第16話 操縦不能?
文字数 2,222文字
「で、どこへ向かうのよ?」メランタリがJJに問う。
「ニドルに聞いた話だけれど、ソンメルソンに向かう街道の東のはずれの山ん中にいるかも……だってさ」
「なんか頼りない話ね。」
JJもメランタリも、モンデルマを出発した後、悲しい表情は見せていない。
悲しくないはずはないだろうが、やせ我慢しているのか、これからの事に緊張しているのか……。
車はスフィーラが運転しているが、モルツの言う通り、ほとんど自動で思った通りに動いてくれる。
もちろんアリーナは免許は持っていないし、過去に運転した事もない。
一応、いつ緊急事態になってもいい様に、衣装は専用装備のままだ。
エルフは王国を支配下に置いているが、その表面全てを占領出来ている訳ではない。都市と都市の間の人口はまばらで、おおむね荒れ地や砂漠や森林になっている為、正直、細かい所まで支配は及んでおらず、レジスタンスが活動しやすい素地は残っている。
とはいえ、都市でないと食べる事自体がままならない事は間違いない。
【偵察機接近。十時の方向。あの先の木立に入って隠れて下さい】
敵の接近は、かなりの確率でモルツが捕捉してくれる。
「それにしても、ずいぶん充電が持つわね? もう相当来たと思うんだけど」
メランタリは車こそ持ってなかったがペーパードライバーで一番車に詳しい。
今の車は、アリーナの頃の様な内燃機関のエンジンでなく、ほとんど電気で動くらしいのだが、実はアリーナが、スフィーラのリアクターから電力をこっそり供給しているのは内緒だ。
そして目標の地点まで2/3位来た所の森の中で、休憩していた時だった。
【警報。アリーナ、すいません。囲まれました。
敵数……五十以上。三個小隊位です】
(ちょっと! 気づくの遅いって! 逃げられる?)
【敵は電磁波遮断シートで、こちらのパッシブレーダに引っかからない様にしていた様です……仕方ありません。高出力アクティブレーダー始動。
……四方を囲まれています。強行突破するしかありません】
(もう!)
「二人とも、車に乗って! 早く!! 敵襲よ!」
JJとメランタリが慌てて車に飛び乗り、アリーナが思い切り発進させた。
周りから機銃掃射が行われ、JJとメランタリは、頭を低くして車の社内に身を隠している。アリーナには弾が当たるのだが、スフィーラのボディは何でもないかの様に弾き返す。
「ねえ、スフィーラ。大丈夫!? あなた、弾当たってない?」
「ええ、大丈夫よ」
メランタリが心配してくれるが、まあ床に突っ伏しているので、こっちを細かく見ちゃいないだろう。適当に返事をしておく。
小型の対車両弾頭も飛んで来るが、モルツが正確にこれを回避していく。
おっと! はは、直接取っちゃった。
これは前方に! ほれ!
アリーナが弾頭を投げた先に、敵の包囲の一角があり、見事に吹っ飛ばされた。
よっしゃ! 囲みが破れたわ。
アクセルを吹かして、一気に囲いを突っ切った。
ええい! それじゃ全速! ……えっ!?
車のタイヤが、なにか嫌な感触のものを踏んだ気がして、次の瞬間、地雷が弾け、車は宙を三回くるりと回って、ひっくり返って地面に投げ出された。
「痛ってててて……。JJ、メランタリ。大丈夫?」
慌てて二人の様子を確認するが、どうやら気を失っているだけで命に別状はなさそうだ。
アリーナが、ひっくり返った車から身体を引き出すと、すでに周りは歩兵で囲まれていた。
【アリーナ。一旦落ち着いて。下手に動くと二人も危ないです。
出来れば二人と距離を取って戦いましょう。
幸い、キャンセラーの気配はありません】
(分かったわ!)
「おい、やっぱり女だぞ。でもなんて恰好していやがるんだ。痴女か?
それにボンテージとポニテが全く似合ってないぞ!」
「ふん。似合ってなくて悪かったわね!」
そう言いながらアリーナは、高くジャンプをして、車を囲んでいた歩兵たちの背後に回った。
それじゃ、行くわよ!
「なんだよあいつ……人間じゃないのか?」
予想外に後ろを取られて意表を突かれた獣人の歩兵たちは大きく動揺した。
そして、そこにアリーナが突っ込んで近接戦で手刀を叩き込んでいき、五十人ほどいた敵兵が、みるみるその数を減らしていく。
「よっしゃ。これならいけるわ!!」
そう思った時だった。
アリーナは突然、手足の感覚を喪失した。
「えっ!? ちょっとモルツ。なんでオートモードを使うのよ。
これなら私でも大丈夫だって!」
しかし、モルツからは何の応答もない。
「ちょっと、モルツ。どうしちゃったのよ。
動かないと、幾らなんでもやられちゃうでしょっ!」
すると、上空に大型のヘリが飛来してくるのが見えた。
やがてそれが、アリーナの近くに着陸し、新たな歩兵が十名ほど降りて来た。
「いやー。間に合いましたね!」
最初にアリーナ達を取り囲んでいた兵士の生き残りが、嬉しそうにそう言った。
「ほー。これがアンドロイド歩兵……なんか、オカズに出来そうですね」
「私も初めて見ました。女性型の歩兵アンドロイドなんて……まあ、負傷者の救護を優先しましょう。どうせこいつはもう動けませんから」
意識ははっきりしているのに、身体を動かす事が全く出来ない……。
もしかして、これがキャンセラー……。
ちょっと、モルツ。これどうすればいいのよ! ねえ、答えてよ……。
ダメだ……返答がない。モルツも停止しているんだ。
私達、ここで終わりなの……。
「ニドルに聞いた話だけれど、ソンメルソンに向かう街道の東のはずれの山ん中にいるかも……だってさ」
「なんか頼りない話ね。」
JJもメランタリも、モンデルマを出発した後、悲しい表情は見せていない。
悲しくないはずはないだろうが、やせ我慢しているのか、これからの事に緊張しているのか……。
車はスフィーラが運転しているが、モルツの言う通り、ほとんど自動で思った通りに動いてくれる。
もちろんアリーナは免許は持っていないし、過去に運転した事もない。
一応、いつ緊急事態になってもいい様に、衣装は専用装備のままだ。
エルフは王国を支配下に置いているが、その表面全てを占領出来ている訳ではない。都市と都市の間の人口はまばらで、おおむね荒れ地や砂漠や森林になっている為、正直、細かい所まで支配は及んでおらず、レジスタンスが活動しやすい素地は残っている。
とはいえ、都市でないと食べる事自体がままならない事は間違いない。
【偵察機接近。十時の方向。あの先の木立に入って隠れて下さい】
敵の接近は、かなりの確率でモルツが捕捉してくれる。
「それにしても、ずいぶん充電が持つわね? もう相当来たと思うんだけど」
メランタリは車こそ持ってなかったがペーパードライバーで一番車に詳しい。
今の車は、アリーナの頃の様な内燃機関のエンジンでなく、ほとんど電気で動くらしいのだが、実はアリーナが、スフィーラのリアクターから電力をこっそり供給しているのは内緒だ。
そして目標の地点まで2/3位来た所の森の中で、休憩していた時だった。
【警報。アリーナ、すいません。囲まれました。
敵数……五十以上。三個小隊位です】
(ちょっと! 気づくの遅いって! 逃げられる?)
【敵は電磁波遮断シートで、こちらのパッシブレーダに引っかからない様にしていた様です……仕方ありません。高出力アクティブレーダー始動。
……四方を囲まれています。強行突破するしかありません】
(もう!)
「二人とも、車に乗って! 早く!! 敵襲よ!」
JJとメランタリが慌てて車に飛び乗り、アリーナが思い切り発進させた。
周りから機銃掃射が行われ、JJとメランタリは、頭を低くして車の社内に身を隠している。アリーナには弾が当たるのだが、スフィーラのボディは何でもないかの様に弾き返す。
「ねえ、スフィーラ。大丈夫!? あなた、弾当たってない?」
「ええ、大丈夫よ」
メランタリが心配してくれるが、まあ床に突っ伏しているので、こっちを細かく見ちゃいないだろう。適当に返事をしておく。
小型の対車両弾頭も飛んで来るが、モルツが正確にこれを回避していく。
おっと! はは、直接取っちゃった。
これは前方に! ほれ!
アリーナが弾頭を投げた先に、敵の包囲の一角があり、見事に吹っ飛ばされた。
よっしゃ! 囲みが破れたわ。
アクセルを吹かして、一気に囲いを突っ切った。
ええい! それじゃ全速! ……えっ!?
車のタイヤが、なにか嫌な感触のものを踏んだ気がして、次の瞬間、地雷が弾け、車は宙を三回くるりと回って、ひっくり返って地面に投げ出された。
「痛ってててて……。JJ、メランタリ。大丈夫?」
慌てて二人の様子を確認するが、どうやら気を失っているだけで命に別状はなさそうだ。
アリーナが、ひっくり返った車から身体を引き出すと、すでに周りは歩兵で囲まれていた。
【アリーナ。一旦落ち着いて。下手に動くと二人も危ないです。
出来れば二人と距離を取って戦いましょう。
幸い、キャンセラーの気配はありません】
(分かったわ!)
「おい、やっぱり女だぞ。でもなんて恰好していやがるんだ。痴女か?
それにボンテージとポニテが全く似合ってないぞ!」
「ふん。似合ってなくて悪かったわね!」
そう言いながらアリーナは、高くジャンプをして、車を囲んでいた歩兵たちの背後に回った。
それじゃ、行くわよ!
「なんだよあいつ……人間じゃないのか?」
予想外に後ろを取られて意表を突かれた獣人の歩兵たちは大きく動揺した。
そして、そこにアリーナが突っ込んで近接戦で手刀を叩き込んでいき、五十人ほどいた敵兵が、みるみるその数を減らしていく。
「よっしゃ。これならいけるわ!!」
そう思った時だった。
アリーナは突然、手足の感覚を喪失した。
「えっ!? ちょっとモルツ。なんでオートモードを使うのよ。
これなら私でも大丈夫だって!」
しかし、モルツからは何の応答もない。
「ちょっと、モルツ。どうしちゃったのよ。
動かないと、幾らなんでもやられちゃうでしょっ!」
すると、上空に大型のヘリが飛来してくるのが見えた。
やがてそれが、アリーナの近くに着陸し、新たな歩兵が十名ほど降りて来た。
「いやー。間に合いましたね!」
最初にアリーナ達を取り囲んでいた兵士の生き残りが、嬉しそうにそう言った。
「ほー。これがアンドロイド歩兵……なんか、オカズに出来そうですね」
「私も初めて見ました。女性型の歩兵アンドロイドなんて……まあ、負傷者の救護を優先しましょう。どうせこいつはもう動けませんから」
意識ははっきりしているのに、身体を動かす事が全く出来ない……。
もしかして、これがキャンセラー……。
ちょっと、モルツ。これどうすればいいのよ! ねえ、答えてよ……。
ダメだ……返答がない。モルツも停止しているんだ。
私達、ここで終わりなの……。