第11話 覗きは犯罪じゃない(ただし、ロリババアに限る)

文字数 2,148文字

「それにしても、絶景だなー」

 ボクはソシャゲの作業をこなしつつ、27インチモニターを凝視する。
 ゲーム専用のモニター。解像度やリフレッシュレートは市販品では最高クラス。
 おかげで、監視カメラの映像が綺麗に見える。

 もちろん、場所が場所なので、湯気という邪魔なモノがあるよ。
 けど、物理的法則ぐらいで探究心を諦めるボクじゃない。

 湯気や白い光線は課金すれば消せるんだ。アニメの円盤を買うように。

 ほら。
 今もJKのビーチクを拝めたし。

 ボクは最先端の技術を駆使して、大浴場の監視業務に励んでいた。

 特にカメラには金をかけた。湯気を除去するユニットだけで月給二ヶ月分ぐらいするし。
 当然、自分の金で買いたくないので、研究費用として計上したけどね。
 税金を使って、男女の裸体を楽しめるのだから、おいしすぎる。

 特に、彼。なよなよした性格と、線の細い身体つき。
 趣味も風景写真を見るとか男子高校生にしては渋すぎる。
 どちらかというと、非リアな陰キャなんだけど。

 脱ぐとすごいんだよね。
 腹は引き締まっていて、腕も筋肉あるというか。

 下も下で立派な気はする。当社比(おじいちゃん)だが。

 彼が入学して、一緒に住み始めてから一週間。
 ボク、九十九(つくも)日向(ひなた)にとっては、生徒の入浴時間が楽しみになっていた。

 あ、あくまでも仕事だからな。
 大事な生徒が入浴介助で失敗しないか見守ってるんだぞ。

 浴場で欲情を催して、ロリババアがロリを孕んだらと思うとな。
 研究者としてはロリババア病患者の子どもを見たい。人体実験やんか。

 セルフ突っ込みはさておき、教師は楽なので、失職したくない。
 だから、いろんな意味で間違いが起こらないように真面目に働いている。

 モニターを見る。小夜の形よいパイオツを前に前屈みになっている。ギリギリセーフかな。

 でも、中途半端なので、かわいそう。
 担任として処理してあげた方がいいんだろうか。

 ぜひとも、彼のモノを味わいたくなる。
 って、竿じゃないぞ。

 ボクは彼の力を見込んでるんだ。

 ケアラー。伊藤結人(ゆうと)が持つ癒やしの力。

 ボクが過去を償うには、彼の異能がどうしても必要なんだよな。
 あの事故以来、ボクはロリババア病の研究に勤しんできた。

 大人だから、夜も寝ずに。ソシャゲや動画を見るのに忙しいのも事実だが、研究もちゃんとしてんだ。ゴルァァッッ!

 現時点においても、ロリババア病を治す有効な手段は見つかっていない。
 だが、ボクはある仮説を立てていた。雇い主にも言ってないけどな。

 そのために、ボクはロリババアになったんだ。
 とあるモノを体内に埋め込むことで。

 しかし、大手術は失敗に終わる。患者の身体に触れても、なんの変化も起こらなかったのだ。
 信じられなくて、小夜の乳を揉みまくったよ。でも、彼女の胸が大きくなっただけ。

 ボクはどれだけ自分のパイオツを揉んで修行に邁進しても、現実は変わらない。
 なに? ロリババアになる前から幼児体型だった? てめえ、氏ねや。

 真面目な話。
 少年がしてみせたような現象はおろか、ボケ症状を緩和させることすらできなかったんだ。
 悔しかったよ。

 なんとしても彼女たち被害者を救いたいのに……。

 十五歳でアメリカの大学に入学したボクにとって、二回目の挫折だった。
 挽回しようとソシャゲを封印してまで研究に打ち込んでいた時――。

 ボクは運命の人に出会った。

 半年前。退屈な仕事を無理やり引き受けさせられた。それが、学校説明会での発表という。ふざけんなし。

 しかし、それで彼と巡り合うことができたのだから、瓢箪から駒というか。
 偶然、結人の手に触れたとき、体内のアレがビビッと反応したんだよな。

 彼こそが力の持ち主だと直感的に悟って……。
 ボクは彼を巻き込むために裏から手を回したんだ。

 この半年、死に物狂いで研究を推し進め。

 ボクは彼に――。

 ボクはひどい女だ。教師としても、研究者としても、人間としても。

 生徒たちが騒ぐ音が聞こえる。また、美紅が中二発言をしているのだろう。
 すまないな、君たち。

 ボクはため息を吐きながら、監視カメラの映像を見る。

 三人は脱衣所にいた。風呂上がりである。女子の髪が艶っぽい。童貞君、美紅がブラをつけるの手伝ってるよ。彼も慣れてきたのか、最近ではスムーズにできている。将来の役に立つんだから、すばらしい実習だよな。

 君には迷惑をかけたけど、役得だし。許せ。

 彼が来て、一週間。小夜と美紅の表情が心なしか明るくなっている。
 それだけが救いだった。

「期待しているぞ」

 さて、研究に戻る前にニュースをチェックしよう。
 ネットを漁る。少子高齢化の新聞記事が目についた。

「うわっ。また学者や経営者が適当なことを言ってるよ」

 だから、この国にはアンドロイドが必要なんだって。
 ボクは悔しくて、唇を噛みしめる。

 執事の弾くバイオリンの音が食堂から聞こえてきた。悲壮感に満ちた音色だった。
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登場人物紹介

伊藤 結人(いとう ゆうと)

中学生時代に祖母の介護をした。

福祉の勉強をすべく、福祉科があるヴァージニア記念高校に入学する。

が、どうやら特殊な能力があるようで、ロリババア病の少女たちの介護をすることに。

神凪 小夜(かんなぎ さよ)

家がお金持ちのお嬢様。

才色兼備な優等生だったのだが。

ロリババア病を発症し、ボケている。

結人と同じクラスで、彼に介護される。

ご飯を食べたことを忘れたり、家にいるのに外出したつもりだったり。

天道 美紅(てんどう みく)

元テニス選手。中学生ながら、プロに勝ったこともある。

ロリババア病を発症し、のじゃロリになる。

結人と同じクラスで、彼に介護されるのだが、傲岸不遜で結人を眷属扱いしている。

中二病を患う中学三年生。

青木 穂乃花(あおき ほのか)

幼なじみ。優しくて、尽くしてくれる子。爆乳。

結人の傍にいたくて、ヴァージニア記念高校の普通科に進学する。

小夜と美紅に振り回される結人を助けるも、小夜たちには複雑な感情を抱く。

敗北する幼なじみと思いきや。

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