体に広がり、それら全てを焼き尽くすかのような
ヒリつく、とても寝てはいられない、不思議で強烈な灼熱感が自分を襲いました。

もう、意識にフタをして逃げる事もできません。
目を閉じていても実際に発生している痛みを伴う熱が、起こった出来事が
幻でも何でもない現実だと常に意識に訴えかけて来ますから。

これは、単に精神的ショックから体に現れた症状だったんでしょうか。
それとも、人知の及ばない神秘の世界の現象だったんでしょうか。
一体、どちらなんでしょうか…。

そしてその感覚に寝ているのも辛く、仕方なしに起き上がると
ネット動画で炎上しているノートルダム大聖堂を今まさに大変な事が起こってるんだ、
という思いで眺め続けました。

心の中は、呆然自失です。
神様、申し訳ありません、自分のした事はうっかりとは言えそんなにお怒りを発せられる
大変失礼な事だったんですね、けれど神様、こんな世界中に知らしめるやり方でなさらなくっても…と、
頼りない、心細い、まるで世界にポツンと一人取り残されてしまったかのような、
寂しい、寂しい感覚に包まれてしまいました。

そして心の中では、必死に言いわけをし続けました。
神様の大切な大切な書、聖書をラノベとして軽く書いたのは聖書に馴染みのない日本に
取り合えず聖書に馴染んでもらおうという善意から出たものなんです、
決して悪気があったわけじゃないんです、お怒りなら出来れば自分個人にお示し下されば…

やってしまった、という思いで一杯です。
そう言えば今までの人生、善意でやろうとした事があらぬ展開になって、
思ったのとまるで逆の結果になるなんてことが良くあったよな…。
俺はどこまでもついてないんだ。善意でした事が、よりにもよって神を怒らせてしまったな…と
今までのある種の逆運に満ちた人生をしみじみと振り返ったりしました。

しかし、一つ希望の持てる事がありました。
ネット上での掲示板では、再建という言葉が雰囲気明るく語られていました。

それを見て、そうだな、ノートルダム大聖堂が例え倒壊したって再建はなされるんだ、
クヨクヨしたってしょうがない、と若干ヤケクソ気味に元気を出して
暗く考えないようにして内臓に焼け付くような感覚をこらえながら眠りにつきました。


・大聖堂が倒壊せずにひと安心 けれど…

翌日目が覚めると、まず真っ先にネットで
ノートルダム大聖堂関連のニュースを漁りました。

鎮火は成功し、一時は倒壊が危ぶまれていた建屋自体も無事で、
熱で爆砕したとされていたノートルダム大聖堂の象徴のバラ窓も奇跡的に無事で
心からホッとしました。

さらに中に収蔵されていた聖遺物、美術品、大オルガン、
改修工事中だったので尖塔から取り外されていた12使徒や諸聖人のブロンズ像、
尖塔の先に取り付けられていた雄鶏の風見鶏、屋上で飼育されていたミツバチなど
ありとあらゆるものが無事で、火災の見た目の規模や繊細で神聖な感じのある
建物に起きた大きな火災の割には、思った以上に被害が少なかったという事実に
昨日あれだけもだえ苦しんだ自分は何だったのかと
ノートルダム大聖堂の全倒壊も覚悟していた自分は少々あっけに取られたと言いますか、
予想もしていなかったと言いますか、戸惑いを隠せませんでした。

もちろん、建屋や聖遺物、中の美術品の数々が無事だったのは
消火に当たった消防士の方々の活躍が大きかったのは言うまでもありません。

しかし、建物が倒壊するかと見えるほど大規模な火災に対して
これだけありとあらゆる物が無事だったというのは、やはり何かの
意思の働きのようなものを感じます。

さらに、少し失礼になるのを承知で言いますが、
焼け残ったノートルダム大聖堂は何とも言えない不思議な美しさを湛えていると言いますか、
特に火災後に消防士の方が初めて内部に入った時の映像を見たんですが、
少し崩れた天井から光が差し込み、それを反射した十字架が白く輝き
黒く焦げて床に崩れた屋根の木材も何だか逆にそれを際立たせているような、
まるで胸を圧倒する大作映画のラストシーンのような、これが自然に起こったとは
とても思えない光景が広がっていました。

中に入ろうとした消防士の方々も、圧倒的な光景に
仕事なので早く入らないといけないんでしょうけれども
しばらく立ち尽くしていたのが印象的でした。

ネットに上げられている事件の写真や映像の数々も
そのどれもこれもが何ていいますか一種異様なほど迫力に満ちていると言いますか、
また何とも言えない美しさも備えているように見える、本当に本当に不思議な感覚に陥ります。
何かの力が作用しているようにも感じてしまいます。

そして、自身の身体にも不思議な異変が続きます。
臓器の焼けつく感覚は収まったのですが、胸の中辺りや胃の上辺りに
ポッコリとしたボールが詰まったような感覚が発生し、
それが時々主にお腹の辺りのあちこちを移動しているような、妙な感覚です。

さらに、魂の一部分が切り取られ残りの部分がそれを求めて悲しんでいるような、
一種の空虚感のある独特の感覚にも陥りました。
これはもしかして、スピリチュアルペインという現象なのかも知れません。

大きな精神的ショックを受けた場合に、
こういった感覚的な異変が起こるものなんでしょうか。
精神医学の知識に疎い自分には、これがどういう現象なのか判別がつかないんです…

胸に何やらポッコリしたものが詰まった感覚は事件から1ヶ月ほど続いて
徐々に治まっていったのですが、2ヶ月近く経過した今でも臓器の灼熱感や
ポッコリしたものが胸にある感覚は時々蘇ったりします。
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