第62話 LowBattery(第二章 終了)
文字数 1,714文字
「どうした! いったい何が起こったんだ!!」
飛行戦艦のブリッジはパニックになっていた。
アルマンの捨て身によるHAMMの攻撃を受け、飛行戦艦の反重力モジュールの出力が低下した。
そして高度を維持出来なくなって、ゆっくりと地面が迫ってきている。
ついには大きな地響きとともに地面に不時着した。
「リゾン公爵閣下! 一大事です!! 早くこの場を離れないと、ターレス要塞からレジスタンスが総攻撃してくるかも知れません!!」
「……あわてるなワイオール。それなりの数の武装歩兵も同乗しておる。それにしても……やってくれたな下等生物ども。これも魔導教会の差し金なのか……ええい、いまいましい。だが、ここでボーっともしてはいられん。女王不在の状態で飛行戦艦が落ちたとなったら国元が危うい。急ぎ帰国の手配をしろ!!」
「はっ。直ちに!」
◇◇◇
ダルトンは隊をまとめて、スフィーラと共にターレス要塞に入った。
要塞からは有志の決死隊が落ちた飛行戦艦にとどめを刺すべく出撃した。
だが彼の小隊メンバーはその場にとどまり、誰も口をきかない。
いまだに、さっき目の前で起こった事が信じられないのだ。
スフィーラが動作不能になり、アルマンが飛行戦艦と刺し違えた。
とりあえずレジスタンス達は当面の危機を免れ、助かったのだが払った犠牲は前にもまして大きいのではないか?
「JJ……」泣き続けて顔をぐしゃぐしゃにしているタルサの肩を、JJは優しく抱きしめながら言った。
「泣くな。おれがそばにいてやる。くそ……いつまでこんな事が続くんだよ……」
「メリッサチーフ。そんなにがっかりしないで下さい。まあ、アルマン隊長は気の毒でしたが……それにしてもLowBatteryですか。このタイミングで運が悪いですね。インバータを調整したほうがいいのかな?
でもボディフレームに損傷はないみたいですし、最適化処理が終わったら問題ないですよね。膝はまたやり直しましょう」
メトラックがそう言うと、メリッサが真っ青な顔で答えた。
「違うのメトラック。私……すっかり失念していた。
このままじゃスフィーラは……」
「えっ?」メトラックが怪訝そうな顔をした。
◇◇◇
結局、旧王都の進駐軍がすぐに援軍を寄こしたため、レジスタンスの飛行戦艦襲撃は失敗に終わった。しかし、虎の子の飛行戦艦を落とされた事で、エルフ軍は一旦レジスタンス掃討作戦を中止し、総指令官だったリゾン公爵は女王空位の状態を良しとせず、すぐに帰国したとの事だった。
西の森の教会で、じじい様が女王ヨーシュアと話をしていた。
「やれやれ。どうやらスフィーラは無事な様じゃ。まったくハラハラさせられる。
それにしてもまさか飛行戦艦を落とすとは。人間達も捨てたものではないな。
王族が夜逃げしていなかったら戦況はひっくり返ったのではないか?
まああれの反重力装置の修理も我々魔導教会でないと出来ん。せいぜいゆっくりやるわい……。
それでヨーシュアよ。近隣諸国からいらん干渉を受けぬためにも、お前は一旦国元に帰れ。リゾンだけではこの混乱は収まらんだろう」
「ですがお師匠様。私は軍に命を狙われているのでは?
そんな状況で、彼らに対抗してうまく国政に携われましょうか?」
「だから一時我慢じゃ。教会も口裏を合わせる。
いきなり奴らと衝突しても、やはり国元の混乱は免れん。
お前は何も知らないフリをしながら、あちらの国で密かに味方を増やすのだ。
だがくれぐれもリゾンや軍に気取られてはならん。
そうすれば必ず人間達と会話する機会が訪れるはずじゃ」
「分かりましたお師匠様。
それでは、スフィーラさんと魔法の事はお師匠様と魔導教会にお任せ致します。
私はエルフの国をうまくまとめられる様、尽力致します」
そう言いながらヨーシュアは遥か昔の事を思い出す。
スフィーラさん。そう、はるか昔、魔法の事を学ぶ為にお師匠様と私がこっそりこちらの世界に来た時お会いしたお姫様……アリーナ姫によく似たアンドロイド。
でも偶然とはいえ、なぜか性格までよく似ている様で……
多分、ちゃんとお友達になれますよね?
そう……あの時の様に……
(第二章 終。続く)
飛行戦艦のブリッジはパニックになっていた。
アルマンの捨て身によるHAMMの攻撃を受け、飛行戦艦の反重力モジュールの出力が低下した。
そして高度を維持出来なくなって、ゆっくりと地面が迫ってきている。
ついには大きな地響きとともに地面に不時着した。
「リゾン公爵閣下! 一大事です!! 早くこの場を離れないと、ターレス要塞からレジスタンスが総攻撃してくるかも知れません!!」
「……あわてるなワイオール。それなりの数の武装歩兵も同乗しておる。それにしても……やってくれたな下等生物ども。これも魔導教会の差し金なのか……ええい、いまいましい。だが、ここでボーっともしてはいられん。女王不在の状態で飛行戦艦が落ちたとなったら国元が危うい。急ぎ帰国の手配をしろ!!」
「はっ。直ちに!」
◇◇◇
ダルトンは隊をまとめて、スフィーラと共にターレス要塞に入った。
要塞からは有志の決死隊が落ちた飛行戦艦にとどめを刺すべく出撃した。
だが彼の小隊メンバーはその場にとどまり、誰も口をきかない。
いまだに、さっき目の前で起こった事が信じられないのだ。
スフィーラが動作不能になり、アルマンが飛行戦艦と刺し違えた。
とりあえずレジスタンス達は当面の危機を免れ、助かったのだが払った犠牲は前にもまして大きいのではないか?
「JJ……」泣き続けて顔をぐしゃぐしゃにしているタルサの肩を、JJは優しく抱きしめながら言った。
「泣くな。おれがそばにいてやる。くそ……いつまでこんな事が続くんだよ……」
「メリッサチーフ。そんなにがっかりしないで下さい。まあ、アルマン隊長は気の毒でしたが……それにしてもLowBatteryですか。このタイミングで運が悪いですね。インバータを調整したほうがいいのかな?
でもボディフレームに損傷はないみたいですし、最適化処理が終わったら問題ないですよね。膝はまたやり直しましょう」
メトラックがそう言うと、メリッサが真っ青な顔で答えた。
「違うのメトラック。私……すっかり失念していた。
このままじゃスフィーラは……」
「えっ?」メトラックが怪訝そうな顔をした。
◇◇◇
結局、旧王都の進駐軍がすぐに援軍を寄こしたため、レジスタンスの飛行戦艦襲撃は失敗に終わった。しかし、虎の子の飛行戦艦を落とされた事で、エルフ軍は一旦レジスタンス掃討作戦を中止し、総指令官だったリゾン公爵は女王空位の状態を良しとせず、すぐに帰国したとの事だった。
西の森の教会で、じじい様が女王ヨーシュアと話をしていた。
「やれやれ。どうやらスフィーラは無事な様じゃ。まったくハラハラさせられる。
それにしてもまさか飛行戦艦を落とすとは。人間達も捨てたものではないな。
王族が夜逃げしていなかったら戦況はひっくり返ったのではないか?
まああれの反重力装置の修理も我々魔導教会でないと出来ん。せいぜいゆっくりやるわい……。
それでヨーシュアよ。近隣諸国からいらん干渉を受けぬためにも、お前は一旦国元に帰れ。リゾンだけではこの混乱は収まらんだろう」
「ですがお師匠様。私は軍に命を狙われているのでは?
そんな状況で、彼らに対抗してうまく国政に携われましょうか?」
「だから一時我慢じゃ。教会も口裏を合わせる。
いきなり奴らと衝突しても、やはり国元の混乱は免れん。
お前は何も知らないフリをしながら、あちらの国で密かに味方を増やすのだ。
だがくれぐれもリゾンや軍に気取られてはならん。
そうすれば必ず人間達と会話する機会が訪れるはずじゃ」
「分かりましたお師匠様。
それでは、スフィーラさんと魔法の事はお師匠様と魔導教会にお任せ致します。
私はエルフの国をうまくまとめられる様、尽力致します」
そう言いながらヨーシュアは遥か昔の事を思い出す。
スフィーラさん。そう、はるか昔、魔法の事を学ぶ為にお師匠様と私がこっそりこちらの世界に来た時お会いしたお姫様……アリーナ姫によく似たアンドロイド。
でも偶然とはいえ、なぜか性格までよく似ている様で……
多分、ちゃんとお友達になれますよね?
そう……あの時の様に……
(第二章 終。続く)